宣言通り、旭は次の休みに引っ越しを終えた。
様子を見に来た信楽が、物の多さに苦笑していたが。
「旭、必要なの?いらないの?」
大きな家具のほとんどは処分されることになった。持っていく場所も必要性もないものばかりだ。
テキパキと散らかったものを片付けて、手伝いをしてくれる。
あまりの手際の良さに旭は声を発するだけで、呆然としてしまう。
呼び寄せた引っ越し業者も手慣れたもので、次々と荷物をまとめてくれた。
処分を悩んだものは、「うちにもっていけばいい」と信楽はその場での即座の判断はさせなかった。
今は、この家を空けることが先だろう…といった感じだ。
『次の休みには空き室にする』と発言した旭のことを思うのだろう。
旭にしてみたら、その場の思いつきで言ったことで、特に準備を進めていたわけでもないのが、明らかに分かる状態。
もっとも家に帰らず信楽の家に入り浸ったのだから、当然と言えば当然か…。
衣類や趣味のDVDなど、想像以上に荷物は少なかった。
買いこんで溢れていた物たちは捨てる勇気をもてないものだったのだから、今回の引っ越しは整理する上でもいい機会だった。
「旭…。やっぱりベッドの一つくらい持っていった方が…」
「いらないっ」
「でも、あの部屋にあってくれたほうが、旭が部屋にいて寛げるところがあることになるよ」
信楽の提案を頑なに拒んだ旭だったが、静かに諭してくる。
それは、信楽の仕事の邪魔にならない以上、その場所にいていいということになる。
この前、信楽の後を追った旭は、居場所がなくて、残されたベッドの上に腰かけていた。
今、そこは空間になっている。
消えたベッドがあったから、旭はリビングにいたり、寝室に先に向かったりしていた。
旭が使い慣れたものであるのなら、何も捨てることはないだろうと、信楽なりの気遣いなのだと、深く感じた。
自分の香りがあれば、堅苦しくなることもなく安らげ、気分も変わるだろうと…。
小さな逃げ場所でもいい。
この先、何が起こるか分からない付き合い方は、まだ未知の部分を残している。
そこは伊吹と過ごした経験が言うのだろうか。
すれ違えば個室に逃げていく…。
時にはそのような時間を持つことも大事だと。
そして一人で過ごせる余裕をもてること。
お互いが心地良く暮らすために必要なものを、旭より信楽の方が良く知るはずだ。
だけど引き離されるような旭の焦りを知るのだろう。
信楽は「違うよ」と微笑む。
「旭が寝るところは俺の隣だろう?新しくソファも何でも買ってあげたいけれど、余裕が俺にはないからね」
ふわりと見つめられて冗談を口にする。
まさかの口実である。
簡単に伊吹の家具を揃え、あっという間に捨ててしまった人。
ここから持ち込んだベッドはあくまでも、信楽の仕事の隣にいる旭の居場所として置きたいものであるのだと諭す。
ほんの僅かでも、旭の気を許せる場所を作りたい信楽の気持ちが、窺えた。
全てが整えられた伊吹の時の空間よりも、強引に『押し掛けた』旭を受け入れたものと感じられれば、立場関係が変わってくる。
“呼んだ”過去の人とは違う。
「信楽さん…」
なんと答えていいのか分からないでいる旭に、いつものごとく微笑んだ信楽が「持ってきてくれたら嬉しい」とトドメをさした。
どんな意味があろうが、伊吹の場所だったところが旭の空間に変わることは、嫌ではない。
「信楽さん…」
思わず甘えそうになって寄り添おうとした体を、即座に引き剥がされた。
「はいっ、片付けて。今日中にうちに来られなかったら会社に戻すからね」
厳しい意見に”メリハリ”の意味を改めて知らされる。
信楽は、甘やかすが、甘やかしすぎはしない…。
にほんブログ村
ポチってしていただけると嬉しいです(〃▽〃)
短いですが…。
そしてちょっと出かける予定があるので週明けまで更新は難しいと思います。
40話くらいで終わりにしたい願望がありますが…さて…。
様子を見に来た信楽が、物の多さに苦笑していたが。
「旭、必要なの?いらないの?」
大きな家具のほとんどは処分されることになった。持っていく場所も必要性もないものばかりだ。
テキパキと散らかったものを片付けて、手伝いをしてくれる。
あまりの手際の良さに旭は声を発するだけで、呆然としてしまう。
呼び寄せた引っ越し業者も手慣れたもので、次々と荷物をまとめてくれた。
処分を悩んだものは、「うちにもっていけばいい」と信楽はその場での即座の判断はさせなかった。
今は、この家を空けることが先だろう…といった感じだ。
『次の休みには空き室にする』と発言した旭のことを思うのだろう。
旭にしてみたら、その場の思いつきで言ったことで、特に準備を進めていたわけでもないのが、明らかに分かる状態。
もっとも家に帰らず信楽の家に入り浸ったのだから、当然と言えば当然か…。
衣類や趣味のDVDなど、想像以上に荷物は少なかった。
買いこんで溢れていた物たちは捨てる勇気をもてないものだったのだから、今回の引っ越しは整理する上でもいい機会だった。
「旭…。やっぱりベッドの一つくらい持っていった方が…」
「いらないっ」
「でも、あの部屋にあってくれたほうが、旭が部屋にいて寛げるところがあることになるよ」
信楽の提案を頑なに拒んだ旭だったが、静かに諭してくる。
それは、信楽の仕事の邪魔にならない以上、その場所にいていいということになる。
この前、信楽の後を追った旭は、居場所がなくて、残されたベッドの上に腰かけていた。
今、そこは空間になっている。
消えたベッドがあったから、旭はリビングにいたり、寝室に先に向かったりしていた。
旭が使い慣れたものであるのなら、何も捨てることはないだろうと、信楽なりの気遣いなのだと、深く感じた。
自分の香りがあれば、堅苦しくなることもなく安らげ、気分も変わるだろうと…。
小さな逃げ場所でもいい。
この先、何が起こるか分からない付き合い方は、まだ未知の部分を残している。
そこは伊吹と過ごした経験が言うのだろうか。
すれ違えば個室に逃げていく…。
時にはそのような時間を持つことも大事だと。
そして一人で過ごせる余裕をもてること。
お互いが心地良く暮らすために必要なものを、旭より信楽の方が良く知るはずだ。
だけど引き離されるような旭の焦りを知るのだろう。
信楽は「違うよ」と微笑む。
「旭が寝るところは俺の隣だろう?新しくソファも何でも買ってあげたいけれど、余裕が俺にはないからね」
ふわりと見つめられて冗談を口にする。
まさかの口実である。
簡単に伊吹の家具を揃え、あっという間に捨ててしまった人。
ここから持ち込んだベッドはあくまでも、信楽の仕事の隣にいる旭の居場所として置きたいものであるのだと諭す。
ほんの僅かでも、旭の気を許せる場所を作りたい信楽の気持ちが、窺えた。
全てが整えられた伊吹の時の空間よりも、強引に『押し掛けた』旭を受け入れたものと感じられれば、立場関係が変わってくる。
“呼んだ”過去の人とは違う。
「信楽さん…」
なんと答えていいのか分からないでいる旭に、いつものごとく微笑んだ信楽が「持ってきてくれたら嬉しい」とトドメをさした。
どんな意味があろうが、伊吹の場所だったところが旭の空間に変わることは、嫌ではない。
「信楽さん…」
思わず甘えそうになって寄り添おうとした体を、即座に引き剥がされた。
「はいっ、片付けて。今日中にうちに来られなかったら会社に戻すからね」
厳しい意見に”メリハリ”の意味を改めて知らされる。
信楽は、甘やかすが、甘やかしすぎはしない…。
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短いですが…。
そしてちょっと出かける予定があるので週明けまで更新は難しいと思います。
40話くらいで終わりにしたい願望がありますが…さて…。
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信楽さん、なんでゲイなの?
(そりゃ、BLだからじゃんね)
勿体ない、良い男は何でゲイなのさあ。
(だから・・・)
安住さんもー、成俊パパもー。
私の好きな人は・・・しつこい(笑)
旭が羨ましいなあ。
良いなあ、旭。
なんかさー、波風立ててやりたいわ。
でも、立てられると心配するヤツ(-.-)
あ、きえさんがお休みに入っちゃうのかあ。淋しいな。
(そりゃ、BLだからじゃんね)
勿体ない、良い男は何でゲイなのさあ。
(だから・・・)
安住さんもー、成俊パパもー。
私の好きな人は・・・しつこい(笑)
旭が羨ましいなあ。
良いなあ、旭。
なんかさー、波風立ててやりたいわ。
でも、立てられると心配するヤツ(-.-)
あ、きえさんがお休みに入っちゃうのかあ。淋しいな。
ちー様
こんにちは~。
長らく放置してしまいすみませんでした。
> 信楽さん、なんでゲイなの?
> (そりゃ、BLだからじゃんね)
> 勿体ない、良い男は何でゲイなのさあ。
> (だから・・・)
>
> 安住さんもー、成俊パパもー。
> 私の好きな人は・・・しつこい(笑)
なんででしょうね(笑)
みんな男の人(子)が好きなご様子。
ちー様、みんな好きだったんですか~?
右見て左見て、前見て後ろも見て~。伊吹のようなお方ですね~(嘘々)
> 旭が羨ましいなあ。
> 良いなあ、旭。
> なんかさー、波風立ててやりたいわ。
> でも、立てられると心配するヤツ(-.-)
>
> あ、きえさんがお休みに入っちゃうのかあ。淋しいな。
嫉妬してもあまりちょっかい出さないでくださいね~。
波風が立つのは続編、ということで(え?!(゚∀゚;))
とりあえず、まとめるものをまとめないと~~~。
あと2話で完結できるのかな~(←明らかに無理)
コメントありがとうございました。
こんにちは~。
長らく放置してしまいすみませんでした。
> 信楽さん、なんでゲイなの?
> (そりゃ、BLだからじゃんね)
> 勿体ない、良い男は何でゲイなのさあ。
> (だから・・・)
>
> 安住さんもー、成俊パパもー。
> 私の好きな人は・・・しつこい(笑)
なんででしょうね(笑)
みんな男の人(子)が好きなご様子。
ちー様、みんな好きだったんですか~?
右見て左見て、前見て後ろも見て~。伊吹のようなお方ですね~(嘘々)
> 旭が羨ましいなあ。
> 良いなあ、旭。
> なんかさー、波風立ててやりたいわ。
> でも、立てられると心配するヤツ(-.-)
>
> あ、きえさんがお休みに入っちゃうのかあ。淋しいな。
嫉妬してもあまりちょっかい出さないでくださいね~。
波風が立つのは続編、ということで(え?!(゚∀゚;))
とりあえず、まとめるものをまとめないと~~~。
あと2話で完結できるのかな~(←明らかに無理)
コメントありがとうございました。
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