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BLの丘
白い色 18
2010-11-05-Fri  CATEGORY: 白い色
事務所内で繰り広げられる美祢と大翔のやりとりはこれまでと変わることがなかった。
美祢は今更言い訳をする気にもなれず、また駆とどんな話がされたのか聞くのも怖くてあえて触れずにいた。
駆にももちろん聞いていないし、大翔も言ってはこない。
それを不思議そうに菊間に見られているのだが、こちらにも何も言う気は湧かない。
分かっているのか、菊間も突っ込んではこなかった。
「美祢、もう終わる?一緒に帰ろ」
「泊まんないよ」
「そんなこと言うなよ。美祢に帰られたら淋しくて拗ねちゃうのがいるんだからさ」
「自分のことだろ」
いつの間にか背後に立っていた駆が大翔の頭を小突いた。
これまで駆とは事務所内で会話をすることなど稀だったのだが、いつの頃からか増えている。
周りに言わせれば『兄弟仲が良くなった』らしい。
裏事情などもちろん知るわけがないのだから、そう見られるのか…と美祢は納得するところもあったのだが、駆との関係は進展をみせていなかった。

駆とは時に食事をして、飲みに出て、けど、最終的には家へと帰されることが続いた。
そんな態度に安心しているところもあったが、本当にこれでいいのかという不安があるのも確かだった。
駆が恋人と思って何かと押し付けてくることはない。
そもそも『恋人』なのだろうか。
そこには残念な気持ちがあるものの、ホッとしている部分も多くを占める。

「美祢ちゃんの邪魔をするんだったらこっちを手伝ってくれ。工場からの報告書が分けきれないんだ」
「何で俺がっ」
「無用に何枚も上げてきたのはおまえだろ。自分でやれば『整理整頓』の意味くらい分かるだろ」
首を掴まれ連れて行かれる大翔の姿に、事務所内からクスクスと笑みがこぼれる。
そうやって少しずつ仕事のやり方を教えていこうとする態度は、やはり『兄』なのだな、とちょっと思う美祢だった。
二人はやがて、この会社を動かしていくようになる。


年が明けて、美祢が務める大豆食品会社(名前がないんだよねー。どうしよー)は創立60周年を迎えた。
記念式典ということでホテルの一会場を貸し切っての盛大なパーティーが開かれていた。
やってくる来客は耳にしたことのある取引先ばかりで、美祢も何度も腰を折った。
これといって名刺など持ちはしないが、特に目梨が連れてくる営業先に、聞きなれた声が耳をつく。
特技…とは言えないが、一度声を聞けばどこの誰なのかすぐに分かる美祢だ。
中には想像をとてつもなく超える人間がいたが、もちろん声になどしない。

「美祢ちゃん、S物産の古平(ふるびら)くんだよ」
「は、はじめまして。お電話ではいつもお世話になっております」
目梨に紹介され、改めて挨拶をされた相手に、緊張感を持って接すれば、クスクスと笑みを浮かべられた。
この人は想像通りの人間と言って良いのか。
声から聞き分けた、爽やかなイメージが目の前に広がっている。

「ほんと、辰野が『可愛い』っていうだけあるよね」
目梨を『たつの』とファーストネームで呼ぶ人間など聞いたことがない。
見た目は目梨と年も変わらないようだし、長身で出来る男のイメージがただよっていた。
あまりのことに目を瞬かせれば、「昔の同期なんだ」と目梨がバラした。
古平筑穂(ふるびら ちくほ)という名刺を渡されて美祢はどう答えていいのか分からなかった。
営業事務とはいえ、触れ合うのは電話かメールばかりである。
そんな先で自分のことが話題に出されていたとは露ほども知らず。

「昔、同じ会社で働いていたんだ。こいつは引き抜かれたけどな」
「辰野だってかわらないだろ?こんなに大きくなる会社って分かっていたら俺も考えたのに」
「おまえが行った先、充分大手だろ」

お互い言い合うのを愛想笑いを浮かべながら聞いていた。
美祢は知らなかったが、目梨は中途入社だったらしい。
同じ時期に、古平も違う会社に転職していたようだ。
同じ食品業界にいるせいか、なにかと交流はあったようで、いまでも取引は続いているようだった。
いいか悪いかはともかく、良い関係が保たれている状況に美祢が加える言葉などありはしない。

「飲み物、持ってきてやるからさ。おまえたち、その辺に座っとけよ」
目梨が視線だけで空いているテーブルを促した。
立食パーティーではあるが、あちらこちらに座って寛げる場所はある。
顔を出すだけですぐに帰る客もいるため、それほど混雑もなかった。
パーティーが始まってから結構な時間が経っているということもある。
目梨に促され、また、取引相手を邪険にすることも出来ず、美祢は古平を伴って近くのテーブル席へと案内した。
「なにかお料理を…」
気を使う美祢の手を、座った古平がそっと押さえてとどめた。
「君がいてくれればいいから」
それは久し振りに感じた『アプローチ』のようだった。
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また人間が増えた…。どんだけ増やせば気が済むんだ?!
週末完全に止まると思います。
なんとか頑張って書けたらいいけど…。
法事もあって実家行くし、出払わなくてはならなくて。
パソちゃんに向かえそうにないです。
ってことで、先に『何もないかもね』報告。
いつもの事ながらupあったらラッキーって思ってください。
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