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BLの丘
七色の虹 25(最終話)
2012-10-06-Sat  CATEGORY: 七色の虹
由利は自宅であるのに、高畠の存在を気にしたのか、雄和に甘えたかったのか、この家を出ていった。
はっきりと確認した雄和の転勤時期は来年度で、まだ時間はある。
それまでは雄和の引き継ぎや、各社への報告もあるのですぐに、とはいかないらしい。
もしかしたら…、何かの出来事でキャンセルになるかもしれないのではないかと、淡い期待を持ってしまったのは、やはり由利の存在のせいか…。
雄和の栄転話を聞いた時に、ふと、由良は初めて顔を合わせた時のことを思い出した。
仕事内容。あまりにも手際よく、問題解決をしてしまったこと。…それは彼の技術力の高さも表しているのだろう。
更に咄嗟にトイレで出会っただけの由利を思い出した記憶力。一瞬で見極めた洞察力。
彼の会社がどんな人材をどのように育てているのかは知らないが、適任の人物なのだと判断された時、期待に応えたいのは男として、その先にやりがいを見出すものだろう。
会社に必要な人物として…。

ポツンとソファの前に蹲ってしまった由良に、いつもと変わらない大きな手が頭を撫で、同じように隣に座って、先程までの由利との行為を繰り返してくる。
抱きしめあう…。肌の温もりが感じられることとは、こんなに安堵できるものだったのだろうか…。
由利はいなくなっても、高畠がいてくれる。それを教え込まれているようだった。
淋しさまでも汲み取ったように、高畠から優しい声が降り下りた。
「由良とユーリはいつでも一緒にいる。俺じゃ踏み込めないところも当然あるけれど…。その一部を俺にちょうだい。由良がユーリを守ったように、今度は俺が由良を守ってやるから。もう、…”お兄ちゃん”でなくていいんだよ」
一瞬のためらいには、高畠が気遣った言葉の意味があったのだろう。
ずっと由利を支えてきたものから、解放させること。
全部を自分のものに…なんていう無茶は絶対に言わない。
独占欲が強くっても、唯一、由良と由利の事だけは認めてくれている。
例え嫉妬をしたとしても、そこにあるものと自分たちの間に芽生えたものは違っている。
全てを理解して分かってくれる人に、由良は耐えていたものを吐き出すように、縋った。
「萩生…」
抱きついては、温かなくちづけが額に落とされて。
一度与えられた熱がまた彷彿としてくるようだった。
その時、なんとなく、離れ難くなる由利の気持ちが理解できた。由利が泊まるときは、大抵夕方か夜の帰宅である。

もう離れなくても良いものになる…と考えることができたなら…。それはやはり、お互いの『幸せ』に繋がるのだろう。

いつの間にか、汚れたはずのベッドメイクも済まされていた。
運ばれて、横にされて、興奮した一日の出来事と、予想もしなかった終わりに吐息が被さる。

「きっとユーリも由良みたいに、いつまでも輝き続けるんだろうな…」
気まぐれに出現する『虹』とはまた違った意味で…。
高畠は由良に覆いかぶさりながらそっと呟いた。
輝けるのは、それを彩ってくれる背景があるからだ。
由利は雄和になんと言われたのだろう…。
色はそれぞれに変わっていく。

「好きだよ、由良…」
改めて伝えられた、誤魔化しのない本音に、由良も頷いた。
二人して片想いを重ねた年月。
間にあったのは確かに由利だったけれど…。
全てを理解した人たちは無茶な行動に出ることはなかった。
もちろん、それがもどかしさを生んだ結果なのだが…。
決して由良を責めることも、由利を非難することもない。

退社の手続きは、高畠がうまく運んでくれることだろう。一人の先輩として…。
尾ひれなどの噂話、由良に向けられる影響は覚悟できることであったし、そばに高畠がいてくれることが何よりの力強さになることは、由利でも想像できて任せるのか。ある意味、丸投げの状態だったけれど。
逆に自分たちを頼ってくれた嬉しさも湧いた。

今まで由良が甘えられなかったもの…。それがここにはある。
安堵は耐えていた心すら軽くしてくれた。
一人だけで頑張るのではないのだと。

「萩生…」
一緒にベッドで横になった時。
普段では絶対に口にしないだろうと思える甘えた声を上げたところで、確信を得たように高畠の包む腕の力が強くなった。
「ユーリがいなくなったら、俺がここに越してこようか」
「は?」
広いマンションは確かに一人では持て余すが…。
素っ頓狂な声を上げれば、当然だと自信に満ちた表情に出会った。
「だって、痴漢にあわれた時に、鍵もなくて入れないとか、ありえないし~」
茶化されたが、安全面か。
生活費のこともある。そして生活環境を変えたくないこと。
二人で住んでいた分、一人暮らしの高畠とは違って広かったし、由良が高畠の住居に紛れこむことはないと想像できる。
そうなれば押しかける方が適役かと…。
クスっと笑ってしまった由良に、わざとだと思われる憎たらしげな表情が落ちた。
「あ、ビンボー人とか思っただろー」
「是非、羽後さんみたいに、『養ってやる』っていうくらいの実力、つけてほしいね」
一人で住むより、二人で住んだ方が安く上がるかどうかはともかく…。
会うための移動時間などまで考えたら、無駄な時間も費用もない。そばにいてくれたほうが嬉しい。
由利がいない日、高畠に声をかけてここに呼んでしまったことが、…由良の中に宿る”淋しさ”を伝えていることが、最大の理由なのだが。

嫌味はそのままの解釈はされない。
「由良がいてくれたら努力する。居てくれなかったら…」
「見捨てられたと思って路頭に迷いなよ」
「おまえに愛情はないのかぁぁぁぁ」
「萩生の生活も潤わせるんだよ。俺って貴重な存在でしょ」
別れる気はない…。
フッと笑われた態度に、高畠は返す言葉もなくなった。
由良がいるからこそ仕事にもますます力を注げるようになるし、雄和のように上を目指す人間になっていく。
…そうです。その通りです。本人に言われているのなら世話がない…。
力おちる高畠の後頭部を由良の手がさする。

「背中の傷、一生、付け続けてやるから…。痛みで俺を思い出すか、見せたい誰かに罵られるかは萩生の好きにしていいよ」
浮気防止策なのか、逃げられるのかを問う言葉に、「浮気なんてしません」と意味を理解した返答がある。
「だからできるだけ慣れていこう」
耳元で囁かれて、ゾクッと背筋が戦慄いた。
今日の出来事を思い出してくる。
慣れれば傷をつけなくても済むということなのか…。
動けなくなるのは辛いけれど、包まれる温かさはいつだって感じていたい。
「萩生…」
「心配しなくていいよ。一生由良だけを見ているから。『空』に輝く『虹』は俺だけのものだもの…」

全てを包んでくれる人…。
由良は優しさと雄大さを感じて、満足げに頷いて瞼を落とす。
熱くなる体は高畠が教えたものだった。
もう一度…。それもありかもしれない。
朝から緊張して、色々あり過ぎて、でも安堵した腕の中だった。

―完―

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それぞれ、幸せを目指してお互いのパートナーに自分の人生を委ねていく双子ちゃんです。
今回、スピンオフという形で、兄由良視点で書かせていただいたので、由利sideの印象と変わっているところがあったならお許しください。
本当に設定がなかったものを何とかこじつけて書きこみました(いつものことですが…)
適当さ、いい加減さ、満載でいる私の話を読んでくださって、すごくうれしいです。
いつも誰かからネタをもらって、感謝の気持ちもないかのように、いかにも『あなたのせいで書いているのよヽ(`Д´)ノ』みたいに書いてしまっていますけれど、本当は私のほうが楽しんでいます。(ボケツッコミの世界?!)
迷惑じゃないです。いっぱい書きこんでください。
ご愛読、いつもいつも、ありがとうございました。

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トラックバック0 コメント4
コメント

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淋しいね~。
コメントちー | URL | 2012-10-06-Sat 04:07 [編集]
きえさん、お疲れさまでした。
由良も幸せになって良かったです。
高畠さんも良かったね。由良と恋人になれて。
素直になれない恋人だけど、口とは裏腹に愛情はきっと誰よりも持ってるはず。
お兄ちゃん気質は無くなりはしないけど、充分甘やかしてあげてください。

双子ちゃん王国は、きっと安泰ですね。
何だかんだと二人会いそうだし。
会ったら会ったでイチャイチャしそうだ(笑)
そして、それを黙って見守るナイト(下僕)二人。

あら、ss が書けちゃい・・・ハハッ。

そして、勝手にアツセミやら何やら書いてごめんなさい。他の読者様に申し訳ないなと思いつつ書いちゃいました。きえ王国なのに。


「せみちゃん、せみちゃん。俺らも最終回らしいぜ」
「そ?まあ、良いんじゃん?俺達、脇役だし」
「まあな。で、せみちゃん。どこに電話してるわけ?」
「ん?お前が俺の恋人みたいって言うから」
「マジ?」


「師匠!風邪、ひきますって!師匠!」
「うにゅー。やっぱり、脇役が好きだぁ」
「ちーもですよ。あ、師匠。せみちゃんのお相手が・・・」
「グーグー」
「何なの?あの人。スゴく綺麗。やだ、萌え袖じゃん!可愛いっ。せみちゃん、ズルイッ」

リンリンリン♪
「ただいま 電話に・・・」
隊長、無視。
リンリンリン♪
伊吹、大人の時間中。甲賀に叱られる。
リンリンリン♪


「師匠、佐貫さんが(草取りに行って仲良くなったちー)来てくれるって」
「お化粧、直してくる」

師匠、無事にオウチに帰れそうです。


Re: 淋しいね~。
コメントたつみきえ | URL | 2012-10-06-Sat 09:38 [編集]
ちー様
こんにちは。

> きえさん、お疲れさまでした。
> 由良も幸せになって良かったです。
> 高畠さんも良かったね。由良と恋人になれて。
> 素直になれない恋人だけど、口とは裏腹に愛情はきっと誰よりも持ってるはず。
> お兄ちゃん気質は無くなりはしないけど、充分甘やかしてあげてください。

脅されて(←)書いてきましたが。
無事完結できて良かったです。
物分かりの良い恋人ですから温かい愛で包んでくれることでしょう。
強がっていても、心の中にある淋しさ、ちゃんと感じとってくれる人ですからね。

> 双子ちゃん王国は、きっと安泰ですね。
> 何だかんだと二人会いそうだし。
> 会ったら会ったでイチャイチャしそうだ(笑)
> そして、それを黙って見守るナイト(下僕)二人。
>
> あら、ss が書けちゃい・・・ハハッ。

毎日テレビ電話で顔を見て安心しているんじゃないですかねぇ。
そうそう、会ったらイチャイチャして。
ナイトから「いーかげんにしろっ」と引き離されて…。
ss? ありませんよ~。(たぶん…)

> そして、勝手にアツセミやら何やら書いてごめんなさい。他の読者様に申し訳ないなと思いつつ書いちゃいました。きえ王国なのに。
> 「せみちゃん、せみちゃん。俺らも最終回らしいぜ」
> 「そ?まあ、良いんじゃん?俺達、脇役だし」
> 「まあな。で、せみちゃん。どこに電話してるわけ?」
> 「ん?お前が俺の恋人みたいって言うから」
> 「マジ?」

面白かったです~。
本編で出てこない分、こちらで活躍してくれました。
あつみなんて、今回、一度も登場してなかったのです?!と思ってしまうくらい…。
そんな彼らの恋人になる人ってどんな人なんでしょうねぇ(←)
本当に読者様の脳内を覗いてみたいものです。
どんな妄想しているのかしら。

> 「師匠!風邪、ひきますって!師匠!」
> 「うにゅー。やっぱり、脇役が好きだぁ」
> 「ちーもですよ。あ、師匠。せみちゃんのお相手が・・・」
> 「グーグー」
> 「何なの?あの人。スゴく綺麗。やだ、萌え袖じゃん!可愛いっ。せみちゃん、ズルイッ」
>
> リンリンリン♪
> 「ただいま 電話に・・・」
> 隊長、無視。
> リンリンリン♪
> 伊吹、大人の時間中。甲賀に叱られる。
> リンリンリン♪
>
>
> 「師匠、佐貫さんが(草取りに行って仲良くなったちー)来てくれるって」
> 「お化粧、直してくる」
>
> 師匠、無事にオウチに帰れそうです。

師匠は佐貫に釣られるのか…。
ちー様、夏から草むしり頑張ってくださっていたのですね~。
実りの秋、きっと今頃美味しい物がたくさん…(何植えたんだか…)
無事お帰りくださいね。
お体に気を付けて~。
コメントありがとうございました。
鮮やかに輝いてる七色の虹♪
コメントけいったん | URL | 2012-10-06-Sat 18:03 [編集]
双子の王子様には、いつも素敵な騎士が側に居て それはそれは 幸せに暮らしましたとさ♪

オネダリ(←脅迫?)で書いて下さった ツンデレ兄の由良の話し、楽しかったよ~♪(((o(@^◇^@)o)))♪
コメ欄で番外編を きえ様とちーさんが書いてくれたしね!

「佐貫だぁ~♪あれ?ナルちゃんもいる~♪って、何処へ向かっているの? ヒック!!」
「ちーが電話してくるから 何事かと思えば チッ!」
「光也、そんな事を言っちゃ…」
------省略----------
「酒が抜けるまで そこで ゆっくり休めばいいさ!」
「光也!で・でも ここって!」
「俺たちは 2人の時間を じっくり楽しもうな♪」
「えっ!う・うん…照」
出して~||Φ|(|´|Д|`|)|Φ||ウィ~ヒック!!...byebye☆




 



Re: 鮮やかに輝いてる七色の虹♪
コメントたつみきえ | URL | 2012-10-06-Sat 21:48 [編集]
けいったん様
こんばんは。

> 双子の王子様には、いつも素敵な騎士が側に居て それはそれは 幸せに暮らしましたとさ♪

ハイ。素敵な騎士と周りの人に見守られてね。
天にも昇るような幸せ気分でしょう。

> オネダリ(←脅迫?)で書いて下さった ツンデレ兄の由良の話し、楽しかったよ~♪(((o(@^◇^@)o)))♪
> コメ欄で番外編を きえ様とちーさんが書いてくれたしね!

皆さんにご意見をもらわないと何を書いていいのか分からない、無能な作者です…(汗)
コメ欄で番外編(爆)
色々な人が登場しましたねぇ。

> 「佐貫だぁ~♪あれ?ナルちゃんもいる~♪って、何処へ向かっているの? ヒック!!」
> 「ちーが電話してくるから 何事かと思えば チッ!」
> 「光也、そんな事を言っちゃ…」
> ------省略----------
> 「酒が抜けるまで そこで ゆっくり休めばいいさ!」
> 「光也!で・でも ここって!」
> 「俺たちは 2人の時間を じっくり楽しもうな♪」
> 「えっ!う・うん…照」
> 出して~||Φ|(|´|Д|`|)|Φ||ウィ~ヒック!!...byebye☆

けいったん様!! そこはもしや、警察署内の…っ!! 留置所…?
そ、そうか…。
ふたりの仲を邪魔した罪は重いよね…。
でもちゃんと雨風防げる場所を用意してくれたのだから、やっぱり佐貫は優しいのよ。
しかし…。ちー様はまたもや逃亡をはかったのですか。
酔っ払いけいったん様を店に放置して、佐貫に引き取らせるとは…。
連絡をもらっては、現場に行かないわけにはいかないおまわりさんだものね。
さすが、頭の回転の速いお方です。
コメントありがとうございました。
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