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BLの丘
新しい家族 13
2012-01-17-Tue  CATEGORY: 新しい家族
日生に圧し掛かる状態でいた男を見て、清音は咄嗟に目についた参考書で男の頭をひっぱたいていた。
「何、なさっているんですか―――っっっ!!!」
女の底力とでもいうのか。日生の部屋から連れ出された男は、リビングの床に正座させられた。
ガタガタと震えた日生は自室から出ることができなかった。
ずっと忘れていた感情。誰かに襲われるということ…。危害を加えられるかもしれないという恐怖心。

『和紀…』…っ!!
脳裏を過った一人の逞しい男がいる…。
いつだって守ってくれた…。

仕事中であったはずなのに、清音から連絡を受けたからなのか、すぐさま帰宅した三隅と和紀だった。
ずっと構ってくれなかった和紀だが、この時は我を忘れたようでもあった。
清音の説明を受けたのか、日生が部屋に籠っていると聞いた和紀が飛び込んでくる。
床の上で膝を抱えて小さくなっていた日生に、和紀は悲しそうな表情を浮かべて「ひな、ごめんね」と何故か謝ってきた。
昔のようにぎゅっと抱きしめてくれる強い腕が心地良い。
「ひ…っ、んっく…っ…っ」
大きくなって泣くのもみっともないと思いながら、寄り添ってきてくれた存在に張り詰めていたものがとけていく。
涙は止まることなく、和紀のスーツを汚してしまった。
こうしてずっと守られてきた。ぬるま湯の中に浸り過ぎていたことを改めて思ってしまう。
だけど抜けられない。欲しくて…欲しくて仕方がないもの…。安らげる空間…。
一頻り泣いて、これではいけないと自分を奮い立たせる。
「ひっ…く…っ、だ、だいじょ…ぶ…」
「ひな。無理しなくていいんだよ。嫌な事は嫌って言えばいいんだからね」
心配をかけてはいけないと顔を上げると、日生以上に辛そうな顔をした和紀が指の腹で涙を拭ってくれた。
我慢して耐えることを和紀は嫌った。
久し振りに触れた温もりに、日生の涙は止まることがない。

和紀に抱き起こされてリビングへと向かった。
そこには二度と顔を見たくない男が俯いて正座している。三隅がいらただしげに立ったまま携帯電話でどこかに連絡をつけていた。ただ、繋がっていないようである。
男の姿を見た途端、日生はビクつき、和紀は掴みかかった。
「てめぇっ!!」
「和紀、やめなさいっ!」
三隅の制止の声も届かず、和紀は男の胸倉を掴むと両頬を殴った。
「和紀っ!!日生が見ているだろうっ!!」
間に入った三隅がそれ以上の行為を言葉だけで止める。
過去に暴力を振るわれた日生は、人が同じように傷つくのをとても嫌がっていた。そのことを和紀も充分なほど承知している。
「クソッ」
まるで虫けらを扱うかのように、和紀は掴んでいた男を床に叩き落とした。
その後に三隅の静かな声音が響く。
「今回の件は派遣先には報告させてもらう。今後の君たちのことには関与しない。君が首になろうがどうなろうが会社側との交渉の結果だろう。訴えられないだけマシだと思え」
日生の立場を考慮して、表沙汰にはしないと告げる。三隅は最後に厳しい言葉を投げつけて男を追い出した。『二度と我々の前に姿を現すな』と付け加えて…。
三隅の中にも高ぶる気持ちがあるのをそれとなく感じ取ることができた。こんな時なのに嬉しいと思ってしまう自分は不謹慎だろうかと日生は俯いた。

「すみません…。私がいながらこんなことになって…っ」
涙ぐむ清音に三隅が近寄る。
「いえ。寧ろ、居てくれて良かったと言うべきでしょう」
清音は昼間、用事が済めば自宅に帰ってしまうこともあった。ほんの数歩の距離なのだから誰も咎めることなどしない。
三隅家と自宅を管理するのも大変なことだと思う。
自分の事は自分で守らなければならないはずなのに、日生はいつまでたっても子供のままだと悔しさが混じった。
守られることに慣れ過ぎている…。
不甲斐なさに落ち込む日生に、三隅はしばらく考えてから「日生」と語りかけてきた。
迷惑をかけた悪さは充分承知している。
「は、はい…」
三隅に脅える必要は何もないのに、堅苦しい雰囲気は畏まった態度を取らせた。
「日生、リビングでも勉強はできるか?」
「親父?」
日生に語りかけた内容が分からないと和紀の方が疑問の声を上げる。
三隅は一つの溜め息を零し、少しだけ咎める雰囲気を纏わせた。
「こんなことは今日が初めてじゃなかったんだろう。日生が言わないから…」
「なんだってっ?!」
三隅の言葉は途中で遮られた。興奮した和紀はそれこそ父親にですら掴みかかろうとしている。
日生は唇を噛んで俯いた。
今日みたいにあからさまな態度に出られたのは初めてだったが、以前から太腿を触られたり手を握られたことはあったことだった。
事を荒げたくないから黙ってきていたのに、三隅は見透かしていたのだろうか…。
「ひなっ!!なんで黙ってたんだっ?!何で言わないんだよっ?!」
和紀は必要以上に日生を構ってきた。だからこそ余計に心配をかけたくなかった。
離れたことは淋しさの裏で安堵でもあった。いつだって守ってもらえる安心感から抜け出せなかったから。
和紀の負担にはなりたくない…。その思いはどこまでも日生の中にはびこっている。和紀が忙しい生活になったから尚更…。

「今後の勉強はリビングかダイニングで見させよう。清音さん、少し迷惑がかかってしまいますが個室に入れるより…」
「えぇ。私もその方がいいと思います。お茶を出すタイミングも見られますしね」
すんなりと今後の行方が決まってしまう。
ただ一人、和紀だけは納得がいかないのか、まだ何かを言いたそうであり、だけど、口を閉ざしていた。

日生は新しく来た家庭教師と自室に入ることはなくなった。
今度も30歳になる男性である。どことなく、働く和紀に似ているなと思ったものだ。
日生が15歳になり、和紀は27歳ですでに周防の片腕となっていた。
清音は差し障りのない程度に姿を現す。
どれだけ言い含められたのか、家庭教師は出会った途端に一度溜め息をついた。
「男の子だって聞いてはきたけどさ…。間違い、起こしたくなる気持ちがなんだか分かるわ…」
早速告げられたことに、改めて日生は危機感を覚えた。

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頑張って書こう(`・ω・´)ノ
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コメント

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No title
コメントけいったん | URL | 2012-01-17-Tue 11:26 [編集]
清音さん、参考書でバコーンですか(笑)( ≧▽≦)b Good Job!

ひな、可愛く育って 私は嬉しい。+゚(´▽`)゚+。女喜シ立(≠
だけど 今回の事で それが、良いんだか悪いんだか 微妙だな(´ヘ`;)ゞう~ん
あれだけ構ってくれた和紀兄も避けられてる様ですし...

しか~し!避けてた割に ドエライ激怒の和紀兄さん!
もしかしての~もしかしてですか♪
゚+。ゥフフ(o-艸-o)ゥフフ。+゚byebye☆



Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-01-17-Tue 13:49 [編集]
けいったん様
こんにちは~。

> 清音さん、参考書でバコーンですか(笑)( ≧▽≦)b Good Job!

清音さん、やってくれました。
いい仕事してます(〃▽〃)
それでこそ家政婦さん。

> ひな、可愛く育って 私は嬉しい。+゚(´▽`)゚+。女喜シ立(≠
> だけど 今回の事で それが、良いんだか悪いんだか 微妙だな(´ヘ`;)ゞう~ん
> あれだけ構ってくれた和紀兄も避けられてる様ですし...
>
> しか~し!避けてた割に ドエライ激怒の和紀兄さん!
> もしかしての~もしかしてですか♪
> ゚+。ゥフフ(o-艸-o)ゥフフ。+゚byebye☆

和紀も、いっぱい思うことはあるんだと思います。
そのあたりはまたおいおい…。
避けていたけど、いざとなったら誰よりも食らいつくんです。
避けたくなるほど日生は可愛かった…ってことで(゚∀゚)
もしかしてのもしかして~…ε=┏(; ̄▽ ̄)┛スルドイ…っ
あまり語らずに閉じます<m(__)m>
ボロが出る…。
コメントありがとうございました。
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