信楽の保険の見直しに気付いたのは遠くない日のことだった。
こういっては失礼だが、間もなく四十代を迎える信楽に、紹介したい件はたくさんある。
その昔、伊吹のことを思ってなのか、進めるままに様々な特約まで付けて結んでくれた契約が現在ある。
それが、信楽に逢う口実なのだとは、伊吹自身も感じていた。
今更…。逢ってどうなるものでもないとは分かっていても、最後まで顔を見せてくれなかった人に、”今”を伝えたかった。
見送ってくれた、本当の意味で逞しい人だと、改めて思う。
信楽に会いにいくことを、甲賀には伝えなかった。
あくまでも”営業”の一環だと思うし、この期に及んでどうなることもないと安らかな気持ちがあった。
信楽に電話口で「保険が…」と伝えれば、意味を理解するのか、空いている時間に家にくればいいと促される。
住み慣れたはずの家が信楽だけのものになり、自分の空間がないことが悲しくも嬉しくもあった。
改めて訪れたリビングで、お茶を出してもらって、完全に自分の居場所がないことを知る。
一緒に住んだはずの家なのに、信楽が漂わせる雰囲気なのか、伊吹を近付けないものを感じた。
信楽なりの虚勢なのだろう。
「あぁ、もう、俺もそんな歳なんだねぇ」
信楽は明るく提案に聞きいってくれた。
次々と新しい商品が出ては、見合ったプランを提供していく。
決して安くはない契約書に、信楽は簡単にハンコを押してくれた。
その潔さに伊吹のほうが瞠目するくらいだった。
「伊吹が薦めてくれることだからね。あくまでも”保険”だよ。そこには伊吹が戻ってくるかもしれないかな~っていう、”保険”もあるかもね。…っていうのは冗談だけど」
どこからどこまでが本気なのかは分からない。
だけど、まだ伊吹を思う気持ちがあるのだとは、言葉の端々に滲み出ていて苦しくなる。
契約…。
そこで繋がっている人…。
書類をカバンに収め、去ろうとする伊吹の背後に信楽が寄った。
不意に背後からぎゅっと抱きしめられて、伊吹は言いようのない悲しさを覚えた。
ずっと…、ずっと顔すら見せてくれなかった人が、今は目の前にいる。
今の自分の幸せを伝える結果となってしまったけれど…。言葉巧みに伊吹の現状を探った信楽には、今は素直に何でも伝えることができた。
あらたまって挨拶をしたかった、それが、このような状況で…。
「信楽さん…」
「伊吹…。いつでも戻ってこい。今度こそ、ちゃんと支えてやるから…」
「…そんなこと、言わないで…。信楽さんは、信楽さんの人生を…」
「…そ、かな…。伊吹の幸せに網をかけちゃいけないよね…」
まだ名残惜しい雰囲気を漂わせながら、信楽の腕が外れる。
苦しみ続けたのはどちらだったのだろうか…。
新たな人生を歩み始めた伊吹を、信楽は引きとめることはしなかった。
送り出してくれる、その強さも、伊吹が惚れた一つなのかもしれない。
「ご契約、ありがとうございました」
ありきたりの言葉を残して、伊吹は見慣れた場所を後にした。
今度来るとき…、また信楽が元気で、笑顔で迎えてくれたらいい、とは勝手な意見だろうか。
生命保険なんて、生きているから結べる契約であって、元気だからこそ選べる特約がある。
万が一…。それは誰にでも言うけれど、そんな万が一なんて、来ない方がいい。
いつだって逢えて、いつだって包んでくれる人たち…。
そういう存在であってほしい。…まぁ、甲賀は良い気はしないだろうが…。
営業先で出会う人々の多くを、甲賀はどう受け止めるのだろう。
信楽は何も言わなかった。
器の大きさの違いなのか、持つ感情の狭量なのか…。
信楽に会うと伝えられなかった伊吹。それを知った時にどう出られるのかも心配する。
止めてほしいわけではない。だけど相反する感情があるのも確かだった。
甲賀のそばにいたい…。甲賀のものでありたい…。
ささやかな嫉妬すら、受けたいと思うのは、甲賀が自分を必要としていると実感したいから…。
以前はその感情すら、面倒だと思っていたのに、甲賀に対してだけは異なっている。
…好き…。
いつも以上にまして、胸の奥に湧くものを知る…。
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そろそろ、終わるか?!(←夢)
こういっては失礼だが、間もなく四十代を迎える信楽に、紹介したい件はたくさんある。
その昔、伊吹のことを思ってなのか、進めるままに様々な特約まで付けて結んでくれた契約が現在ある。
それが、信楽に逢う口実なのだとは、伊吹自身も感じていた。
今更…。逢ってどうなるものでもないとは分かっていても、最後まで顔を見せてくれなかった人に、”今”を伝えたかった。
見送ってくれた、本当の意味で逞しい人だと、改めて思う。
信楽に会いにいくことを、甲賀には伝えなかった。
あくまでも”営業”の一環だと思うし、この期に及んでどうなることもないと安らかな気持ちがあった。
信楽に電話口で「保険が…」と伝えれば、意味を理解するのか、空いている時間に家にくればいいと促される。
住み慣れたはずの家が信楽だけのものになり、自分の空間がないことが悲しくも嬉しくもあった。
改めて訪れたリビングで、お茶を出してもらって、完全に自分の居場所がないことを知る。
一緒に住んだはずの家なのに、信楽が漂わせる雰囲気なのか、伊吹を近付けないものを感じた。
信楽なりの虚勢なのだろう。
「あぁ、もう、俺もそんな歳なんだねぇ」
信楽は明るく提案に聞きいってくれた。
次々と新しい商品が出ては、見合ったプランを提供していく。
決して安くはない契約書に、信楽は簡単にハンコを押してくれた。
その潔さに伊吹のほうが瞠目するくらいだった。
「伊吹が薦めてくれることだからね。あくまでも”保険”だよ。そこには伊吹が戻ってくるかもしれないかな~っていう、”保険”もあるかもね。…っていうのは冗談だけど」
どこからどこまでが本気なのかは分からない。
だけど、まだ伊吹を思う気持ちがあるのだとは、言葉の端々に滲み出ていて苦しくなる。
契約…。
そこで繋がっている人…。
書類をカバンに収め、去ろうとする伊吹の背後に信楽が寄った。
不意に背後からぎゅっと抱きしめられて、伊吹は言いようのない悲しさを覚えた。
ずっと…、ずっと顔すら見せてくれなかった人が、今は目の前にいる。
今の自分の幸せを伝える結果となってしまったけれど…。言葉巧みに伊吹の現状を探った信楽には、今は素直に何でも伝えることができた。
あらたまって挨拶をしたかった、それが、このような状況で…。
「信楽さん…」
「伊吹…。いつでも戻ってこい。今度こそ、ちゃんと支えてやるから…」
「…そんなこと、言わないで…。信楽さんは、信楽さんの人生を…」
「…そ、かな…。伊吹の幸せに網をかけちゃいけないよね…」
まだ名残惜しい雰囲気を漂わせながら、信楽の腕が外れる。
苦しみ続けたのはどちらだったのだろうか…。
新たな人生を歩み始めた伊吹を、信楽は引きとめることはしなかった。
送り出してくれる、その強さも、伊吹が惚れた一つなのかもしれない。
「ご契約、ありがとうございました」
ありきたりの言葉を残して、伊吹は見慣れた場所を後にした。
今度来るとき…、また信楽が元気で、笑顔で迎えてくれたらいい、とは勝手な意見だろうか。
生命保険なんて、生きているから結べる契約であって、元気だからこそ選べる特約がある。
万が一…。それは誰にでも言うけれど、そんな万が一なんて、来ない方がいい。
いつだって逢えて、いつだって包んでくれる人たち…。
そういう存在であってほしい。…まぁ、甲賀は良い気はしないだろうが…。
営業先で出会う人々の多くを、甲賀はどう受け止めるのだろう。
信楽は何も言わなかった。
器の大きさの違いなのか、持つ感情の狭量なのか…。
信楽に会うと伝えられなかった伊吹。それを知った時にどう出られるのかも心配する。
止めてほしいわけではない。だけど相反する感情があるのも確かだった。
甲賀のそばにいたい…。甲賀のものでありたい…。
ささやかな嫉妬すら、受けたいと思うのは、甲賀が自分を必要としていると実感したいから…。
以前はその感情すら、面倒だと思っていたのに、甲賀に対してだけは異なっている。
…好き…。
いつも以上にまして、胸の奥に湧くものを知る…。
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そろそろ、終わるか?!(←夢)
やっぱり、良い男だな。信楽さん。
なんで、良い人は振られちゃうんだろ?
早く、信楽さんにも一葉ちゃんみたいな可愛いお相手をみつけてあげてください。
そして、今回のは早くエンディングになってほしい。
伊吹さんに何にもおきないうちに。
ヘタレだあ(笑)
なんで、良い人は振られちゃうんだろ?
早く、信楽さんにも一葉ちゃんみたいな可愛いお相手をみつけてあげてください。
そして、今回のは早くエンディングになってほしい。
伊吹さんに何にもおきないうちに。
ヘタレだあ(笑)
ちーさんの 早期エンディング希望には 笑った(ノ∀≦。)ノぷぷ-ッ♪
甲賀に あれだけ”全部言え!”、”隠すな!”と言われてんのに なんでなの伊吹?
信楽と会うのに 「仕事だから・・・」と、言い訳を考えてる時点で アウトに近いでしょ?
今後の伊吹の為 2人の為 甲賀に きつく叱って貰わなきゃね!
それに まだ未練たらたらな良い男の信楽を巻き込むじゃ 可哀想だよ~
d (>◇< )伊吹 アウト!...byebye☆
甲賀に あれだけ”全部言え!”、”隠すな!”と言われてんのに なんでなの伊吹?
信楽と会うのに 「仕事だから・・・」と、言い訳を考えてる時点で アウトに近いでしょ?
今後の伊吹の為 2人の為 甲賀に きつく叱って貰わなきゃね!
それに まだ未練たらたらな良い男の信楽を巻き込むじゃ 可哀想だよ~
d (>◇< )伊吹 アウト!...byebye☆
ちー様
こんにちは。
> やっぱり、良い男だな。信楽さん。
> なんで、良い人は振られちゃうんだろ?
>
> 早く、信楽さんにも一葉ちゃんみたいな可愛いお相手をみつけてあげてください。
愛あふれている信楽でしたね。
その思いを別の方に向けていただかないと…。
甲賀の体に負けたね、信楽…。
まさか、そこから奪われていくとは…。
> そして、今回のは早くエンディングになってほしい。
> 伊吹さんに何にもおきないうちに。
> ヘタレだあ(笑)
何も起こらないでしょう。大丈夫だと思いますよ~。
(と、一応言っておく 笑)
もうそろそろ終わる予定なんですけどね~。
ヘタレにならず楽しみに待っていてくださいね。
コメントありがとうございました。
こんにちは。
> やっぱり、良い男だな。信楽さん。
> なんで、良い人は振られちゃうんだろ?
>
> 早く、信楽さんにも一葉ちゃんみたいな可愛いお相手をみつけてあげてください。
愛あふれている信楽でしたね。
その思いを別の方に向けていただかないと…。
甲賀の体に負けたね、信楽…。
まさか、そこから奪われていくとは…。
> そして、今回のは早くエンディングになってほしい。
> 伊吹さんに何にもおきないうちに。
> ヘタレだあ(笑)
何も起こらないでしょう。大丈夫だと思いますよ~。
(と、一応言っておく 笑)
もうそろそろ終わる予定なんですけどね~。
ヘタレにならず楽しみに待っていてくださいね。
コメントありがとうございました。
けいったん様
こんにちは。
> ちーさんの 早期エンディング希望には 笑った(ノ∀≦。)ノぷぷ-ッ♪
>
> 甲賀に あれだけ”全部言え!”、”隠すな!”と言われてんのに なんでなの伊吹?
> 信楽と会うのに 「仕事だから・・・」と、言い訳を考えてる時点で アウトに近いでしょ?
>
> 今後の伊吹の為 2人の為 甲賀に きつく叱って貰わなきゃね!
> それに まだ未練たらたらな良い男の信楽を巻き込むじゃ 可哀想だよ~
> d (>◇< )伊吹 アウト!...byebye☆
甲賀に嫌われるかも…と頭をよぎったんですかね。
黙ってて良いことなんてないんですけどね~。
お仕置きしてもらわなきゃ、ですか。
信楽を惑わせちゃいけませんよね。気の毒です。
ダメだしのアウト、もらってるし(o´艸`o)
仕事も、少々複雑なところにいますね。
この調子で一体何人ひっかけたんだか、伊吹は…。
そりゃ甲賀も心配するよね~。
コメントありがとうございました。
こんにちは。
> ちーさんの 早期エンディング希望には 笑った(ノ∀≦。)ノぷぷ-ッ♪
>
> 甲賀に あれだけ”全部言え!”、”隠すな!”と言われてんのに なんでなの伊吹?
> 信楽と会うのに 「仕事だから・・・」と、言い訳を考えてる時点で アウトに近いでしょ?
>
> 今後の伊吹の為 2人の為 甲賀に きつく叱って貰わなきゃね!
> それに まだ未練たらたらな良い男の信楽を巻き込むじゃ 可哀想だよ~
> d (>◇< )伊吹 アウト!...byebye☆
甲賀に嫌われるかも…と頭をよぎったんですかね。
黙ってて良いことなんてないんですけどね~。
お仕置きしてもらわなきゃ、ですか。
信楽を惑わせちゃいけませんよね。気の毒です。
ダメだしのアウト、もらってるし(o´艸`o)
仕事も、少々複雑なところにいますね。
この調子で一体何人ひっかけたんだか、伊吹は…。
そりゃ甲賀も心配するよね~。
コメントありがとうございました。
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