この場の雰囲気をどうしたらいいものかと、思わず圭吾を睨み上げてしまう。
圭吾は平然としたままだ。
だが、孝朗の不安をよそに、カーテンの外からは、「おまえらな~」と半ば呆れたような声が上がっただけだった。
「圭吾君、どんだけ熊谷さんのこと、好きなの?」
「ちょ――好きです」
「あっそ…。…いーから、とっとと出て来いよー!!!」
まるで馴染んでいる感じがあった。
すでに気付いていた…というか、今のやりとりで確信したような言いまわしだった。
「け、圭吾…」
動揺しまくる孝朗の耳元に圭吾が唇を寄せてくる。
「だから普通にしていればいいって言っただろう?」
囁かれた言葉に、必死に隠そうとしていた自分が馬鹿だったと知らされる。
いままでのやり取りの中で、それとなく感づいていたが、本人たちが何も言わないから追及もしてこなかった…。そんな感じだ。
言ってくれれば受け入れるし、黙られれば見守る…。
彼等の思いやりがジンと染み込んでくる。
あえて何も言ってこなかったのは、孝朗の頑なな言い分が、姿勢から感じ取られていたからなのかもしれない。
孝朗の中に巣食っていた何かがはがれおちていく気分だった。
だからといって、この後、顔向けができるのかといえば話が変わってくる。
今更、公表するようなことをして、どうして普通の顔をしていられるのか。これまでが何だったのかと無駄な努力を顧みた。
そんな強靭な精神を持ち合わせてはいない。
おどおどとしながら着替え終わると、圭吾はなんの躊躇いもなくカーテンを開けた。
皆の視線が自分たちに注がれているのを痛く知る。
俯いて顔を上げることもできなかった。
「圭吾君、熊谷君に何したの?すっごい真っ赤になってるじゃん」
「何もしてませんよ。これ、タカの得意技。ちょっとしたことですぐ照れるの。だからちょっかい出さないでくださいよ」
「そんなことしたら、包丁でも飛んできそうだよ」
ケラケラと笑いあう輪の中になど、到底入っていけそうにないのに、圭吾に引っ張り込まれる。
…いつもと同じように会話をすればいい…と…。
付き合っているとバラしたところで、何が変わるわけではないと、周りのスタッフの態度が示していた。
自然と仕事の話になり、それぞれの持ち場に行けばやるべきことが待っている。
近付いてくる態度はこれまでと変わることなく、それが孝朗の緊張をほぐしてもいた。
朝から硬くなるだけの孝朗だったが、開店を迎える頃には意識を向けるところが客へとなる。
悟られないようにと張り詰めていた緊張感が抜けた。
それだけのことなのに、動きが軽くなった気がした。
極力圭吾との距離を取ろうとしていたことが、返っておかしかったことにも、漠然と気付く。
客観的に見たら、自分の行動は不自然だったのかもしれない。
羽生が言う、『スタッフとの壁』の意味も理解した。
隠そうとするものがあるから、自分からは近付かないでいた硬さ。
遠巻きに見ていてくれた人が近しいものに変わる。
この場所がどれほど”居やすい”場所になったのかと自身の肌と心で感じる。
全ては圭吾がいたから…。
より良い環境にしようとしてくれた羽生にも感謝した。
堅苦しさがなくなると、他のスタッフも自然と会話をしてくる。
もともと会話の多い職場ではあったが、頼りにし、頼られる部分がもっと強まった。
こうやって打ち解けていくのか…と今更ながらに学習した気分だ。
鈍い動きをさりげなくカバーされていることには、相変わらず赤くなるだけだったが…。
にほんブログ村
ぽちっとしていただけると嬉しいです。
ばれてた――ヽ(゚∀゚)ノ
40← →42
圭吾は平然としたままだ。
だが、孝朗の不安をよそに、カーテンの外からは、「おまえらな~」と半ば呆れたような声が上がっただけだった。
「圭吾君、どんだけ熊谷さんのこと、好きなの?」
「ちょ――好きです」
「あっそ…。…いーから、とっとと出て来いよー!!!」
まるで馴染んでいる感じがあった。
すでに気付いていた…というか、今のやりとりで確信したような言いまわしだった。
「け、圭吾…」
動揺しまくる孝朗の耳元に圭吾が唇を寄せてくる。
「だから普通にしていればいいって言っただろう?」
囁かれた言葉に、必死に隠そうとしていた自分が馬鹿だったと知らされる。
いままでのやり取りの中で、それとなく感づいていたが、本人たちが何も言わないから追及もしてこなかった…。そんな感じだ。
言ってくれれば受け入れるし、黙られれば見守る…。
彼等の思いやりがジンと染み込んでくる。
あえて何も言ってこなかったのは、孝朗の頑なな言い分が、姿勢から感じ取られていたからなのかもしれない。
孝朗の中に巣食っていた何かがはがれおちていく気分だった。
だからといって、この後、顔向けができるのかといえば話が変わってくる。
今更、公表するようなことをして、どうして普通の顔をしていられるのか。これまでが何だったのかと無駄な努力を顧みた。
そんな強靭な精神を持ち合わせてはいない。
おどおどとしながら着替え終わると、圭吾はなんの躊躇いもなくカーテンを開けた。
皆の視線が自分たちに注がれているのを痛く知る。
俯いて顔を上げることもできなかった。
「圭吾君、熊谷君に何したの?すっごい真っ赤になってるじゃん」
「何もしてませんよ。これ、タカの得意技。ちょっとしたことですぐ照れるの。だからちょっかい出さないでくださいよ」
「そんなことしたら、包丁でも飛んできそうだよ」
ケラケラと笑いあう輪の中になど、到底入っていけそうにないのに、圭吾に引っ張り込まれる。
…いつもと同じように会話をすればいい…と…。
付き合っているとバラしたところで、何が変わるわけではないと、周りのスタッフの態度が示していた。
自然と仕事の話になり、それぞれの持ち場に行けばやるべきことが待っている。
近付いてくる態度はこれまでと変わることなく、それが孝朗の緊張をほぐしてもいた。
朝から硬くなるだけの孝朗だったが、開店を迎える頃には意識を向けるところが客へとなる。
悟られないようにと張り詰めていた緊張感が抜けた。
それだけのことなのに、動きが軽くなった気がした。
極力圭吾との距離を取ろうとしていたことが、返っておかしかったことにも、漠然と気付く。
客観的に見たら、自分の行動は不自然だったのかもしれない。
羽生が言う、『スタッフとの壁』の意味も理解した。
隠そうとするものがあるから、自分からは近付かないでいた硬さ。
遠巻きに見ていてくれた人が近しいものに変わる。
この場所がどれほど”居やすい”場所になったのかと自身の肌と心で感じる。
全ては圭吾がいたから…。
より良い環境にしようとしてくれた羽生にも感謝した。
堅苦しさがなくなると、他のスタッフも自然と会話をしてくる。
もともと会話の多い職場ではあったが、頼りにし、頼られる部分がもっと強まった。
こうやって打ち解けていくのか…と今更ながらに学習した気分だ。
鈍い動きをさりげなくカバーされていることには、相変わらず赤くなるだけだったが…。
にほんブログ村
ぽちっとしていただけると嬉しいです。
ばれてた――ヽ(゚∀゚)ノ
40← →42
孝朗が 圭吾との関係を 上手く隠せる訳ないですよね~
今までの ガードは 無駄だってこと!
お分かりかな、孝朗くん!(*^-')b
これで 働き易い職場になって 良かったじゃん♪
圭吾というパートナーが居るんだから これからは...
「ひとりで 悩まないでっ!」by 真矢○き風で~♪
(o´ェ`o)ゞエヘヘ...byebye☆
今までの ガードは 無駄だってこと!
お分かりかな、孝朗くん!(*^-')b
これで 働き易い職場になって 良かったじゃん♪
圭吾というパートナーが居るんだから これからは...
「ひとりで 悩まないでっ!」by 真矢○き風で~♪
(o´ェ`o)ゞエヘヘ...byebye☆
けいったん様
こんにちは。
> 孝朗が 圭吾との関係を 上手く隠せる訳ないですよね~
そうです~。隠せるわけないんですよ~。
> 今までの ガードは 無駄だってこと!
> お分かりかな、孝朗くん!(*^-')b
圭吾は気付いていたから、いいきっかけになったんでしょう。
お仕置きもできたことだし。
> これで 働き易い職場になって 良かったじゃん♪
>
> 圭吾というパートナーが居るんだから これからは...
> 「ひとりで 悩まないでっ!」by 真矢○き風で~♪
> (o´ェ`o)ゞエヘヘ...byebye☆
良きパートナーに恵まれました。
圭吾も孝朗の意思を尊重するだけでなく、自分の意見をきちんと語って孝朗を納得させていただきたいものです。
でも圭吾が言ったら半脅し?になっちゃうのかな…。
(いやいや、丸めこみってことで… ←それもどうかと…)
言われたことを信じるタカくんですから。
コメントありがとうございました。
こんにちは。
> 孝朗が 圭吾との関係を 上手く隠せる訳ないですよね~
そうです~。隠せるわけないんですよ~。
> 今までの ガードは 無駄だってこと!
> お分かりかな、孝朗くん!(*^-')b
圭吾は気付いていたから、いいきっかけになったんでしょう。
お仕置きもできたことだし。
> これで 働き易い職場になって 良かったじゃん♪
>
> 圭吾というパートナーが居るんだから これからは...
> 「ひとりで 悩まないでっ!」by 真矢○き風で~♪
> (o´ェ`o)ゞエヘヘ...byebye☆
良きパートナーに恵まれました。
圭吾も孝朗の意思を尊重するだけでなく、自分の意見をきちんと語って孝朗を納得させていただきたいものです。
でも圭吾が言ったら半脅し?になっちゃうのかな…。
(いやいや、丸めこみってことで… ←それもどうかと…)
言われたことを信じるタカくんですから。
コメントありがとうございました。
| ホーム |