嘉穂と香春が行方不明になった、と連絡を受けたのは、就業時間もまもなく…という夕刻。
筑穂は会社で、香春の母親からの電話に固まった。
長かった夏休みも終わって、明日には始業式だってある。
そんな時に、ふたりでどこに出掛けたと言うのか…。
『ちくちゃん、公園に行くって言ったの。お弁当も持たせたのよ。でも帰ってこないから嘉穂くんの携帯、鳴らしているんだけれど…』
つながらないのだと、焦った声が聞こえた。
香春はまだ携帯電話を持っていない。
ふたりが一緒に出掛けたなら、連絡手段は嘉穂の携帯電話だけだった。
「公園…って、…あの、川があるとこ…?」
脅えた声が筑穂から発されると、『そう…』と、一応伝えられた行き先を返事される。
本当にそこに行ったかなど、誰も分からない。
『今、パパが車でそこに行ってくるって…』
「GPS探します」
『お願いよ…』
不安になる親の気持ちは、充分なくらい伝わってくる。
ただでさえ、香春はたった一人の子供なのだから…。
弱いものを守るのだと教えたはずの弟は、どこで何をしているのだろうか。
連絡のやりとりが何よりも安心させるものになるのだと、過去の経緯で知っているはずだろうに…。
筑穂が電話した嘉穂の電話は留守番電話に繋がった。
とりあえず、電源は入っているのだと分かって、即座に位置確認をする。
山に近い川沿いの公園は、昼間は多くの親子連れでにぎわう場所で、電車でも行けるため、ふたりのデートコース…と言って良かったか…。
だけどそこからまた山奥に向かった山林に印が表れれば…。
危機感を浮かべた筑穂に対して、覗き込んだ福智は至って平然と、また落ち着いた様子で、「まさかの青姦?」と恐ろしい言葉を吐いた。
無言のまま、睨みつけたら、「いやぁ、だってぇ…」と言葉を濁してくる。
「あいつら、幾つだと思ってんだ~っっっっ」
「そんなこと思っているの、ウブな筑穂だけだって。ヤりたい盛りはどこだって興奮するんだよ」
世間一般的な正しい意見(?)にますます筑穂の眉間の皺が寄る。
嘉穂と同じ年の頃、筑穂は子育てに追われていた。
いや、自分から夢中になっていた、というほうだろう。
そんな年頃に、今の自分と同じような感情を抱いていることが、どこか信じられずにいる。
逆に福智の台詞に、ピクリと筑穂の頬が動く。
「そーゆー時期があったってこと?」
単なる嫉妬なのかもしれないけれど…。
墓穴を掘ったことを咄嗟に感じた福智は、「とにかく弟の安全確認だろー」と話題を反らす。
あっさりと誤魔化された筑穂は「あぁ、うん」と警察に電話を入れた。
未成年者が行方不明なら、当然探してくれる。
そしてあっさりと見つかったふたりは、敷物用だったビニールシートに包まって眠っていたらしい。
暖を取って抱き合っていたらしいが…。
慌てて向かった先。
「道に迷った」と嘉穂は言ったが、福智の言葉を振り返ると、どこまで信じていいのかと疑問が浮かぶ。
それでも無事な姿で戻って来てくれれば安堵するというもの。
平然とした態度に暴言を吐きたくなる筑穂を、福智が止めた。
もちろん、香春のパパも。
「嘉穂くんがいてくれて良かったよ…」
父親のくせにぐしゃぐしゃにした顔を見せられては、誰も怒れなくなる。
心配かけさせたのか、喜ばれたのか…。
「嘉穂くんが携帯電話、持っていてくれたから…。香春にも持たせるよ」
…いや、それはまぁ、いいんだけれどね…。
身近にいては、電話をするより、歩き寄った方が健康的でも安上がりでもあるだろう…と思ったのは誰だったか…。
きっと連絡する先は、そう多くない、学生ではないか…。
「怖かった夜があったから、嘉穂くんと一緒に寝るって聞かないの~」
迎えに行った香春パパに連れられて戻った自宅。
更に伝えられた香春ママの台詞に、泊めたい気持ちが伝わってきて、筑穂は黙るしかない。
福智は何か悟ったようだが、特に言うことはなかった。
「嘉穂、見つかったの?俺、浮羽さんに報告してきていい?」
「おー、行け行け」
「福智…」
それこそ、”電話”で済む報告ではないか…?
脳裏を過るより早く、次男は家を出ていった。
帰ってこない家族。
夏の最後の思い出を、誰もが作ろうとしていた。
にほんブログ村
ポチってしていただけると嬉しいです(///∇//)
そろそろ暑い夏も去ってくれないかなぁ。
筑穂は会社で、香春の母親からの電話に固まった。
長かった夏休みも終わって、明日には始業式だってある。
そんな時に、ふたりでどこに出掛けたと言うのか…。
『ちくちゃん、公園に行くって言ったの。お弁当も持たせたのよ。でも帰ってこないから嘉穂くんの携帯、鳴らしているんだけれど…』
つながらないのだと、焦った声が聞こえた。
香春はまだ携帯電話を持っていない。
ふたりが一緒に出掛けたなら、連絡手段は嘉穂の携帯電話だけだった。
「公園…って、…あの、川があるとこ…?」
脅えた声が筑穂から発されると、『そう…』と、一応伝えられた行き先を返事される。
本当にそこに行ったかなど、誰も分からない。
『今、パパが車でそこに行ってくるって…』
「GPS探します」
『お願いよ…』
不安になる親の気持ちは、充分なくらい伝わってくる。
ただでさえ、香春はたった一人の子供なのだから…。
弱いものを守るのだと教えたはずの弟は、どこで何をしているのだろうか。
連絡のやりとりが何よりも安心させるものになるのだと、過去の経緯で知っているはずだろうに…。
筑穂が電話した嘉穂の電話は留守番電話に繋がった。
とりあえず、電源は入っているのだと分かって、即座に位置確認をする。
山に近い川沿いの公園は、昼間は多くの親子連れでにぎわう場所で、電車でも行けるため、ふたりのデートコース…と言って良かったか…。
だけどそこからまた山奥に向かった山林に印が表れれば…。
危機感を浮かべた筑穂に対して、覗き込んだ福智は至って平然と、また落ち着いた様子で、「まさかの青姦?」と恐ろしい言葉を吐いた。
無言のまま、睨みつけたら、「いやぁ、だってぇ…」と言葉を濁してくる。
「あいつら、幾つだと思ってんだ~っっっっ」
「そんなこと思っているの、ウブな筑穂だけだって。ヤりたい盛りはどこだって興奮するんだよ」
世間一般的な正しい意見(?)にますます筑穂の眉間の皺が寄る。
嘉穂と同じ年の頃、筑穂は子育てに追われていた。
いや、自分から夢中になっていた、というほうだろう。
そんな年頃に、今の自分と同じような感情を抱いていることが、どこか信じられずにいる。
逆に福智の台詞に、ピクリと筑穂の頬が動く。
「そーゆー時期があったってこと?」
単なる嫉妬なのかもしれないけれど…。
墓穴を掘ったことを咄嗟に感じた福智は、「とにかく弟の安全確認だろー」と話題を反らす。
あっさりと誤魔化された筑穂は「あぁ、うん」と警察に電話を入れた。
未成年者が行方不明なら、当然探してくれる。
そしてあっさりと見つかったふたりは、敷物用だったビニールシートに包まって眠っていたらしい。
暖を取って抱き合っていたらしいが…。
慌てて向かった先。
「道に迷った」と嘉穂は言ったが、福智の言葉を振り返ると、どこまで信じていいのかと疑問が浮かぶ。
それでも無事な姿で戻って来てくれれば安堵するというもの。
平然とした態度に暴言を吐きたくなる筑穂を、福智が止めた。
もちろん、香春のパパも。
「嘉穂くんがいてくれて良かったよ…」
父親のくせにぐしゃぐしゃにした顔を見せられては、誰も怒れなくなる。
心配かけさせたのか、喜ばれたのか…。
「嘉穂くんが携帯電話、持っていてくれたから…。香春にも持たせるよ」
…いや、それはまぁ、いいんだけれどね…。
身近にいては、電話をするより、歩き寄った方が健康的でも安上がりでもあるだろう…と思ったのは誰だったか…。
きっと連絡する先は、そう多くない、学生ではないか…。
「怖かった夜があったから、嘉穂くんと一緒に寝るって聞かないの~」
迎えに行った香春パパに連れられて戻った自宅。
更に伝えられた香春ママの台詞に、泊めたい気持ちが伝わってきて、筑穂は黙るしかない。
福智は何か悟ったようだが、特に言うことはなかった。
「嘉穂、見つかったの?俺、浮羽さんに報告してきていい?」
「おー、行け行け」
「福智…」
それこそ、”電話”で済む報告ではないか…?
脳裏を過るより早く、次男は家を出ていった。
帰ってこない家族。
夏の最後の思い出を、誰もが作ろうとしていた。
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そろそろ暑い夏も去ってくれないかなぁ。
ひと夏の経験、ひと夏の思い出
今年の夏は 津屋崎兄弟にとって 忘れられないものとなりました。
これから何度も迎え過ぎる四季でも いっぱいの大切な思い出を作る事でしょうね♪
+゜:。:。(´-ω)ω-`)n 。:+゜:。ズットハナサナイデイテ・・・byebye☆
今年の夏は 津屋崎兄弟にとって 忘れられないものとなりました。
これから何度も迎え過ぎる四季でも いっぱいの大切な思い出を作る事でしょうね♪
+゜:。:。(´-ω)ω-`)n 。:+゜:。ズットハナサナイデイテ・・・byebye☆
すみませ~~ん!
名前を書くのを忘れてました!(*⌒∇⌒*)テヘ♪
名前を書くのを忘れてました!(*⌒∇⌒*)テヘ♪
けいったん様
こんにちは。
> すみませ~~ん!
> 名前を書くのを忘れてました!(*⌒∇⌒*)テヘ♪
いえいえ~♪。
> ひと夏の経験、ひと夏の思い出
> 今年の夏は 津屋崎兄弟にとって 忘れられないものとなりました。
どんな思い出が作られた夏だったんですかねぇ。
それぞれ、良い思い出を作った、まさに忘れられない夏だったことでしょう。
三兄弟、それぞれ…。
一番理解しているのは他人のような福智と、パパママのような気がしますが…。
> これから何度も迎え過ぎる四季でも いっぱいの大切な思い出を作る事でしょうね♪
> +゜:。:。(´-ω)ω-`)n 。:+゜:。ズットハナサナイデイテ・・・byebye☆
いやぁん。
こっちも秋の遠足とか、冬の旅行とか、訳のわからないもの(←)するんですかねぇ。
書ききれないよ、そんなもの…。
(でもこっちは成長していくだろう…)
楽しいはずの温泉旅行は、兄弟3人一部屋、(鞍手家)親子三人一部屋、やっぱり親子2人(浮羽)一部屋の三部屋旅行でしょうか。
(部屋に帰らない連中は何人いるんだろう…。)
コメントありがとうございました。
こんにちは。
> すみませ~~ん!
> 名前を書くのを忘れてました!(*⌒∇⌒*)テヘ♪
いえいえ~♪。
> ひと夏の経験、ひと夏の思い出
> 今年の夏は 津屋崎兄弟にとって 忘れられないものとなりました。
どんな思い出が作られた夏だったんですかねぇ。
それぞれ、良い思い出を作った、まさに忘れられない夏だったことでしょう。
三兄弟、それぞれ…。
一番理解しているのは他人のような福智と、パパママのような気がしますが…。
> これから何度も迎え過ぎる四季でも いっぱいの大切な思い出を作る事でしょうね♪
> +゜:。:。(´-ω)ω-`)n 。:+゜:。ズットハナサナイデイテ・・・byebye☆
いやぁん。
こっちも秋の遠足とか、冬の旅行とか、訳のわからないもの(←)するんですかねぇ。
書ききれないよ、そんなもの…。
(でもこっちは成長していくだろう…)
楽しいはずの温泉旅行は、兄弟3人一部屋、(鞍手家)親子三人一部屋、やっぱり親子2人(浮羽)一部屋の三部屋旅行でしょうか。
(部屋に帰らない連中は何人いるんだろう…。)
コメントありがとうございました。
・・・早い、言うたに。嘉穂~。何してたの?
チゥだけなら許すわよ?チゥー。
かわらちゃん、小さいけどさあ。頭の中は割りと大人なんだよねえ。はうー。
そうだ、きえさあん。温泉旅行、フクちゃんは行かないの?ヤダヤダ、連れてってー。
ウッキー部屋で良いからさあ。
どうせ、ウッキーのとこにホナ行くし、嘉穂はかわら一家に拉致られるでしょ?
兄ちゃんが可哀想だよー。
チゥだけなら許すわよ?チゥー。
かわらちゃん、小さいけどさあ。頭の中は割りと大人なんだよねえ。はうー。
そうだ、きえさあん。温泉旅行、フクちゃんは行かないの?ヤダヤダ、連れてってー。
ウッキー部屋で良いからさあ。
どうせ、ウッキーのとこにホナ行くし、嘉穂はかわら一家に拉致られるでしょ?
兄ちゃんが可哀想だよー。
ちー様
おはようございます。
> ・・・早い、言うたに。嘉穂~。何してたの?
> チゥだけなら許すわよ?チゥー。
> かわらちゃん、小さいけどさあ。頭の中は割りと大人なんだよねえ。はうー。
何していたんですかね~。
山の中に冒険に出かけたんでしょう。
中学一年生、好奇心旺盛ですから~。
> そうだ、きえさあん。温泉旅行、フクちゃんは行かないの?ヤダヤダ、連れてってー。
> ウッキー部屋で良いからさあ。
>
> どうせ、ウッキーのとこにホナ行くし、嘉穂はかわら一家に拉致られるでしょ?
> 兄ちゃんが可哀想だよー。
あ、フクちゃん、忘れてた(^^ゞ
そうね、一人、おうちでお留守番じゃ可哀想だよね。
それに兄ちゃんも一人残されちゃうのか。
淋しがるか、弟から解放されてのびのびしているか…。
コメントありがとうございました。
おはようございます。
> ・・・早い、言うたに。嘉穂~。何してたの?
> チゥだけなら許すわよ?チゥー。
> かわらちゃん、小さいけどさあ。頭の中は割りと大人なんだよねえ。はうー。
何していたんですかね~。
山の中に冒険に出かけたんでしょう。
中学一年生、好奇心旺盛ですから~。
> そうだ、きえさあん。温泉旅行、フクちゃんは行かないの?ヤダヤダ、連れてってー。
> ウッキー部屋で良いからさあ。
>
> どうせ、ウッキーのとこにホナ行くし、嘉穂はかわら一家に拉致られるでしょ?
> 兄ちゃんが可哀想だよー。
あ、フクちゃん、忘れてた(^^ゞ
そうね、一人、おうちでお留守番じゃ可哀想だよね。
それに兄ちゃんも一人残されちゃうのか。
淋しがるか、弟から解放されてのびのびしているか…。
コメントありがとうございました。
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