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BLの丘
契りをかわして 30 (最終話)
2012-04-05-Thu  CATEGORY: 契り
喧嘩をしても肌を触れあわせれば仲直りができる…、と言ったのは甲賀だった。
だからこの家にベッドは一つしかない。
言い分はなんとなく分かるような気がした。
甲賀の大きな体に包まれてしまえば、うだうだと考えていたことが全て『無』になってしまう。
相手にすがることで甲賀は満足してくれるのか…。それもどうかと思うところはあっても、伊吹自身、包まれて安堵する。
そばにいる安心感を骨の髄まで味わうことができる。

「甲賀っ、ご飯はっ?」
「そんなもの、あとでいいよ。黙っていた伊吹が悪い」
バスルームから連れ出された伊吹は、軽く水気を拭きとられただけで、寝室に引きずられた。
スーパーで購入した食材は、すぐ食べられるだけに後回しにされた。
今の甲賀を苛立たせる原因が伊吹にあるだけに逆らいようもない。
甲賀は伊吹の気持ちが完全に自分にあるのだと確かめたいわけだし、伊吹もこれ以上の不安を与えたくなくて従ってしまう。
嫉妬してもらえることが嬉しくもあった。伊吹の行動を知っても嫌われなくて済んだ安堵。
「甲賀~」
表向き、みせかけの抵抗の奥に潜むのは充足感を求めるもの。
本気で抵抗すれば甲賀が無理強いすることがないのもすでに知っている。
伊吹が何を望むのかも承知しているから、甲賀は強引な手にも出られるのだろう。その強さに惚れこんでいることも知られている。
空腹の体より、淋しがる心のほうが先に満たされることを望んでいた。

ホテル2

大きなベッドに横にされて、覆いかぶさってくる硬い体に自然と手が伸びてしまう。
「甲賀…」
囁く声にこの状況を拒んでいない態度が表れた。
フッと口角を上げる表情に、全てが許されていることを悟る。
伊吹が隠し事なく、甲賀に伝えて共に生きていくと意思表示をすることは、甲賀に余裕を与え、今まで以上に強く伊吹を包んでくれるものに変わった。
チュッとくちづけをもらい、硬い筋肉に抱きこまれる。
甲賀の首に両腕を回し、この体も甲賀の考え方も好きなのだと伝える。
すぐに離れてしまった唇に、伊吹のほうから合わせてほしいと願えば、また笑みが浮かんだ。
気持ち良さを教えてくれたのは甲賀だ。
「バカ伊吹…」
絶対に年上だなどと思っていない、堂々とした態度も良い。
対等にいられるこの時間が言いようのない心地良さを運んでくる。
体の大きさだけではない、甲賀の精神の強さ。伊吹がずっと憧れていた空間がここにはある。
「…愛してる…」
そっと伝えた伊吹の気持ちに、甲賀は「あぁ…」と小さく呟いただけで、ぎゅっと抱きしめ返してくれた。
言葉で伝えなければならないもの…。言わなくても伝わってしまうもの…。
この男なら何を感じても、何を口にしても、正直に意見を言い、”本当の伊吹”を導き出してくれるだろう。
だからこそ、隠し事の無意味さ。

苦しみ続けたセックスの世界を変えてくれた。ただ寄生するだけだった人生観が、自分が本当に欲しいものを手に入れたい欲望があることを教えてくれた。
伊吹の心も身体も、今以上に高揚させてくれる人間など出てこないだろう。
いや、探そうとも思わないか…。

初めて惚れたのはどちらだったのか。
近付ける原因となった保険の契約書。
もらったものより、今度は自分であげたい…。

触れあわせる体の熱さの奥から疼いてくる熱情を、素直に訴える。
昔、相手に奉仕してその気にさせた努力がここではいらない。ありのままの自分でいられる居心地の良さ。
甲賀が欲しいというものをあげよう。それを伊吹からの契りの証として…。

「あ、…甲賀…」
ゆっくりと押し込まれる灼熱に悦びの涙と声が上がる。
ぎゅっと抱きつく細い身体を愛おしそうに抱き返してくれる逞しい腕。
「伊吹…」
聞こえてくる掠れたような低い声が伊吹の全てを痺れさせ、溶かしていく。
徐々に激しい動きに変わる甲賀の腰が、伊吹を捕らえる。そして虜にする。
甲賀に全てを委ねると甘えた態度の伊吹を愛してくれる人。
伊吹にとって、最後の男だと、この瞬間に誓った。
「甲賀…っ」
張り詰めた熱棒が甲賀の手にくるまれて快感を浴び、伊吹の最奥で甲賀が弾け飛ぶ。

『気持ちいい…』

触れる体、触れられる体。満たされる内筒。
出会ったその時から変わらない。この後も変わることはないだろう。
伊吹はもう一度「愛している…」と声に出して、甲賀の口端を上げさせた。


―完―

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完結で~す。無事終わりました。
嫉妬をいいように愛に転換していく二人です。
勝手にいちゃこらしていろって感じですが…(笑)
一か月くらいの単位でお話を展開していけたらいいなぁ、とはかない夢を抱いています(←)
あまり長くなると飽きちゃうかな~と思って。(私が飽きるのか…)
お付き合いありがとうございました。

謎の心霊写真?! 別宅にて公開中。
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コメント

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No title
コメントけいったん | URL | 2012-04-05-Thu 00:36 [編集]
離婚の原因の上位に ”性格の不一致”があり 誰彼言うには 「それは”格抜き”って事でしょ♪」って

え~っとですね、何が言いたいかって
甲賀と伊吹は その”格抜き”の相性がバッチリなのね~という話し:*:・'゜ (〃ゝ∇・)ゞえヘッ♪

別宅で写真を見ましたが、あの茶色くて四角い事でしょうか?(o'ω'o)?
どう見ても テーブルのような・・・

完結 お疲れ様~ ゆっくり休んで英気を養って下さいね♪
゚*。(b・∀・b)。*゚byebye☆
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-04-05-Thu 07:02 [編集]
けいったん様
おはようございます。

> 離婚の原因の上位に ”性格の不一致”があり 誰彼言うには 「それは”格抜き”って事でしょ♪」って
>
> え~っとですね、何が言いたいかって
> 甲賀と伊吹は その”格抜き”の相性がバッチリなのね~という話し:*:・'゜ (〃ゝ∇・)ゞえヘッ♪

相性(愛商って出た!!なんだ、それは。愛を売る商売か?!)ばっちりみたいですよ。
離婚の原因…。
(過去に離婚したのが一人いたなぁ… ←成俊)
このふたりはまず体でつながっていますからね~。
くっついて寝ている間は"離婚"にはならないと思います。

> 別宅で写真を見ましたが、あの茶色くて四角い事でしょうか?(o'ω'o)?
> どう見ても テーブルのような・・・
>
> 完結 お疲れ様~ ゆっくり休んで英気を養って下さいね♪
> ゚*。(b・∀・b)。*゚byebye☆

テーブル!!そうか~。
すぐ近くにあるように見えてしまいましたが、離れていたのかなぁ。
まぁ、なんにせよ、広い部屋だったことだけは覚えています。

連載中、お付き合いありがとうございました。
何か材料(ネタ)を拾いに行ってきま~す♪
コメントありがとうございました。

No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-04-05-Thu 07:08 [編集]
s様
おはようございます。

>お疲れ様でしたm(_ _)m。次のお話楽しみにしてます。新しい話も楽しみですが、今までのお話のSSも楽しみです。

無事終わりました~♪
今までのキャラだと人物設定をしなくていいのでラクチンです♪
どこから出そうかな~?(←ってすっかりその気?!)
何か考えてお披露目しますね~。
コメントありがとうございました。

さみしい(笑)
コメントちー | URL | 2012-04-05-Thu 07:31 [編集]
あ、本当に終わっちゃった。
でも、伊吹さん、幸せそうだからねっ。
二人、いちゃいちゃしといて下さい。

早く終わってと願っておいてなんですが、やはり淋しいですね。
次回は、伊吹さんと千種の対談にしてください!
忘れてないヤツ(^ー^)
Re: さみしい(笑)
コメントたつみきえ | URL | 2012-04-05-Thu 09:09 [編集]
ちー様
こんにちは。

> あ、本当に終わっちゃった。
> でも、伊吹さん、幸せそうだからねっ。
> 二人、いちゃいちゃしといて下さい。

終わりましたよ~。
そう、イチャイチャしていてくれと壁際あたりから言ってやってください。
(まぁ、真正面から見られてもこのふたりなら堂々といちゃこらしているでしょうが。)

> 早く終わってと願っておいてなんですが、やはり淋しいですね。
> 次回は、伊吹さんと千種の対談にしてください!
> 忘れてないヤツ(^ー^)

Σ( ̄□ ̄;) わ、忘れられていなかった…。
伊吹と千種、色々な意味で強いので、ちょっと怖いです…。
自分で言いだしたことなんだけれどね~。
でも興味を持っていただけて嬉しいです。(それだけキャラを思われているのネェと勝手に思う…)
コメントありがとうございました。
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