再び目覚めた時はすでに日も高い時間のようだった。
明け方に一度起きてからまた眠ってしまった時と少々体勢が異なっていることに気付く。
明け方、羽生と並んで眠っている、と知ったのは二人して天井を向いていたからだ。
安堵を覚え、春日だけが羽生に寄り添うように、胸の前で両手を重ねた隙間を作り横向きに転がった。
それが今は、羽生と向きあう体勢で密着するように寄せられ、春日の背には羽生の腕がまわっていた。
何の間違いか、抱きしめられていると理解できるまでにさほど時間はかからない。
これ以上ここにいたら、間違った感情が湧いてしまいそうで、春日はそっと抜け出ようとした。
羽生との生活がぎこちなくなるのも、仕事に影響が出るのも怖い。
いや、それ以前に、この安らかな空間を嬉しいと思い、肌に記憶させることが怖かった。
それとも、もう手遅れなのだろうか…。
ふとした気の緩みでリビングで眠ってしまった。完全に信頼を置き、心の拠り所として羽生は存在している。
この人物は春日の中で存在位置をどんどんと大きくしている。
一時的な同居として結んでしまった約束が、なんとも辛いものになっていた。
春日が僅かでも身じろぐと、羽生の腕に力がこもった。
「え?」
どうやら羽生も起きていたらしい。
「もう起きるの?」
囁くような言葉が春日の耳元を掠める。
少し視線を上げると、温和な羽生の顔があった。
「昨日、戻ったら春日君、もう寝ちゃっていたし。勝手に君の部屋に入るのも失礼だからこちらに運んでしまったけど。迷惑だったかな」
「そんなこと…。ごめんなさい。こちらこそ手間をかけちゃった…。…起こしてくれれば良かったのに…」
「いやいや、とても可哀想でできないよ」
あたりまえのように振舞う羽生の優しさでもある。こんな態度に春日は余計に気を惹かれて行く。
そして、自惚れた期待を抱いてしまう。
「それにせっかく春日君の寝顔を見られたのに」
「え?」
春日は意味をどう解釈していいのか思考が止まった。
その直後、羽生の唇が春日の額に触れた。
呆然としながら羽生を見返すと、分からないかな?と言った感じで小さく首を傾げられた。
「なんとも思っていなかったら、ここまで連れ込まない」
…つまり、いままであれこれと目を掛けてくれていたのは、相手が春日だったから、ということだろうか…。
…それって…、それって…。
「羽生さん…、もしかして…」
「うん。ずっと気になってたんだと思う。たぶん春日君が初めてうちの店に来てからだろうな。だから新しい人を入れる時に真っ先に春日君を思い出したし。まぁ、あの時は仕事のことしか頭になかったのかもしれないけれど。会ううちに人の良さを感じて、まずは入店させる契約を取りたかったんだ。その後はどう変わっていくかも分からなかったからね。あぁ、ここに住んでくれるかどうかは、一か八かの賭けだった」
まっすぐに人の目を見て話す姿勢はこんな時も変わらない。隠すことなく真実を伝えてくれる。
同居を引き受けたことは、春日に対して望みがあると判断したようだ。
生活の全てを見るうちに、自分の目が間違っていなかったことを確証したらしい。
こんな夢のような話があっていいのか…と、春日は一瞬脅えた。
ついさっきまで悩んでいたことの答えを、あっさりともらってしまったようなものだ。
もしかして騙されているんじゃないかという疑心も少し湧いてしまう。
羽生にしてみれば、春日の思うことや取りたい行動など、観察眼の良さから見越しているのではないか…と。
春日が何も言えずに黙ってしまうと、羽生の腕の力が弱まる。
「俺じゃダメ?」
問われる言葉はとても真摯で、春日が好きな羽生の姿でもある。
春日は咄嗟に首を横に動かした。
「いいってこと?」
「うん。ここを出て行きたくなくて、困ってた…」
素直に言葉が出てくるのはまだ夢見心地の気分なのか。
正直に胸の内を明かしてしまえば、羽生がふわりと笑みを浮かべる。
「もう、探させない」
春日の口元に唇を寄せて、そっと合わせてくる。上唇と下唇を交互に舐められ、僅かに開いた間から舌が潜り込んでくる。
絡め取られて舌の感触を味わいながら口端から吐息を洩らす。
「…っふ…、ぅ…」
一旦唇を離した羽生が、もう一度春日を胸に抱きしめて、ぽんぽんと宥めるようにさすり、その後強く抱きしめてきた。
その時、まったくもっていいタイミングで、玄関のチャイムが鳴ったのだった。
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って、羽生が?客が?
キリ番踏まれた方いらっしゃいますかね~。昨夜日付の変わる前の頃のようです~。
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明け方に一度起きてからまた眠ってしまった時と少々体勢が異なっていることに気付く。
明け方、羽生と並んで眠っている、と知ったのは二人して天井を向いていたからだ。
安堵を覚え、春日だけが羽生に寄り添うように、胸の前で両手を重ねた隙間を作り横向きに転がった。
それが今は、羽生と向きあう体勢で密着するように寄せられ、春日の背には羽生の腕がまわっていた。
何の間違いか、抱きしめられていると理解できるまでにさほど時間はかからない。
これ以上ここにいたら、間違った感情が湧いてしまいそうで、春日はそっと抜け出ようとした。
羽生との生活がぎこちなくなるのも、仕事に影響が出るのも怖い。
いや、それ以前に、この安らかな空間を嬉しいと思い、肌に記憶させることが怖かった。
それとも、もう手遅れなのだろうか…。
ふとした気の緩みでリビングで眠ってしまった。完全に信頼を置き、心の拠り所として羽生は存在している。
この人物は春日の中で存在位置をどんどんと大きくしている。
一時的な同居として結んでしまった約束が、なんとも辛いものになっていた。
春日が僅かでも身じろぐと、羽生の腕に力がこもった。
「え?」
どうやら羽生も起きていたらしい。
「もう起きるの?」
囁くような言葉が春日の耳元を掠める。
少し視線を上げると、温和な羽生の顔があった。
「昨日、戻ったら春日君、もう寝ちゃっていたし。勝手に君の部屋に入るのも失礼だからこちらに運んでしまったけど。迷惑だったかな」
「そんなこと…。ごめんなさい。こちらこそ手間をかけちゃった…。…起こしてくれれば良かったのに…」
「いやいや、とても可哀想でできないよ」
あたりまえのように振舞う羽生の優しさでもある。こんな態度に春日は余計に気を惹かれて行く。
そして、自惚れた期待を抱いてしまう。
「それにせっかく春日君の寝顔を見られたのに」
「え?」
春日は意味をどう解釈していいのか思考が止まった。
その直後、羽生の唇が春日の額に触れた。
呆然としながら羽生を見返すと、分からないかな?と言った感じで小さく首を傾げられた。
「なんとも思っていなかったら、ここまで連れ込まない」
…つまり、いままであれこれと目を掛けてくれていたのは、相手が春日だったから、ということだろうか…。
…それって…、それって…。
「羽生さん…、もしかして…」
「うん。ずっと気になってたんだと思う。たぶん春日君が初めてうちの店に来てからだろうな。だから新しい人を入れる時に真っ先に春日君を思い出したし。まぁ、あの時は仕事のことしか頭になかったのかもしれないけれど。会ううちに人の良さを感じて、まずは入店させる契約を取りたかったんだ。その後はどう変わっていくかも分からなかったからね。あぁ、ここに住んでくれるかどうかは、一か八かの賭けだった」
まっすぐに人の目を見て話す姿勢はこんな時も変わらない。隠すことなく真実を伝えてくれる。
同居を引き受けたことは、春日に対して望みがあると判断したようだ。
生活の全てを見るうちに、自分の目が間違っていなかったことを確証したらしい。
こんな夢のような話があっていいのか…と、春日は一瞬脅えた。
ついさっきまで悩んでいたことの答えを、あっさりともらってしまったようなものだ。
もしかして騙されているんじゃないかという疑心も少し湧いてしまう。
羽生にしてみれば、春日の思うことや取りたい行動など、観察眼の良さから見越しているのではないか…と。
春日が何も言えずに黙ってしまうと、羽生の腕の力が弱まる。
「俺じゃダメ?」
問われる言葉はとても真摯で、春日が好きな羽生の姿でもある。
春日は咄嗟に首を横に動かした。
「いいってこと?」
「うん。ここを出て行きたくなくて、困ってた…」
素直に言葉が出てくるのはまだ夢見心地の気分なのか。
正直に胸の内を明かしてしまえば、羽生がふわりと笑みを浮かべる。
「もう、探させない」
春日の口元に唇を寄せて、そっと合わせてくる。上唇と下唇を交互に舐められ、僅かに開いた間から舌が潜り込んでくる。
絡め取られて舌の感触を味わいながら口端から吐息を洩らす。
「…っふ…、ぅ…」
一旦唇を離した羽生が、もう一度春日を胸に抱きしめて、ぽんぽんと宥めるようにさすり、その後強く抱きしめてきた。
その時、まったくもっていいタイミングで、玄関のチャイムが鳴ったのだった。
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キタ━━(゚∀゚)⌒Y⌒(。A。)⌒Y⌒(゚∀゚)⌒Y⌒(。A。)⌒Y⌒(゚∀゚)━━!!!!
って、羽生が?客が?
キリ番踏まれた方いらっしゃいますかね~。昨夜日付の変わる前の頃のようです~。
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K様
こんにちは~。
>羽生さんの腕の中って ほんとに安眠できそう(-.-)zzZ キターーーって 誰??? いいとこだったのにぃ(¬з¬) しばらくお預けでも、この続きは きっとありますよね?!
春日ってば見事爆睡(笑)
いつでも春日を見てくれていた羽生だからこそかもしれません。
とんだ邪魔者が入りましたね。
でもまぁほら、猪モードになる前だったってのが救いってことで…汗
続きはね~…、はい、まぁ………。
コメントありがとうございました~。
こんにちは~。
>羽生さんの腕の中って ほんとに安眠できそう(-.-)zzZ キターーーって 誰??? いいとこだったのにぃ(¬з¬) しばらくお預けでも、この続きは きっとありますよね?!
春日ってば見事爆睡(笑)
いつでも春日を見てくれていた羽生だからこそかもしれません。
とんだ邪魔者が入りましたね。
でもまぁほら、猪モードになる前だったってのが救いってことで…汗
続きはね~…、はい、まぁ………。
コメントありがとうございました~。
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