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BLの丘
七色の虹 23
2012-10-04-Thu  CATEGORY: 七色の虹
由利にとって、由良のそばにいた高畠の存在が、最終的な決断を下したのかと思われた。
由良を一人にすることを躊躇ったのは、由利の方だったのだろう。
由利の雄和と同じように、そばにいてくれる人を確認できれば、本当の意味で、最後の砦を越えることができる。
高畠には由利も信頼をおいている。たぶん、一番の安堵で、高畠だったら…と思えるものがある。
逃げ出したのは、突然の出来事に心の準備ができなかったせいか…。
振り返れば、由良は隠し続けていることばかりだった。
由利のためを思って…。高畠とうまくいかなかった時のことを考えては、負担がかかると打ち明けなかった。
そんな由良の精神的苦痛まで感じ取ってしまっていた由利は、自分に責任を感じて、合わせる顔がないと逃げ出したのだろうか。

「ユーリ…」
返って由利に悩ませる気持ちを持たせてしまったことを、少しばかり後悔する。
でも今は幸せなんだよ、と訴える。
流れる涙を唇で掬って、何度も啄ばむようにくちづけて…。
「いい加減にしろ」と高畠が溜め息混じりの声を上げてきて、ようやく双子は自分たちだけではない世界を理解した。
由利がためらいがちに離れようとするのを、由良がムッとしたように高畠を見上げる。
「ユーリは今、ハートブレイク中なのっ。俺が抱っこしてあげなきゃ、誰がしてあげるのっ」
「ハートブレイク…って意味違ってねぇ?つか、羽後さんに任せるところだろ…」
「そーいえば、あのバカ、もう着いたのかな」
「え?」
流れが読めないのか、由利は不思議そうな顔を向けた。
雄和が追ってきているとは思ってもいなかったのか…。
そんな男だったら、この場で別れさせる…と由良は意気込んでしまうけれど。

「こっち、向かっているって電話で話したの。ユーリがどこにいるのか想像できるかって聞かれたけれど、探し当てられる自信なかったから教えてない」
『良く言うよ…』とは、次の高畠の溜め息の中に飲みこまれていた。
「あ…。僕…、黙って出てきちゃったから…」
雄和への申し訳なさも浮かんだのか、由利は伏せ目がちに後悔を滲ませた。
そんな仕草は、やはり愛情があることを表してくれているようだった。
「ユーリ、帰る?」
由良の問いかけに小さく頷く。
泣いた瞼に最後のキスを落とし、気が抜けたせいもあるのか、由良の脱力感は激しい。
「由良、そういえばおんぶされてた…?」
由利に問われて起こってしまった出来事が脳裏を過る。
自分で動けなくなるような事情は、由利には簡単に理解できることなのか、暗がりのなかで頬を染めたような気がした。
まぁ、今更知られて困ることでもないだろうけれど…。
改めて知るというのは、羞恥が走ってしまう。
「萩…、高畠さんが強引なことしたの…」
「もういいよ。由良も幸せになって、って前に言ったじゃん…」
名前を言い直したことをさりげなく咎められて、また頭上からは、もう何度目か分からない溜め息の音が聞こえてきた。
今更、高畠が何かを言ってくることはないだろう。

「じゃあ、ほら、帰るぞ。ユーリまで歩けない、とか言わないだろうな」
由良の隣にしゃがみこんだ高畠が、またおんぶをしようと手を差し出してくる。
「ユーリは抱っこしてあげてよ」
「な…っ」
由良の無茶発言にはふたりから絶句が漏れる。
「だ、大丈夫だよ…。僕、歩けるもん…」
走っていた先程までの出来事があるのだから、由良とは違うのだとは気付けることだけれど…。

結局由良は高畠におんぶされて、由利とは手をつないで帰路を辿った。
やはりすでに着いていた雄和が、奥に入っていけないエントランス前で、由利と由良の姿を確認して、表情を緩めてくる。
「由利…」
どこに向かったのか、手がかりもなく、待つしかなかったのだろうが…。
求める返事は、由良と共に戻ってきたことで気付くのか…。
そんな雄和に由良がかじりつく。
「ユーリ、泣かせたらぶっ殺すって言っといたんだけどっ」
最後の悪あがきとでもいうのか…。釘を刺しておきたかった。
「「由良ぁ」」
冷たい発言に同時に由利と高畠から溜め息と咎める声が上がった。
それにも関わらず、雄和は真摯な態度だ。
「分かってる…。由利を幸せにするためにはどうしたらいいのか考えていて…。話の順序が追えなかった…」
ふざけている態度を時々見せても、本質は真面目なのだとはすでに知れたこと。
由利が高畠に由良のことを任せてくれたように、由良も由利を雄和に預けた過去があって、見送ってやるところなのだろう。
そこに呑気な高畠の声が響いた。
「まぁまぁ。こんなところでいがみ合っていないでさ。とにかく、部屋に行こう」
「誰の家だよっ」
高畠と由良の会話を聞くだけでも、親しさは理解できたが…。
由良をおぶっている重さもあるのか…。疲労感は高畠にあってもおかしくなかった。
確かに、詳しい話をする場所ではない。

由利の握っていた手が離れていく。そしてその手は雄和の手へと流れていく。
二人で住んだ家の中に、初めて入ってくる人は、由利と一緒になることで、実家に帰ってくるような感覚に変わっていくのだろうか。
由利一人だけではなく、二人で戻ってきてくれるようになってくれたらいい。
今日のようなことではなく…。

家に入っては、忙しさに先程片付けきれなかった肌掛けや散乱したタオルがそのままであった。
ここで何があったのか、証拠を突き付けるようで、由良には全身に朱が走る。
「ばかやろーっっっ。片付けておけよっ」
怒鳴りつけた由良を高畠はリビングのソファに降ろして、黙って残骸を目につかない脱衣所にとりあえず運んだ。
それから飲み物を用意してやろうとキッチンに入ると、由利が慌てたように追ってくる。
「た、高畠さんっ、いいよ。やるからっ」
「あぁ。…ユーリ、辞めるのか…」
育ててきた職場での存在は、やはりこちらにも抵抗があるのだろう。
俯いてしまう由利の気持ちは…。
確認してしまうほうが悪いのだろうか…。
やはり展開が早すぎる高畠に届いたものは、「ユーリっ。先に話す相手が違うでしょっ」と絶たれた。
まずは機嫌の悪い人のご機嫌をとることが最優先か…と諦めた高畠だった。

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コメント

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双子ちゃん王国
コメントちー | URL | 2012-10-04-Thu 05:10 [編集]
仲良し双子ちゃんもそろそろお別れなのね。
まあ、仕方ないけどさ。
でも~、仕事辞めるこた・・・まだ、言う(笑)

しかし、第一王子ってばスゴいわ。
お疲れの下僕(成り立て)に指図するとはねー。
王子、労いのお言葉プリーズ。
まあ、まだまだ気が回らないか。

第二王子もナイトの登場で気持ち確定だろうし。
いや、決まってたのよね。
雄和さんは下僕にはならなそうな気がするな。
取り合えず第一王子のご機嫌とりよろしく。



「お?湯田川にしちゃ良い店見つけたじゃん」
「でしょ?いつものとこはデートには向かないからさー」
「俺も今度連れて来よう」
「えー、一人だけズルくね?ぬけがけかよ?」
「相手、見つけてから言えっての」


「し、師匠!あれはセミアツじゃないですか?」
「何、マヤアツみたいな事言って~。」
「だって、ほらっ!株価急上昇の新庄さんと湯田川だよ、見てみて」
「あ、本当だわ。まあ、良い感じ?」
「師匠、若い子好きだからぁ。」
「それより、ビールおかわりっ」
「はあい、お兄さん!生中一つと梅酒のお湯割り一つ。後~・・・」

あっちゃん、彼女ゲットなるか?
(あ、ここの国では彼氏?)
Re: 双子ちゃん王国
コメントたつみきえ | URL | 2012-10-04-Thu 08:02 [編集]
ちー様
おはようございます。

> 仲良し双子ちゃんもそろそろお別れなのね。
> まあ、仕方ないけどさ。
> でも~、仕事辞めるこた・・・まだ、言う(笑)
>
> しかし、第一王子ってばスゴいわ。
> お疲れの下僕(成り立て)に指図するとはねー。
> 王子、労いのお言葉プリーズ。
> まあ、まだまだ気が回らないか。

お別れとはいっても、ことあるごとに会うことになるでしょうが。
お仕事のことは、まぁ…。
旦那が働かなくていいって言っているんだから、良いんじゃないでしょうか。
由良は由利を泣かせてしまったことで機嫌が悪いですよ。
そういう心情まで分かっている高畠だから、汲み取って逆らうこともしません。
なんてデキた下僕(恋人)でしょう(*^-')b

> 第二王子もナイトの登場で気持ち確定だろうし。
> いや、決まってたのよね。
> 雄和さんは下僕にはならなそうな気がするな。
> 取り合えず第一王子のご機嫌とりよろしく。

雄和が下僕にならない、というより、由利が由良のようにはならないほうでしょうか。
雄和にとっては、手強いお兄ちゃんをまざまざと見せつけられて心に刻むでしょうね。
そういう意味では、由良の前では雄和も下僕になるのか…。
高畠、責任重大な役職につきましたね。

> 「お?湯田川にしちゃ良い店見つけたじゃん」
> 「でしょ?いつものとこはデートには向かないからさー」
> 「俺も今度連れて来よう」
> 「えー、一人だけズルくね?ぬけがけかよ?」
> 「相手、見つけてから言えっての」
>
>
> 「し、師匠!あれはセミアツじゃないですか?」
> 「何、マヤアツみたいな事言って~。」
> 「だって、ほらっ!株価急上昇の新庄さんと湯田川だよ、見てみて」
> 「あ、本当だわ。まあ、良い感じ?」
> 「師匠、若い子好きだからぁ。」
> 「それより、ビールおかわりっ」
> 「はあい、お兄さん!生中一つと梅酒のお湯割り一つ。後~・・・」
>
> あっちゃん、彼女ゲットなるか?
> (あ、ここの国では彼氏?)

ちゃんと追いかけている人たちがいる(笑)
酔っ払いすぎて監視がおろそかにならないようにね~。
それにしても、瀬見の相手がどんな人なのかしら。
そこはあっちゃんも気になるとこだよね~。
ハイ、きえ王国は"彼氏"ですかね。
コメントありがとうございました。
No title
コメントけいったん | URL | 2012-10-04-Thu 14:49 [編集]
雄和から話しを聞いて 飛び出した由利は勿論
由利の事となると 感情に歯止めが利かない由良も
そして 溺愛してる由利を泣かせた雄和も
パニック中~~!(((( ;゚д゚)))アワワワワ  

この状況の中で 冷静なのは高畠だけのようですから
彼には 客観的に これから話す内容を聞いて欲しいものですね。(*≧人≦)タノムッ!!


「ちーちゃん、聞いてよぉ~!結局ぅ~いい男とはぁ~いい男とぉ~引っ付いちゃうんだよねぇ~ウィ((--*)ヒック!!」
『それが きえワールドですから♪(*^-')b 』
「ちっ 今度 男装して 紛れ込んでやるぅー!ヒック!!(*・ε・*)ムー」
『∑(゚ェ゚:)エッ!? 』

一度 酒乱をやってみたかったの~♪
ちーさん、ご迷惑をお掛けします┏○))ペコ
きえ様、”ちっちゃくて小太りのおっさん”の出番ってないの?
アッヒャッヒャ!ヽ(゚┏_┓゚)ノ←男装した?私...byebye☆






Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-10-04-Thu 15:39 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> 雄和から話しを聞いて 飛び出した由利は勿論
> 由利の事となると 感情に歯止めが利かない由良も
> そして 溺愛してる由利を泣かせた雄和も
> パニック中~~!(((( ;゚д゚)))アワワワワ  
>
> この状況の中で 冷静なのは高畠だけのようですから
> 彼には 客観的に これから話す内容を聞いて欲しいものですね。(*≧人≦)タノムッ!!

そうねぇ。
一番冷静なのが高畠だと思います。
みんな由利のことで精一杯(←恋人位置放っておかれた高畠)
会社の同僚ということで、もちろん戸惑いはあるのでしょうけれど。
やっぱり冷静に由良や雄和の気持ちを判断してくれるでしょう。
ホント、頼りになる下僕です(←)

> 「ちーちゃん、聞いてよぉ~!結局ぅ~いい男とはぁ~いい男とぉ~引っ付いちゃうんだよねぇ~ウィ((--*)ヒック!!」
> 『それが きえワールドですから♪(*^-')b 』
> 「ちっ 今度 男装して 紛れ込んでやるぅー!ヒック!!(*・ε・*)ムー」
> 『∑(゚ェ゚:)エッ!? 』
>
> 一度 酒乱をやってみたかったの~♪
> ちーさん、ご迷惑をお掛けします┏○))ペコ
> きえ様、”ちっちゃくて小太りのおっさん”の出番ってないの?
> アッヒャッヒャ!ヽ(゚┏_┓゚)ノ←男装した?私...byebye☆

酔っ払い師匠~っ。
いい男をゲットしたくて、とうとう男装か…。

ちっちゃくて小太りのおっさん「ん? この店はイケメンが多いなぁ」
アラフォーとばらした○ーさん『でしょーヽ(゚∀゚)ノ良いお店でしょー(笑)』
ちっちゃくて小太りのおっさん「うーん。目の保養に騙されて飲みすぎるぞ~ぉ」
アラフォーとばらした○ーさん『どれか持って帰りたいよね~ぇ』
ちっちゃくて~省略~『ウィ((--*)ヒック 持ち帰り…??? いやぁ、飲み過ぎたぁ…』
アラフォー~省略~「師匠~~~~っ…だれかぁぁぁ」(←いつぞや誰かが送ってもらえたことを思い出す)

…待てど暮らせど、持ち帰ってくれる人はなかったとさ…。

一応、酒乱になったちっちゃい人を出してみました(笑…失礼しましたm(__)m)
でも店の片隅で心配そうに見守ってくれている人はいたと思いますよ。
あつみ「撃沈かな…」
せみ「おまえはそうなるなよ」
あつみ「ユーリじゃあるまいし…」

コメントありがとうございました。
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