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BLの丘
過ぎてみれば 5
2012-01-07-Sat  CATEGORY: あやつるものよ
その日の夜は言い合いから始まった。

千種は帰宅すると、夕飯の用意もそこそこに、さっさと風呂を済ませてしまう。
朝、吉良が片付けた(流しに放置した)洗いものにも手を付けなかった。新しい食器を出しては、残り続けた食品のみを盛りつけた。
もちろん晩酌の用意もしてやらなかった。

帰宅してきた吉良が「ただいま」とリビングに顔を出すなり、「吉良~っ!!」と千種の声が響き渡る。
そんな出迎えかたをされるとは思っていなかったのだろう、吉良は驚いた顔で立ち止まった。
「どうしたの?」
「どうしたもこうしたも…っ!!俺が働き出したって分かっているんだから、見えるところに痕つけないでよっ!!」
頬を染めつつ衝動的に叫ぶ。
明らかに不機嫌な態度でいる千種の怒りの原因に、心当たりがない吉良ではない。
それはまた吉良に、新しい驚きと疑問を運んでいた。逆に不機嫌な炎がともる。
「『見えるとこ』?俺が朝確認した時は完全に隠れていたはずだけど?千種、入社したばかりの人たちの前で胸元を寛げるようなことはしないでしょ。見られたってことは誰かに何かをされたわけ?それとももうここに連れてきたの?」
千種が照れて怒っているどころではない嫉妬心を表してくる。
くつろいだ部屋着でいる現在、はっきりとソレは見えるものとして存在していた。
確かに吉良は、千種の家でもあるのだから連れてくればいいとは言った。しかしまだ二日目である。
そして、風呂に入ったとも分かる姿。
つまり、千種は『浮気』まで疑われる立場に一変したことになる。
千種が怒りを露わにしたことは、全くもって違う意味に捉えられていた。

「な、何言って…」
怒り心頭だった千種の強気が怯んでいく。
「どういうことか説明してもらおうか。まぁ千種が社内で自ら見せたというなら、早々に知らしめられた意味で良かったことではあるけど」
変な虫がつかなくていいとほざく。
剣呑な雰囲気を纏いながら、近付いてきた吉良の指先が千種の首筋の赤い華に触れた。
…誰が好き好んで、そんなものを公開するかってーのっっ!!
「こ、こんな、ギリギリの場所っ!ちょっとなんかあったら見えるにきま…っ!」
「『なんかあった』ぁ?!」
『決まってる』と言いかけた千種の発言は遮られた。どんどんと自分を追い詰めていくものとなってしまった。
吉良は言葉の意味を厳しく求めてくる。
吉良には普通に過ごす分には”絶対”に知られることはないという自信が滾っていた。
普通ではない過ごし方をしたと、ありえない内容の想像しかされていない。
千種が事実を告げた場合、どう言おうが、『千種が首を晒した』と行動を咎められるだけだ。誰にでも見せるのかとおまけつきで…。
咄嗟に千種はこの件を誤魔化すほうが無難だと判断した。
「だからぁ、万が一の時のためにやめてくれって…」
「ほぉぅ。最初の威勢はどうしたんだか。万が一?確実に誰かに見られた反応だったよ。誰かに言われたから気付いたし、動揺したから俺に突っかかっているんだろ。違うか?」
微かに吉良の口元に笑みが浮かぶ。いつもの千種を可愛がってくれる笑みではなく、言い訳をする千種を蔑むものだ。
まともに言い当てられてぐうの音も出なくなる。
千種はこれ以上何も言えることなどなかった。
俯いてしまうとポンと頭上に大きな手が乗った。
吉良の冷たい…というより、楽しんでいる空気は変わることがない。
「風呂に入ってくる。俺、今日は風呂掃除はしないからね」
吉良が反省して千種のいいなりになる、いや、させようと千種が想像した世界は決して訪れないと堂々と宣言された。

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ちょっと短いけど…。

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