一人で出会うなら不安もあったけれど、由良が隣にいてくれることで由利にも精神的な余裕が生まれた。
在庫管理室は機械に囲まれている。
パソコンのモニターなどはもちろん、受発注を受けるファックスや電話がズラリ。
簡単に入れてしまうことに由利は驚いてもいたが…。
つながれた手に促されて、その場所に入っていく。
さりげなく、仕事を続けているらしい姿…。
スーツをきちんと着こなした男が、何やら点検するように色々な機械をいじっていた。
全ての動作は単に、この場にいたい、言い訳だろう。
見た姿は、あのトイレで出会ったものとは違う凛々しさがあって、正直、由利は戸惑ったくらいだった。
そして振り向いた顔は、ふたりを確認して固まった。
由良が自信満々に声を発する。
「分かった?あなた、勘違いしていたこと。どっちかの区別もつかないなら、声なんかかけるなっ」
冷たく退ける由良の言葉に、由利は今更ながら動揺してしまった。
自分本位に物事を進める、勝手な男だとは理解していたけれど…。
改めて見た印象が、第一印象とかけ離れ過ぎているせいだろうか。
今、目の前にいる人物は、人生を充実させた、凛々しい姿の男。
着崩したものもなく、ピシッと整えられた”働く”姿に、何故か惹かれてしまう。
「ゆ、由良…」
袖口を掴んで責め立てようとする由良を押し留めてしまう。
その態度に由良が苛立ちを含めたのが分かった。
「ユーリ?」
…分かる…。由良がどうしてこの男に対して怒るのか、充分なほど知れた。
屈辱を味あわせてくれた男だから…。憎たらしく思う人なのだとも。
自分だって、ここにくる直前まで、絶対に許しはしない存在だったはずなのに…。
何が惹きつけるものになるのか、由利も分かりはしない。
戸惑いの一つ。それを双子は敏感に感じ取ってしまうのだ…。
「ユーリっ!!」
「マジかよ…。双子…?」
呆然としたような男の声がその場に響いた。
由利と由良、交互に見比べた男は、すぐさまその違いを感じ取ってしまった。
焦点を由利に当ててくる。
見つめられることの熱さを、背筋を駆け上がってくるものと同時に受け止めるしかない。
嫌悪は次の瞬間、憧憬へと変わる。
あれほど憎らしかった人物のはずなのに…。
訳のわからない感情に襲われて、由利は居辛さを覚えた。
まっすぐに見つめてくる視線から逃れたい思いもあった。
おかしくなりそうで、怖くなる。
「由良…、僕、ごはん…」
振り返ったら何故か高畠と湯田川がいた。
まるで引き渡すかのように、由良が由利の背を押して、この場から去るように促してくる。
「ちょっと待てよっ、オイっ」
男の声が背後に突き刺さって、由利は一瞬動きを止めた。
その声を由良が止めた。
「関わるな。ユーリは絶対に渡さない」
「おまえに話はねーよっ」
「ナンパ男っ!!ユーリは嫌だって言ってんのっ」
言い争う口調の中、求められるもの、護ろうとするものを切実に感じる。
そして、ふたりが並んだことで、はっきりと違いを認めて、求めるものが何になるのかを男は理解したようだった。
求められるものが自分だと分かれば、余計に精神がそちらに靡いてしまうのは性なのだろうか…。
だけど、由良も大事な人のひとり…。
このまま由良の言う通り、何もなかったことにして別れるのが一番良い結果になると判断ができた。
「ユーリ。今日はお兄さんが何かおごってあげるよ~」
茶化した高畠の声が鼓膜を通り抜けていく。
嬉しいはずの言葉なのにあの男に聞こえている状況が、酷く嫌だった。
自分は、誰にでも尻を振る、軽い人間ではないと、たったこんなことですら思ってしまう。
由利と由良を、僅かな間だけで見比べられた強さにも心が傾いたのかもしれない。
だけど、由良が嫌だって言うのなら…。
自分だって、なんていう男だ…って思っていたはずなのに…。
改めて出会って、違うものを感じて、戸惑いは由利のほうが大きい。
在庫管理室の機械部屋を後にするとき、「由利っ」と呼びかけられた声にビクンっと震えた。
でもその声に振り返れなかった。
そこにいる由良が分かったから…。
護ろうとする存在。そして大事にしたい存在。
切っても切り離せない存在を知るからこそ、由良に従うべきだろうと由利は判断した。
僅かに揺れ動いた心は、隠せばいい。
あんなに嫌な人間だったのだから…。
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アンケ…いつの間に佐貫が安住を抜いていたの…?
猛攻ってこのことだね…。
トップは相変わらずみこっちゃんだけど…。
締め切り、いつにするかなぁ。今の話が終わるころ?!
在庫管理室は機械に囲まれている。
パソコンのモニターなどはもちろん、受発注を受けるファックスや電話がズラリ。
簡単に入れてしまうことに由利は驚いてもいたが…。
つながれた手に促されて、その場所に入っていく。
さりげなく、仕事を続けているらしい姿…。
スーツをきちんと着こなした男が、何やら点検するように色々な機械をいじっていた。
全ての動作は単に、この場にいたい、言い訳だろう。
見た姿は、あのトイレで出会ったものとは違う凛々しさがあって、正直、由利は戸惑ったくらいだった。
そして振り向いた顔は、ふたりを確認して固まった。
由良が自信満々に声を発する。
「分かった?あなた、勘違いしていたこと。どっちかの区別もつかないなら、声なんかかけるなっ」
冷たく退ける由良の言葉に、由利は今更ながら動揺してしまった。
自分本位に物事を進める、勝手な男だとは理解していたけれど…。
改めて見た印象が、第一印象とかけ離れ過ぎているせいだろうか。
今、目の前にいる人物は、人生を充実させた、凛々しい姿の男。
着崩したものもなく、ピシッと整えられた”働く”姿に、何故か惹かれてしまう。
「ゆ、由良…」
袖口を掴んで責め立てようとする由良を押し留めてしまう。
その態度に由良が苛立ちを含めたのが分かった。
「ユーリ?」
…分かる…。由良がどうしてこの男に対して怒るのか、充分なほど知れた。
屈辱を味あわせてくれた男だから…。憎たらしく思う人なのだとも。
自分だって、ここにくる直前まで、絶対に許しはしない存在だったはずなのに…。
何が惹きつけるものになるのか、由利も分かりはしない。
戸惑いの一つ。それを双子は敏感に感じ取ってしまうのだ…。
「ユーリっ!!」
「マジかよ…。双子…?」
呆然としたような男の声がその場に響いた。
由利と由良、交互に見比べた男は、すぐさまその違いを感じ取ってしまった。
焦点を由利に当ててくる。
見つめられることの熱さを、背筋を駆け上がってくるものと同時に受け止めるしかない。
嫌悪は次の瞬間、憧憬へと変わる。
あれほど憎らしかった人物のはずなのに…。
訳のわからない感情に襲われて、由利は居辛さを覚えた。
まっすぐに見つめてくる視線から逃れたい思いもあった。
おかしくなりそうで、怖くなる。
「由良…、僕、ごはん…」
振り返ったら何故か高畠と湯田川がいた。
まるで引き渡すかのように、由良が由利の背を押して、この場から去るように促してくる。
「ちょっと待てよっ、オイっ」
男の声が背後に突き刺さって、由利は一瞬動きを止めた。
その声を由良が止めた。
「関わるな。ユーリは絶対に渡さない」
「おまえに話はねーよっ」
「ナンパ男っ!!ユーリは嫌だって言ってんのっ」
言い争う口調の中、求められるもの、護ろうとするものを切実に感じる。
そして、ふたりが並んだことで、はっきりと違いを認めて、求めるものが何になるのかを男は理解したようだった。
求められるものが自分だと分かれば、余計に精神がそちらに靡いてしまうのは性なのだろうか…。
だけど、由良も大事な人のひとり…。
このまま由良の言う通り、何もなかったことにして別れるのが一番良い結果になると判断ができた。
「ユーリ。今日はお兄さんが何かおごってあげるよ~」
茶化した高畠の声が鼓膜を通り抜けていく。
嬉しいはずの言葉なのにあの男に聞こえている状況が、酷く嫌だった。
自分は、誰にでも尻を振る、軽い人間ではないと、たったこんなことですら思ってしまう。
由利と由良を、僅かな間だけで見比べられた強さにも心が傾いたのかもしれない。
だけど、由良が嫌だって言うのなら…。
自分だって、なんていう男だ…って思っていたはずなのに…。
改めて出会って、違うものを感じて、戸惑いは由利のほうが大きい。
在庫管理室の機械部屋を後にするとき、「由利っ」と呼びかけられた声にビクンっと震えた。
でもその声に振り返れなかった。
そこにいる由良が分かったから…。
護ろうとする存在。そして大事にしたい存在。
切っても切り離せない存在を知るからこそ、由良に従うべきだろうと由利は判断した。
僅かに揺れ動いた心は、隠せばいい。
あんなに嫌な人間だったのだから…。
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アンケ…いつの間に佐貫が安住を抜いていたの…?
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トップは相変わらずみこっちゃんだけど…。
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由良ぁ。お疲れさまです。
でも、由利は痴漢くんに惹かれた模様。
どうするんだ?由良兄さん。(あ、兄ちゃんだ)
由利、無理すると反動がスゴいんだよ~。
我慢はあんまりしない方が・・・
「隊長!由良、とりあえず引き離し成功です。でも、この先わからないですね。
それより、隊長?安住さんが美琴やら成パパやらに負けてるんですけど?なんで?なんで?何でー。
わからないので、イケパラに潜入してきますっ。」
『好きにしろ・・・』
でも、由利は痴漢くんに惹かれた模様。
どうするんだ?由良兄さん。(あ、兄ちゃんだ)
由利、無理すると反動がスゴいんだよ~。
我慢はあんまりしない方が・・・
「隊長!由良、とりあえず引き離し成功です。でも、この先わからないですね。
それより、隊長?安住さんが美琴やら成パパやらに負けてるんですけど?なんで?なんで?何でー。
わからないので、イケパラに潜入してきますっ。」
『好きにしろ・・・』
ちー様
おはようございます。
> 由良ぁ。お疲れさまです。
> でも、由利は痴漢くんに惹かれた模様。
> どうするんだ?由良兄さん。(あ、兄ちゃんだ)
> 由利、無理すると反動がスゴいんだよ~。
> 我慢はあんまりしない方が・・・
由良、お兄ちゃんの役目(←)果たしたね。
さぁ、再会しましたよ~痴漢くんと。(痴漢くんの名前を出し忘れた…汗)
由利ってば動揺しております。
初対面の時とは印象が違い過ぎちゃったんだね。
> 「隊長!由良、とりあえず引き離し成功です。でも、この先わからないですね。
> それより、隊長?安住さんが美琴やら成パパやらに負けてるんですけど?なんで?なんで?何でー。
> わからないので、イケパラに潜入してきますっ。」
>
> 『好きにしろ・・・』
ちー隊員監視してますねぇ。
お疲れ様です。
イケパラ???どこにあったっけ…。
コメントありがとうございました。
おはようございます。
> 由良ぁ。お疲れさまです。
> でも、由利は痴漢くんに惹かれた模様。
> どうするんだ?由良兄さん。(あ、兄ちゃんだ)
> 由利、無理すると反動がスゴいんだよ~。
> 我慢はあんまりしない方が・・・
由良、お兄ちゃんの役目(←)果たしたね。
さぁ、再会しましたよ~痴漢くんと。(痴漢くんの名前を出し忘れた…汗)
由利ってば動揺しております。
初対面の時とは印象が違い過ぎちゃったんだね。
> 「隊長!由良、とりあえず引き離し成功です。でも、この先わからないですね。
> それより、隊長?安住さんが美琴やら成パパやらに負けてるんですけど?なんで?なんで?何でー。
> わからないので、イケパラに潜入してきますっ。」
>
> 『好きにしろ・・・』
ちー隊員監視してますねぇ。
お疲れ様です。
イケパラ???どこにあったっけ…。
コメントありがとうございました。
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