2ntブログ
ご訪問いただきありがとうございます。大人の女性向け、オリジナルのBL小説を書いています。興味のない方、18歳未満の方はご遠慮ください。
BLの丘
七色の虹 24
2012-10-05-Fri  CATEGORY: 七色の虹
由利がグラスにウーロン茶を入れて、両手に一つずつ持っては高畠とテーブルへと運んでくる。
ソファには横に並んで座るスペースしかない。
由利が雄和をソファに案内してしまったため、由良と反対隣に腰を下ろした雄和だったが…。
寝転べるだけの大きさがあったとしても、並んでいることに少しの不満があった由良は、ストンっとソファから下りてラグの上に座った。
同じように由利が雄和の目の前に座ってしまうと、一瞬悩んだらしい高畠は由良の背後になる位置のソファに落ち着いた。
ソファ前の中央の位置に由良と由利が収まり、その後ろ両脇にそれぞれの相手が座っている状態だ。
由良と由利では、隣同士に並ぶことも多々あるため、違和感はないが…。

誰から何から話そうか…。沈黙が束の間流れた。
口火を切ったのは雄和だった。
「どう切り出そうかと悩んでいたんだけれど、時間は待ってくれないし。ひとまず由利に黙っていられる話でもなかったから…。勝手なことを言っているのは承知しているけれど、それが俺の希望でもあるんだ」
「ホント勝手だよっ。自分のことしか考えてないんじゃないっ。ユーリにだって生活があるっていうのにっ」
「由良」
尖った口調の由良を後ろから高畠が嗜めた。
話は聞け、ということなのだろう。
隣で由利がスンと居た堪れないように俯いてしまう。
簡単に選択してしまったと咎められている…といった感じだろうか。
そんな表情をさせたくはなかったのに…と、由良も少しは後悔した。
「ユーリ、違うよ。ユーリが決めたことを責めているんじゃないの…」
両手を伸ばして抱き寄せては、優しい口調で誤解を解く。
イライラしていることは、不安もあるのかもしれない。
由良にとっても、突然降ってわいた話で、由利とは離れたことがなかったのだ。
「うん…。ごめんね、由良…」
「だから謝らなくていいって…」
由利自身が決断したことを、由良の感情で抑えることはできない。
ただ、一言くらい、何か言いたい心境だっただけで…。

その性格も充分なくらい由利は承知している。だから雄和に向けられた台詞も見逃してくれている。
由利にしてみたら、全て由利を気遣ってくれるからこそ漏れる言葉なのだと…。
「もちろん由利の仕事のことも考えなかったわけじゃない。二日あれば充分会える距離にいるわけだし、”遠距離”と思えば…って自分でも割り切ろうとした。でもやっぱり離れているっていうことが不安なんだよ。どこかで何かあった時にすぐに駆けつけてやれない距離って」
「そうだね。どこで”痴漢”されるか分からないしね」
「ゆ、ゆら~ぁ」
雄和の発言に過去を持ち出せば、由利が困ったような声を上げた。
結局それが出会いだったことを考慮すれば、雄和の不安も理解できるものだったけれど。
「由利が由良にすぐ甘えることも承知している。これは単なる俺の嫉妬でしかないのかもしれないけれど、二人の性格を考えても、二人のほうが距離を開けるべきじゃないかって思った。いい機会のような気がしたんだ」
雄和の考えることは嫌というほど知れた。
由良だって思考を巡らせたことがないわけではない。
たぶん雄和は、由利が由良にかける負担のことを言うのだろう。
負担なんかではないのに…と思いながら、高畠とのことを思えば、由利は確実に居辛さを宿す。
背後でフーと高畠が息を吐いた。
「おまえたちはさ、兄弟なんだよ。俺らじゃ分からない、繋がっている、お互いを感じているものを持っている。それは離れてもなくなったりするもんじゃないだろ?そういう意味では、テレパシーのようなものがない俺たちが離れているほうが不安に思うのも当然じゃん」
雄和の言い分は高畠でも知れるといった感じで、また由良を宥める意味も込められて、大きな掌が頭上に乗った。
「分かってるよっ」
高畠にまで諭されて、なんとなく苦々しい気持ちが浮かんでしまう。
一層由利をぎゅっと強く抱きしめてから、その腕を離した。
虫の知らせのようなものは、過去にも幾度も感じたものだ。外れたことがほとんどないくらいに。

由良は由利に向き直った。
「でもさ。ユーリ、仕事、どうするの?」
「それは…」
困ったように由利が振り返り気味に雄和を見上げた。由利の戸惑いを雄和が引き継ぐ。
「無理して働かなくても俺の給料で養っていけるし。それに今度は俺も社員採用の人事権を持つから、こっそり入社させちゃってもいいし」
「?」
「それって栄転ってことっ?」
一瞬判断がつかなかった由良だったが、すぐさま高畠が反応した。
つまり、昇格…ということである。当然給料も上がる、という意味か…。
自分の下に就く社員は、自分で選べるということだろう。
整った環境があったから、雄和も話に出すことができたのかもしれない。
由良は盛大な溜め息を零した。
「はぁぁぁ…。痴漢から始まった人生は随分と順風満帆だねぇ。ヘタしたら訴えられて降格もありだったのに」
「「由良ぁっ」」
今があるのに過去をほじくり返す由良を、由利と高畠がやはり嗜めてくる。
雄和は肩をすくめて苦笑いだった。
たぶん、一生言われ続けることを悟ったに違いない。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
人気ブログランキングへ 
ポチってしていただけると嬉しいです(///∇//)

由良から由利を取っちゃった代償だね。
これで一応、由利の時の20話の付箋は回収できた…かな。
次回、最終回になる予定です。
関連記事
トラックバック0 コメント5
コメント

管理者にだけ表示を許可する
 
そうかあ
コメントちー | URL | 2012-10-05-Fri 01:37 [編集]
何々、雄和さんたら栄転じゃん!
で、自分の部下に由利を入れると。
スゴーイ!でさ、雄和さんはいくつなんだっけ?
え?読み返せ?はい、そうします。

私、由良と性格が似てる(ツンデレじゃないよ)
いや、私もお姉さんだからかしらね。
わかってても嫌味の一つも言いたくなるし、痴漢騒ぎはずっと言うだろうし。
でも、それも由利を心配しての事。
双子ちゃん達の相手は破格的に器の大きい人達だから、お互いを任せて独立できるんだよね。

けどさ。兄弟は何があっても兄弟。
絆が切れたりはしないんだからね。
あーん。でも、淋しいね(私が淋しいよ)



「せみちゃんはさ、どんな人がタイプなわけ?」
「え、俺?俺は、美人が好きだなあ。美人だけど可愛くて。可愛いのに気さくで優しくて、みんなに好かれる用な人」
「はぁ?せみちゃん、案外理想高いんだな。いないだろ、なかなか」
「そうか?いや、いるけど?」
「まさか・・・まさか、せみちゃんの?」
「ハハッ」


「師匠~、師匠!起きてよー。せみちゃんの彼女?の話してるよー!」
「ん~、せみよりクワガタが良いって。ムニャムニャ」
「虫の蝉じゃないですよー。瀬見ちゃんですってばあ」
「ちー、いつになったら青田買いツアーに行くんだ?年増の添乗員でも我慢してやったのに。」
「ヒドーイ!雅臣さん、まだ若いもん。可愛いから良いじゃん!」
「・・・」
「寝てるし。師匠っ、師匠っ?仕方ない、電話するか」

リンリンリン♪

師匠は、オウチに帰れるのだろうか。
Re: そうかあ
コメントたつみきえ | URL | 2012-10-05-Fri 07:49 [編集]
ちー様
おはようございます。

> 何々、雄和さんたら栄転じゃん!
> で、自分の部下に由利を入れると。
> スゴーイ!でさ、雄和さんはいくつなんだっけ?
> え?読み返せ?はい、そうします。

いや…、『転勤』って書いたはいいけれど、どう収めようかと悩んだ苦肉の策でした。(ホントその日その場で書いているので…)
プロット? そんなものはありません。
復習。雄和30歳 由良由利25歳 高畠26歳です。(←せみあつみも)

> 私、由良と性格が似てる(ツンデレじゃないよ)
> いや、私もお姉さんだからかしらね。
> わかってても嫌味の一つも言いたくなるし、痴漢騒ぎはずっと言うだろうし。
> でも、それも由利を心配しての事。
> 双子ちゃん達の相手は破格的に器の大きい人達だから、お互いを任せて独立できるんだよね。

嫌味の一つも…ねぇ。
私も分かる(笑)
相手の人がおおらかで、何でも受け止めてくれるから、いつまでもイチャイチャできる双子でしょう。
下僕は文句言いませんから。

> けどさ。兄弟は何があっても兄弟。
> 絆が切れたりはしないんだからね。
> あーん。でも、淋しいね(私が淋しいよ)

そうです。強い絆がありますよ。
淋しいところは相手が埋めてくれるでしょう。
ちー様を淋しがらせてごめんなさい。

> 「せみちゃんはさ、どんな人がタイプなわけ?」
> 「え、俺?俺は、美人が好きだなあ。美人だけど可愛くて。可愛いのに気さくで優しくて、みんなに好かれる用な人」
> 「はぁ?せみちゃん、案外理想高いんだな。いないだろ、なかなか」
> 「そうか?いや、いるけど?」
> 「まさか・・・まさか、せみちゃんの?」
> 「ハハッ」

ナルホド、せみちゃん。
それじゃあ、由良はまったくもって対象外だったのが分かる~。
下僕にはなれないタイプだ(笑)
面倒みるだけの後輩だよね。

> 「師匠~、師匠!起きてよー。せみちゃんの彼女?の話してるよー!」
> 「ん~、せみよりクワガタが良いって。ムニャムニャ」
> 「虫の蝉じゃないですよー。瀬見ちゃんですってばあ」
> 「ちー、いつになったら青田買いツアーに行くんだ?年増の添乗員でも我慢してやったのに。」
> 「ヒドーイ!雅臣さん、まだ若いもん。可愛いから良いじゃん!」
> 「・・・」
> 「寝てるし。師匠っ、師匠っ?仕方ない、電話するか」
>
> リンリンリン♪
>
> 師匠は、オウチに帰れるのだろうか。

師匠、寝ちゃったのか…。
どうなるんでしょうか。

リンリンリン♪(電話→)◇ヾ( ゚⊿゚)ポイッ
隊長『【~~~(´▽`A)~~~】 イイユダナ~♪...』
(まだ温泉…。そういえば、瀬見もあつみも温泉名から拾ったんだっけ)
コメントありがとうございました。
(*`<´)・:∴ ヘーックシ!!
コメントけいったん | URL | 2012-10-05-Fri 16:40 [編集]
兄弟だもの、双子だもの
どんなに遠く離れても 大丈夫だよ!(o ⌒∇⌒)oo(⌒∇⌒ o)ネェ
身近に温もりを感じられないのは、淋しいでしょうけど。


酔っぱらって そのまま寝たからでしょうか(笑)
風邪を引いたみたいで 体が怠くて~ 薬も飲んでいるので 頭も ボー
きえ様も ちーさんも 気を付けてね♪
ボー (* ̄Ω ̄*)...byebye☆
師匠!
コメントちー | URL | 2012-10-05-Fri 19:27 [編集]
お大事にですよー。

先日、某所でお名前見ましたよ。
ええ、私もいました(笑)

風邪ですか?本当に大事になさってくださいね。
ちーは、仕事が忙しく休めないので気を付けます。

きえさんも、風邪引かないでくださいね。
女王様が休まれると臣下共々心配します。

て、横入りごめんなさい。
No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-10-05-Fri 20:17 [編集]
けいったん様 ちー様
こんばんはー。
まとめレスごめんなさい。

双子ちゃんはどれだけ離れても強い絆で結ばれております。
離れて、その淋しさはダーリンが温めてくれることでしょう。

けいったん様、本当にお体にはお気を付けください。
気温差も激しいこの頃です。
ちー様もお忙しい模様。
どうぞご無理だけはされませんように。

大変な中、こんな駄文を読んでくださって嬉しい限りです。
コメントありがとうございました。

トラックバック
TB*URL
<< 2024/05 >>
S M T W T F S
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -


Copyright © 2024 BLの丘. all rights reserved.