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BLの丘
七色の虹 8
2012-09-20-Thu  CATEGORY: 七色の虹
由利が帰ってきたのは翌日の夕方だった。
毎度のことなので今更嫌味を言うこともないし、言ったところで由利の心を傷つけるだけになる。
かといって、何があったのかを聞く気にもなれない。また報告する気も…。
だけど家の中のわずかな変化を気付いてしまうものなのだろう。
リビングのソファにのんびりと寝転がりながらテレビを見ていた由良に、キッチンから飲み物を持ってきた由利が話しかける。
「由良?誰か来たの?」
友人はほとんど共通といっていい。
だから誰が来ても嫌がられることはなかったし、不思議にも思わないのだが、またそれとは違ったものを由利は敏感にも感じ取ってしまったのか…。

由良は一瞬悩んだが、隠すのもなんだかなぁ…と口を開いた。
由良よりも由利の方が高畠の近くにいるのだから、知られるのは時間の問題だろう。隠す意味がない。
「昨日、高畠さんが来た」
由良の返事はあまりにも意外だったのか、ラグの上にペタンと座った由利は、あからさまに驚いて、瞬きを止めた。
「高畠さんっ?!なんでっ?!どうしてっ?」
自分の同僚と親密なお付き合いがあると匂うような発言は確かに驚きのネタだけど…。
普段の付き合い方は知っていても、自宅にまで呼ぶとは、想像の範疇を越えているのだろう。
由良だって、新庄が由利と一緒にいたと聞いたら目や耳を疑う。
しかもその発言だけで、みんなが一緒ではなくて、ただ一人を連れたと由利は理解できていた。

「たまたま。偶然。…昨日の帰りに高畠さんと会ってさ。ごはん食べる話が、うちで…ってことになっただけ」
「そうなの?…ごめんね、由良…」
申し訳なさそうに謝ってくる由利に、由良は苦笑を浮かべる。
一人にさせてしまった責任や後ろめたさなんて、感じることはないのに…。
いつも一緒にいたふたりが離れていくのには、まだ時間がかかるのだろうか。
由良は寝そべっていた体を起こした。
「別にユーリが謝ることなんかないじゃない。高畠さんだって『一人での夕ご飯がつまらない』って付き合ってくれたんだから、お互いさまなんだよ」
本当かどうかは疑問だが、心の片隅にそれくらいの感情の一つもあったのではないかと、勝手に位置付けてしまった。
案の定、由利は納得して「そうなんだ…」と頷いてくれる。
誰もが由利を『無防備』というが、それはこうした”真に受けてしまう”態度もあるのだろう。
今は由良が言うから尚更…。
無垢な部分はいくつになっても薄れていかない。
それでも淋しい時間があったとは理解できるのか、赤ちゃんがハイハイするような格好で近付いてきた由利は、由良に抱きついてきた。
…由利みたいに淋しがったりしないのに…と内心で一人ごちる。
「もう…」
抱きしめ返しながらポンポンと背中を叩く。
気遣われているんだか、気遣っているんだか…。
浮かぶのは苦笑ばかり。
これこそが高畠が心配した”一心同体”なのだろうか、と振り返ってしまう。
お互いにそれぞれの相手ができたとしても、離れられないものを持っているのは確かだと、再確認させられる。
でもそれを認めてくれる相手を求めてしまうのだろう。
分かるからこそ、由良はきちんと区別をつけてくれる高畠を身近に置きたいと思うのだと身に染ませた。
ただの後輩なのかもしれないけれど…。
同僚の兄弟という存在でしかないのかもしれないけれど…。
一緒にいる時間が長くなればなるほど、高畠の良さが見えてくる。
由利が安心して身を寄せられる人だと知るからこそ、由良も甘えてしまう。望んでしまう。期待してしまう…。

「由良、今日はご飯、作ってあげるからね」
「ホントに?ありがとう」
「カップラーメンでもいい?」
「…………」

それは間違えなくても、『作る』とは言えないだろう…。
だけどどこかだるそうな由利を知れば、無理もさせたくなかった。
気持ちだけ、ありがたく受け取っておこう。
由良は微笑む。
…甘いなぁ…。
自分の由利に向ける態度に、自身で呆れてしまうところがあるのだが、譲れないところでもある。
「ハイハイ。今、何種類、ストックがあったっけ…」
由良の許可が下りたと分かれば由利の表情も緩んでくる。
家事を面倒くさがるため、レトルト食材や乾物は普通の家よりあると思えた。
男の二人暮らしなんて、こんなものだろう。
恋人ができたとしても二人で過ごす空間は変わらないのかもしれない。
いや、逆にこの時間が欲しいのか…。
見つめ返してくる同じ顔の瞳が満足げに微笑んでくれる。
由良の気持ちを充分に読み取ってくれているからこそ…。
向こうから近付いてきてくれる人が愛おしく思えた。
…もちろん、血縁者としてだけれど…。
由利を抱きしめる。ずっと感じてきた体温も感情も…、分かっていて新しく求めていくもの…。
由利は見つけた…。由良にしてみたら一つの安堵だったのだろうか。

でもまだ明かせない…。
由利にだけは打ち明けることはできないと強く自分を制する力を持つ。
板ばさみになるのは、由利なのだから…。

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コメント

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そうかあ
コメントちー | URL | 2012-09-20-Thu 03:04 [編集]
由良は、我慢するのね。
由利に言ってしまえば、楽になると思うのに。
なんか、こういうとこがお兄ちゃんだよね。

高畠さんに甘えたい、でも、素直になれない。
いや、なってはいけないとか思ってるのかな。

双子ちゃんの一緒にいるシーン、大好きです。
由利に抱きつかれてまったくー、由利は甘ったれと思った由良だけど、本当は由良もそうしたかったんじゃないかな?特に今はね。お兄ちゃんは辛いのだ(笑)

Re: そうかあ
コメントたつみきえ | URL | 2012-09-20-Thu 08:15 [編集]
ちー様
おはようございます。

> 由良は、我慢するのね。
> 由利に言ってしまえば、楽になると思うのに。
> なんか、こういうとこがお兄ちゃんだよね。

高畠の近くにいる由利だからね。
余計な負担はかけたくないのでしょう。
気持ちを打ち明けちゃえば、由利なりに気を使うって由良は知っているから。
やっぱりお兄ちゃんなんです。

> 高畠さんに甘えたい、でも、素直になれない。
> いや、なってはいけないとか思ってるのかな。

いま一歩踏み込めないんでしょう。
由利の時とは違って追いかけられる立場じゃないからね。
雄和みたいにドーンとぶつかってきてくれればいいけれど…。
振られちゃった時の怖さもあるのかしら。

> 双子ちゃんの一緒にいるシーン、大好きです。
> 由利に抱きつかれてまったくー、由利は甘ったれと思った由良だけど、本当は由良もそうしたかったんじゃないかな?特に今はね。お兄ちゃんは辛いのだ(笑)

由良のほうが抱き合いたかったのかもね。
由利はそこのところ、本能的に感じとって近づいたのでしょうか。
由良は自分からは口にしないけれど。
何かと我慢しちゃうお兄ちゃんなのです。
コメントありがとうございました。

No title
コメントけいったん | URL | 2012-09-20-Thu 08:26 [編集]
由良の微妙な感情の揺れを 感じ取れるのも ずっと 一緒に居た由利だからでしょうね。

でも まさか 高畠に恋心を抱いていると、そこまではね!
由利は 只今 雄和と ラブラブ中~で 色々と体験する初めての事で 自分の事で精一杯かも♪(¬ー¬) フフ

想われ人の高畠は、昨晩の由良との間に流れた 今までとは違う空気を 如何 感じているのだろう?
コレハ!"( ̄* )(* ̄^^ ̄*)( * ̄)"クンクン・・・byebye☆  
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-09-20-Thu 11:50 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> 由良の微妙な感情の揺れを 感じ取れるのも ずっと 一緒に居た由利だからでしょうね。
>
> でも まさか 高畠に恋心を抱いていると、そこまではね!
> 由利は 只今 雄和と ラブラブ中~で 色々と体験する初めての事で 自分の事で精一杯かも♪(¬ー¬) フフ

些細な変化に気付けちゃう双子ちゃんです。
でも片思い中とは…。
ハイ、由利は自分のことで精一杯ですね。
そこまでは気付けないか…。
由良も隠そうとしちゃうのかなぁ。

> 想われ人の高畠は、昨晩の由良との間に流れた 今までとは違う空気を 如何 感じているのだろう?
> コレハ!"( ̄* )(* ̄^^ ̄*)( * ̄)"クンクン・・・byebye☆  

これまでふたりきりになることはありませんでしたからね。
高畠も初めてのこと、どう捉えたのでしょうかね。
だから帰ったのかぁ(←)
コメントありがとうございました。
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