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BLの丘
真っ赤なトマト 40
2011-05-23-Mon  CATEGORY: 真っ赤なトマト
翌日入店するときには今まで以上の緊張感を持っていた。
この先の自分の生活がどう変わってしまうのかの脅えも混じっている。
そんな孝朗の思考を、圭吾は一蹴してくる。
「タカはいつも気を使いすぎだって言ってるだろ。羽生さんもそれを見破って打ち解けさせようってしてくれたんだって」
一時は羽生を恨んだはずの圭吾も、孝朗が素直に圭吾への思いを吐露したことで機嫌が良くなっていた。
昨夜の執拗な性行為のおかげで、いまだに痺れたような感覚を残す腰回りを、圭吾の手が撫でながら話しかけてくる。
飛びのきたくても、孝朗の動きは鈍かった。

「もうっ!!触んないでっ!!」
パシリと圭吾の手を叩いてみるが全く意味をなさない。
寄り添うようにして店の裏口から入った孝朗たちを、すでに店の中にいた越谷と羽生が迎えた。
他のスタッフは、更衣室か、まだ出社していないのだろう。見当たらない。
「おはようございまーす」
圭吾の軽快な声が厨房内に響く。
裏口は食材の搬入口でもあったので、広い空間があった。そこを挟んで左右に厨房と更衣室に分かれた作りだったので、まずは見える方に声をかける。
「おはよう。本庄は相変わらず元気だな」
「はい。今日は”特に”ですっ」
「何か良いことでもあったの?」
圭吾の返事に羽生が理解したような笑みを湛えながら質問してくる。
その反応に咄嗟に昨夜の出来事を脳裏に思い浮かべた孝朗は、慌てて視線を反らし、顔を赤くした。
圭吾にしてみれば、思い通りに事が運んだわけで、さらに体の方も充分なくらい満足している。
おまけに自分たちの関係まで公表できるという特典付き。
しかし孝朗はまだ心の準備が整っておらず、動揺するばかりだった。
「圭吾…」
何を言われるのかと警戒して圭吾の着ていたシャツの裾を引っ張った。
そんな孝朗の背に手を当てただけで、圭吾はそれ以上のことを言わなかった。
「まぁ、いろいろと。じゃあ、着替えてきますね」
てっきり開口一番で告げられるのかと思っていた孝朗は、拍子抜けした気分だった。
確かに羽生はすでに知っているのだし、今更言うことではないのかもしれないが、越谷に対してはどうなのだろう…。
それこそ全ての主導権を握っているのは越谷のほうだ。彼の機嫌を損ねる事態になればもうこの店にもいられないだろう。
心配しきる孝朗の背中から、圭吾は手を離すことなく更衣室へと向かわせる。
一度覚悟を決めたはずなのに、今となって孝朗の心は揺れ動きだした。

「だからさー。そういうところがタカの悪い癖なんだって。何、いっぱい考えてんの?」
あれこれと悩み続ける孝朗の気持ちを読んだ圭吾が、溜め息とともに笑みを浮かべた。
「昨日、羽生さんが言ってたじゃん。『一つの嘘が次の嘘を生む』って。そんなので雁字搦めになってどうすんの?それこそ越谷さんに嫌われるよ」
『嘘』を守るためにぎこちなくなれば越谷も訝しく見てくる。
そもそも、この少ない人間の中で嘘をつく意味がないと圭吾は続ける。人の良さが分からない、信頼関係が持てない間柄なのだと、自ら告げているようなものだと…。

更衣室のドアの向こうから談笑する声が聞こえた。
「圭吾、手…」
「まぁ、いいからいいから」
いつものように、馴れ馴れしい態度をとるなと注意すると、圭吾は全く気にした様子なく、ドアを開けて中に入った。
それぞれと朝の挨拶を交わす。
いつも以上に寄り添った姿に、孝朗は不安と赤みを浮かべる。腰の鈍痛があるから余計だった。
最奥には申し訳程度のカーテンで仕切られた着替えるスペースがあり、圭吾と共にそこに押し入れられた。
普段であれば一緒に入ることはない。
その様子を見ていた他のスタッフから、「今日は一段と仲がいいね~」とからかいを含んだ声が聞こえた。
孝朗の心臓は跳ね上がり、余計に顔が火照ってくるのが分かる。
「け、圭吾…。先に着替えていいから…」
ボソボソと呟く声もきっと、カーテンの向こう側には聞こえているはずだった。
逃げようとする腰を捕まえられる。
「なんで?いつも家では目の前で着替えてるじゃん」
「まぁ、同じ家にいればヌード、見ることもあるだろうしな」
「本庄君、風呂上がりにバスタオル巻いた姿でビールとか飲んでそうなイメージ」
圭吾のしっかりした発言に、スタッフも会話に参加してくる。
この1カ月でより一層の交流を深めていた圭吾に対しては、容赦ない発言が飛び出していた。
それらは、家にいる時と同じように過ごしていいと言っているようなものだ。
「タカ、ほら、さっさと脱げって」
圭吾が孝朗の衣類を剥ぎ取ろうと手を出してくる。
「ちょ―――っ!触んないでってばっ」
圭吾の手を叩いた音まで筒抜けだ。孝朗の台詞に、そこにいた連中はすぐに何が起こったのか判断出来た。
「おーい、ここ、どこだと思ってんだよ?」
「でも、熊谷さんの声、可愛い」
「あ、失敗。タカの声、聞かせちった」
ニヤリと笑った目の前の圭吾を焦って見てしまった。
一瞬の沈黙が更衣室の中に漂う。緊張が孝朗を襲った。

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圭吾、ここでバラした―――(゚∀゚)

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コメント

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No title
コメント甲斐 | URL | 2011-05-23-Mon 12:18 [編集]
圭吾くんノリすぎ~
奥ゆかしく気配り屋さんの孝朗くんにしてみたら、
急には明けっぴろげな態度も口調もできないですよね。
あからさまにできない関係だと思ってきた関係を
普通に受け止められている状況も信じれないというか、
どう対処したらいいんだかって感じで戸惑っているように見えます。
そんな、気持を圭吾くんがちゃんとわかってフォローしくれるのか心配です。
No title
コメントけいったん | URL | 2011-05-23-Mon 17:27 [編集]
じゃれついた二人を見せて そのまま 流れで 公表&公認させるって訳ね~ d( ̄ー ̄)ニヤリ

圭吾が 頑張っているんだから、孝朗も恥ずかしがってないで 頑張れ~♪
恋人ですっ!(`・ω・´人uдu*)そ・そうです...byebye☆
Re: No title
コメントきえ | URL | 2011-05-24-Tue 11:13 [編集]
甲斐様
こんにちは。

> 圭吾くんノリすぎ~
> 奥ゆかしく気配り屋さんの孝朗くんにしてみたら、
> 急には明けっぴろげな態度も口調もできないですよね。
> あからさまにできない関係だと思ってきた関係を
> 普通に受け止められている状況も信じれないというか、
> どう対処したらいいんだかって感じで戸惑っているように見えます。
> そんな、気持を圭吾くんがちゃんとわかってフォローしくれるのか心配です。

圭吾、はしゃいじゃってます。
そうそう、孝朗はいきなり態度変えるようなことはできませんね。
まだまだ馴染むには時間がかかるのでしょうが、
そこは圭吾にがんばってもらいましょう(笑)
孝朗を守るためならなんだってしてくれるでしょう、きっとね。
コメントありがとうございました。
Re: No title
コメントきえ | URL | 2011-05-24-Tue 11:16 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> じゃれついた二人を見せて そのまま 流れで 公表&公認させるって訳ね~ d( ̄ー ̄)ニヤリ
>
> 圭吾が 頑張っているんだから、孝朗も恥ずかしがってないで 頑張れ~♪
> 恋人ですっ!(`・ω・´人uдu*)そ・そうです...byebye☆

わざとじゃれついて見せてる(〃▽〃)
こうして周りの人は自然と悟っていくのです。
はい。孝朗もいつか堂々と振る舞える時がくるといいのですが…。
(いや、でもそれじゃあ、孝朗じゃないか…)
コメントありがとうございました。
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