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BLの丘
ふたり 1
2012-04-09-Mon  CATEGORY: ふたり
生命保険会社からすぐ近くのカフェで、高島旭(たかしま あさひ)は多賀伊吹(たが いぶき)と待ち合わせていた。
旭は不動産会社で物件を紹介する営業職に就いている。また伊吹は生命保険を売る営業社員だった。
旭は伊吹と同じ年くらいかと思っていたのだが、実は30代の半ばだと聞いた時には耳を疑った。
見た目は20代の後半で充分通じる若さを見せていた。
旭と伊吹は外見が良く似ている。そのため、これまでも友達のような感覚で接触があって、改めてお互いの年齢を知っても、今更ご丁寧な言葉遣いなどできなかった。
伊吹自身、気さくな性格で、突然の変わりばえを好んでいない。そのことに旭は救われてもいた。

しばらく待つと伊吹が入ってきて、ニコニコとした営業スマイルを浮かべながら、旭のそばに近寄ってくる。
ふたりして小柄な体格だが、表情に浮かぶ華やかさは、人を惹きつける魅力を持っていたりする。
伊吹が流れる黒髪と黒い瞳を持つのに対して、旭はウェーブのかかった焦げ茶色の髪と光に当たると茶色さを増す瞳。
ふたりが並ぶと余計に目立つものがあったが、いずれも表現される形容詞は『可愛い』で、旭はあまり納得がいっていない。
「お待たせ~」
「俺も今来たとこです~。…住み心地いかがですか?」
旭が座るテーブル席の前の椅子に腰を下ろした伊吹に早速現状を聞いてみる。今日の旭の目的だった。
伊吹はつい先日、旭の会社で物件契約を結んでくれて、引っ越して1カ月ほどたったばかりだ。顧客の満足度を聞くのは重要である。
旭も伊吹ご推薦の保険契約を持っていたりして、ちょくちょく会社に訪れてくれる伊吹と自然と親しくなっていた。
「うん。いい感じ。家賃、もっと下げてくれると嬉しいけど」
「そんなの無理ですよ~っ。うちだって家主とのやりとりがあるんだから~っ」
「ははは。そうだね」
「相手の人は?何か言ってます?」
「べつに。アイツ、あまりこだわらない性格だから」
伊吹が一緒に住む人物とは一度だけ顔を合わせたことがある。引っ越しをするという日、朝一番にお邪魔した時に、やたらと体躯の良い男がいてびっくりしたものだ。
重そうな荷物ですら、ひょいひょいと持ち上げ、伊吹の指示を受け入れていた。
生活に関しての主導権を握っているのが伊吹なのだとは、なんとなくその時に知れてしまったけれど…。
ふたりの関係まで突っ込んで聞くのは躊躇われたが、漂う雰囲気に甘いものが混じっていて、羨ましく思えた。
伊吹が見せる雰囲気も、以前とは違って変な”膜”がない。
数多くの同居人となる組み合わせを見てきたが、あまりにも自然体でそこに存在していたふたりだった。

「へぇ。でもそんな雰囲気、ありましたね。スーツ着ているサラリーマンとはちょっと違うような…」
「スーツっ!見たことない~っ」
旭が素直な意見を述べれば、あからさまに伊吹が驚いて、直後にはケラケラと笑いだした。
「え?そうなんですか?」
「そうっ。だって現場勤務だもん。いっつもきったない作業着、着てるよ」
「随分な言い分…」
世の人間が自分たちと同じような格好で仕事をしていないのは承知しているが、伊吹が選ぶからには…という思考も働いた。
何より伊吹の見た目の良さからつり合う人物が好みではないだろうか…と勝手な思いが巡っていた。
確かに仕事中と私服は変わるだろうが…。事実、旭も拝んだ時には、作業着ではなかったし、薄汚い格好でもなかった。

旭も伊吹も基本的に外回りという仕事柄、予定がなければそれほど時間を制限されることもない。
時にはこんな雑談で情報のやりとりがあったりもする。
一杯目のコーヒーを飲み終わり、「ケーキでも食べちゃおう」と伊吹の提案を受けて、追加注文をする。
ふたりして「経費で落とせちゃうから~」という言い争いがこの後やってくるのが常で…。
そのケーキも平らげられようかという頃、旭はふと入口に気を取られた。
客の出入りを気にかける店員ではあるまいし…。しかし、引き寄せられるというのはこのことを言うのだろうと痛感する。
今しがた入店してきた二人連れの男性客を、女性店員が案内しようと自分たちの方へと向かってきた。
共にビシッとスーツを着こなした年上の男性だが、この二人にも年齢差が見てとれるところ、友人といった感じではなさそうだ。
旭の視線は後から大人しくついてくる人物に釘づけだった。
少し長めのまっすぐな髪が自然な姿で揺れる。暖かそうな印象が前面に出ている。店員の身長を見ても、背は高い方だろう。
意識せずとも旭は完全に見惚れていた。
不自然に固まった旭に気付いて、伊吹も同方向に首を巡らせた。
次の瞬間、動揺に動きを止めて、黒い瞳を見開いたのは伊吹のほうだった。
「え…?」
あからさまに向けられる驚愕の態度に気付かない客でもなかったようだ。
「伊吹…」
同様に驚いた表情を浮かべたが、どこか儚げに笑っただけで離れた席へと進んでいった。
彼が見つけたのは明らかに伊吹のほうで、しかしそこに漂うぎこちなさはふたりの不穏な関係を伺わせる。
いつも明るい雰囲気しか見せない伊吹が、傍目にもわかる戸惑いを浮かべたのを見るのが初めての出来事だと、旭は改めて思った。

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新連載、スタートです。
まだ出てくる伊吹…。いや、もう営業しないから(笑)
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コメント

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No title
コメントけいったん | URL | 2012-04-09-Mon 12:05 [編集]
今度の新作品の主役は 誰かな?と思えば、またまたまたの伊吹の登場(*o´・∞・`)?
あぁ~そういえば ちょこっと出てましたもんね~不動産屋の彼!
名前は、旭って 言うのか..._〆(・∀・*)へぇ~

で、お相手は?・・・!!!!
キタ━━━.。゚+. ((ヾ(☆・ω・★)ノ)).。゚+.━━!!かな?
これは 来たかなぁ~?来たな、これは!(大喜)

いつも余計な事まで書いちゃうんで
これ以上は お口チャック!( ´゚ж゚` )...byebye☆
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-04-09-Mon 17:07 [編集]
けいったん様
こんにちは~。

> 今度の新作品の主役は 誰かな?と思えば、またまたまたの伊吹の登場(*o´・∞・`)?
> あぁ~そういえば ちょこっと出てましたもんね~不動産屋の彼!
> 名前は、旭って 言うのか..._〆(・∀・*)へぇ~

また伊吹が登場です~。
よく、不動産屋を覚えておいででしたね。
そうです。彼が今回の主役。
さりげなく、過去に出しておきましたヽ(゚∀゚)ノ(←誰かが、コチョコチョと『良い人を…』と言っていたので)

> で、お相手は?・・・!!!!
> キタ━━━.。゚+. ((ヾ(☆・ω・★)ノ)).。゚+.━━!!かな?
> これは 来たかなぁ~?来たな、これは!(大喜)
>
> いつも余計な事まで書いちゃうんで
> これ以上は お口チャック!( ´゚ж゚` )...byebye☆

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
間違いなく来てます。
ここまで書けば十中八九誰もが分かると思うので書かれても…。
けどお口チャック、ありがとうございます。
是非お楽しみに♪
コメントありがとうございました。

危ない
コメントちー | URL | 2012-04-09-Mon 18:21 [編集]
新連載ですねえ。
珍しく、コメントから読んだんですよ。
私、書くとこでした。アブナァイ(笑)

旭くん、きっと幸せになれそうだ。
伊吹、モヤモヤしそうだけどね。
あんたは、幸せになったから良しっ。
Re: 危ない
コメントたつみきえ | URL | 2012-04-09-Mon 21:35 [編集]
ちー様
こんばんは。

> 新連載ですねえ。
> 珍しく、コメントから読んだんですよ。
> 私、書くとこでした。アブナァイ(笑)

コメントから読む…。へぇ。そういうこともあるのですか。
何を書いてくれても問題ない私ですよ~。
(たまに爆弾投下されるけど(´∀`;))

> 旭くん、きっと幸せになれそうだ。
> 伊吹、モヤモヤしそうだけどね。
> あんたは、幸せになったから良しっ。

伊吹に対して何やら厳しい発言が…。
…うん、確かに幸せになりましたけどね。
次は旭の晩です(`・ω・´)ノ
良いお相手に巡り合っていただきたいものです。
(それこそ、伊吹、邪魔するなよ~~~っっですね)

コメントありがとうございました。
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