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BLの丘
原色の誘惑 8
2012-08-19-Sun  CATEGORY: 原色の誘惑
R18 性描写があります。閲覧にはご注意ください。


『由利?』
返事ができずにいた由利に、再び声がかけられる。
なんと答えたらいいのだろうか。
一瞬の悩みの後、「う、…うん…」と小さな声が零れた。
電話機の向こうから、安堵したような吐息が漏れるのを耳にした。
『この前…、悪かったよ。あの後どうなったかって、本荘さんに聞いたけど…』
この前、というのはトイレでの一件だろう。名字で呼ぶのは由良のことで、たぶん仕事上の立場がそう呼ばせるのだろう。
「うん…」
一時は逆上するくらい怒り心頭だったのに、今は謝罪の言葉を素直に受け止めてしまう。
耳に響いてくる声は、やはり初めて出会った時とは全く別人のもののようだった。
『だけどさ、あの時の由利、マジで可愛かったんだよ。本気で嫌がられるのもなんだし…と思って引いたけど…』
…あれで”引いた”のか…?
疑問が脳裏に咲いてしまう。酔っていたのは由利も一緒だったが、けしかけていい悪戯の範囲ではなかっただろう。
覗きこんだり、尻を触ったり…。
『だから今日、本荘さん、見た時はすげぇびっくりして…。最初は動揺で違いなんて分からなかくて由利だと思い込んでいたけれど、なんていうかな…。ふたり揃うと、雰囲気が完全に違うのな…。間違えたことは悪かったって本荘さんにも言っておいたけどさ。…由利、こうして電話してきてくれたってことは、期待してもいいってこと?単なる通り過ぎだったら諦めもつくけれど、居場所が分かった今、俺、無理だわ…』
その『無理』は諦められないということなのだろうか…。
そこまで自惚れていいのかと由利は自身に自制をかける。
気を引きたくて起こした痴漢行為は甚だしいものだけれど、印象を植え付けるには充分だった。
憎たらしかったはずなのに…、真摯に囁かれる言葉はジンと胸の中に落ちてくる。
「僕…」
これが会社の電話だからだろうか。周りにいる人の視線も感じるからなのか、由利から言葉が発されることはなかった。
その状況を、雄和も悟れるのだろう。
無理に何かを求めはしない。
『由利、時間作れない?今日でも明日でも…。何時でもいいよ。迎えに行くから…』
きちんと向かいあって、最初からやりなおそう、という提案に、どう返事をしたらいいのかと、やはり由利は黙ってしまった。
困ったように見上げた先、高畠が、聞こえていないのだろうが、内容を理解できているように、「頷いとけ」と笑ってくる。
爆笑していた湯田川が、わざとらしく相手に聞こえるように「門限、10時だって~っ」と大声を上げた。
『は?』
何やらかわされる複数の会話に、目に見えない人は疑問の声を上げたけれど…。
想像力の豊かな企画部の人間は、時に恐ろしい…。

「な、なんでもな…い…。…あ、あの、携番、言うから…」
『うん、ありがとう』
素直に受け答えをしてくれる姿勢に、鼓動はますます早くなる。
もう出会った時の嫌なイメージはどこにも湧いてこなかった。
今が仕事中だということも分かるから、この場での会話を切り上げたかった。
自分の番号を伝え、電話を切るとホッと溜め息が漏れた。
高畠と湯田川が同時にくしゃくしゃと髪を撫でてくる。
「ちょ…っ、もぅっ」
「由良はさ、ユーリを泣かせる奴、絶対に許さないよ。ユーリが我慢して耐えることも」
「そうそう。だから思いのままに進めばいいんだよ。ユーリが幸せだって言えれば、由良も満足するんだから」
高畠と湯田川に同じことを言われて、でもやはり控え目な態度になってしまう。
それは由良から離れていく恐怖にも似たものなのだろうか。
ずっと一緒に育ってきた。いつだって一緒にいた。一番近くにいたのは由良だったはずなのに…。
まるで裏切るような後ろめたさが湧きあがってくるのだ。

その日は定時で上がった。
待ち合わせたように由良も姿を見せて、ふたりで並んで帰る。
雄和のことをどう話題に出そうか、だけど言えないまま、家路について、あり合わせの食事をして、風呂に入った。
一緒にいるのに、どこかぎこちない空間に、戸惑いを覚えているのは、ふたりともなのだと思う…。

リビングで何度も溜め息を吐く由利の心情を分かったように、由良が隣に座った。
肩を抱かれて、胸に抱き寄せられて、もう何年と味わってきた安らぎを感じ取る。
「由良…」
呟いた唇を、同じ形のものが塞いだ。
温かい…。
吐息を混ぜ合わせるように口腔を舐めあう。
絡ませた舌先が、新たな水音を生んだ。
不安になる由利を慰めてくれる者…。
「ユーリ。今日、一緒に寝る?」
時々、魂が惹かれあったように、寝床を共にすることがあった。
欲求不満とも呼べるべきものまで、ふたりは共有してきたのだ。
「…うん…」
由利は誘われて、手を繋がれて、由良の部屋に入った。
シングルベッドなのに、ふたりでくっついて眠るにはちょうどいい大きさだった。
シーツの海になだれ込み、どちらからともなく、衣類を脱ぎすてていく。
同じ行為を、雄和とも交わす日がくるのだろうか…。
そんなことを想像したら、グッと腰の周りに熱いものが注ぎ込まれた気分だった。
ダイレクトに触れてきた由良の手が、由利の性器を包んだ。
「今日のユーリ、熱い…」
「や…、ゆら…っ」
横向きのまま、重ねた腰が揺らぐ。
滾る怒張同士がぶつかる。
「由良…」
離れていくことの怖さ。由利の不安と雄和に対する期待を、由良は感じ取ってしまっているのだろうか。
「ユーリ…」
湿った声が、落ち着かせるように耳朶に降ってきた。

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あーっ、もぅっ。
消すに消せなくなった…。
学習しよう、きえちん.・゜゜・(/□\*)・゜゜・
明日分の記事、どうするんだよ~~~~っヽ(`Д´)ノウワァァン!!

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コメント

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No title
コメントけいったん | URL | 2012-08-19-Sun 14:15 [編集]
きえ様、また やっちまったの~?
読者には ラッキーだけどね(*^-')b

由良と由利は、そういう関係があったんだ!
魂が、半身を呼び合うのかな~
カモ━━━━щ(゚ロ゚щ)━━━━ン。。。byebye☆
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-08-19-Sun 16:10 [編集]
けいったんさま
こんちわー。
やっちまいすぎてますっ。
訳が分からないところがぁぁぁぁ。

> きえ様、また やっちまったの~?
> 読者には ラッキーだけどね(*^-')b
>
> 由良と由利は、そういう関係があったんだ!
> 魂が、半身を呼び合うのかな~
> カモ━━━━щ(゚ロ゚щ)━━━━ン。。。byebye☆

もう一話上がっているらしてけれど、むしっ。
私、どこまで音痴なの~。・゚・(ノД‘)・゚・。

明日まで待ってね。

由利と由良はそういう関係です。
驚いた方がいたかは分かりませんが…。
惹かれあっちゃった双子さんなんです。
これって、まぁ、他人が見ていい出来事じゃないでしょうね。
視る人がいるんだろうか…。
そのうち3Pでもしてくれってね…(←いえ、何もつぶやいておりません)
由良由利高畠雄和…。いえ、何も、何も…。
こめんとありがとうございまた。
やっちまったなあ←古い
コメントちー | URL | 2012-08-19-Sun 20:33 [編集]
きえさあん、お疲れ?
明日、読んだ方が良いかなあ?


無理っ!

私、ユーリが雄和ともうしちゃうのかと思った。
双子ちゃんどうしかあ、なぁんだ、良かった・・・

え?えー、えー、えーっ!
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