翌朝目が覚めたのは、激しく言い争う口調からだった。
部屋は別にしていても、リビングから苛立った声を吐きあげる五泉に、どうしたのかと思ってしまう。
ベッドルームでのんびりと寝てしまっていた燕よりもずっと早く起きたのだろう。
ガウンを羽織っただけの五泉はソファにいた。
「何言いやがった…っ。燕を納得させるためにどれだけの時間を使ったと思っているんだ…っ」
優しく抱かれた昨夜が甦る。
それは終始、燕のために気を使ったものであるのだと…。
しかし今吐き出されている声は真逆のもの。
そっと開いた扉に五泉も気付いたようだった。
こちらに視線を向けては、「燕が起きてきた」と通話を終わらせようとする。
最後の口調は完全な命令形だった。
「いいか？今回の件の功績として、燕の就職を認めろ。変なムシがつく前に取り込んでおくからな」
ブチっと切られた内容が何だったのかまでは理解することができない。
「燕、騒がせて悪かった。まだ眠いか？」
もっとやすんでいていいという発言に首が横に振られる。
もう、けっこういい時間である。
チェックアウトのことまで考えたら、そうのんびりとしてもいられないだろう。

五泉は燕を呼んだ。
ソファに座る五泉を跨るように座っては、対面で表情を伺ってしまう。
「魚沼さんとのことは、燕を介さなくても話しは進んでいるから心配しなくていい。悪かったな…、兄貴が妙なことを言ったせいで…。変な気苦労をかけた」
「そんな…。俺…、五泉のためなら…」
「だから、その考え方はやめろ。かけひきが取れないときの、自らを提供するような発言はするな。やりとりは『言葉』だけで充分足りる」
簡単に身を投げ出そうとする姿勢を強く批判される。
そしてその体は五泉自身だけが自由にできるのだと…。

「燕の将来は全て俺が握る。決して不幸にはしないし、燕の意思も汲み取る。そばにいてくれる、それそこが俺の幸せなんだ」

ただ一人の人…。
縛り付けられる、それは、人によっては苦痛かもしれないけれど、燕にとっては最高の喜びだった。
この人のためにいられるのだと思えるのだから。
抱きついて、幾度もくちづけて…。
「ベッドに戻ろう」と促されては頷いた。
あとどれくらいの時間があるのかは分からないけれど…。

両手を一まとめにされて、じっくりと愛撫をくりかえされる。
唇と、掌と…。全身で押さえ込まれた体は自由がきかなかった。
「い…いつ、み…っ」
込み上げる欲求に苦し紛れの声が上がれば、口角を上げた表情が見えた。
「求めろ…。俺だけを求めろ。そばにいるのは俺だけだ…」
潤んだ瞳で見上げると、幾度もくちづけが落ちてきた。
五泉だけ…。五泉だけだよ…と抱きついて、その存在を確認する。
「好き…」
「あぁ、愛している…」
かつて見た夢は、確実に現実となって燕を包んでくれていた。

～後日～
超不貞腐れ状態の柏崎が、能生の予約した中華レストランに同席していた。
回転式の丸テーブルには次々と料理が運ばれてくる。
そこに居たのは頸城兄弟と燕、そして柏崎の4人だけだった。
能生にすれば、先日のパーティーの『労い』を含めている。
「社長、あのねぇ。やる気のない社員、送りこむってどうなんですか？」
起業する前からの親しい付き合いがあって、会社を離れれば(いや、離れなくても)柏崎の声の軽さは変わらない。
それは、単純に『パーティー』を楽しみに行った専務とその恋人に当てられたものであるのは確か。
『行きたい』と言ってしまった燕は居心地の悪さを味わってしまった。
問われた社長はやはり、のほほんとしている。
「あぁ、まぁいいじゃない。柏崎のおかげで万事うまくいったんだし。急須が割れるような万事休すにならなくて良かったからね」
意味が通じているのかいないのか、ジャスミンティーの入った茶器を傾けている。
この兄に今更何を言える人物もいないのか…。
燕は存在の恐ろしさを感じてしまった。
間違いなく何があっても「まずは五泉」と植え付けられたようだ。
「最初から兄貴が行けばいいんだよ。何でもかんでもこっちにおしつけやがって…っ」
「燕くんが就職したら、一緒に動けるようになるね。五泉、仕事を理由に、役得だねぇ」
五泉の苦言も跳ね付ける。
苦手事はやはり五泉におしつけられるようだった。
どんな立派なホテルに泊まっても許されるらしい。
知らぬうちに燕の就職は内定したらしい。更に五泉の『小間使い』になることも決定しているらしい。
上から順番の図は燕にとって、また逆らいようのない構図になっている。
向かいで柏崎が「はいはい、やっていらんねぇよ」と掌を上に向けて肩を竦めたことは…、見なかったことにしたい。

大学2年生。2年後の時…。
それまでに教えられる数々は、燕には到底想像できるものではなかった。
能生はそれこそ『将来への投資』と言わんばかりに、数々の衣装を燕のもとに送ってきたのだった。
『パーティーへはお前たちが行け』と。

―完―


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お付き合いありがとうございました～。
最後急に進めた感じはありましたが、とりあえず、終われてよかったです。
腹黒おにいちゃん、なんか、愛着持ってしまった…(/ｰ＼*)
(でも書かないよ～書かないよ～)

えーと、次は…ですね。アンケートも締め切りますのでそちらかなぁ。
結果発表はまた後日ね。

皆様いっぱいご訪問、ありがとうございます。

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長年に亘って　燕の心に植え付けられ育てられたものは　中々　枯れはしないでしょう
でも　これからは　ひとつ一つ事ある毎に（←絶対にあると、確信してます(笑)）
五泉の　いっぱいの愛情で　新たに植え付けられ育てて貰えばいいですよね♪

兄の能生が　厄介事を持ち込んで来そうですが、
その時は　五泉に頑張ってもらわなくっちゃね♪ｶﾞﾝﾊﾞﾘ━━(｀･д･´)ﾉ━━ﾏｽ！

きえ様、
雛壇のガヤ読者の声にも負けず　滞りなく無事に最終話を迎えられ　おめでとう&お疲れ様です。
才≡⊃"├！(*ﾟ▽ﾟﾉﾉﾞ☆ﾊﾟﾁﾊﾟﾁ

nicjikaさん、お褒めに預かりありがとう♪
顔文字を考えるのが好きなので　ある意味　趣味かも～
nichikaさんの「SS」も面白かったよ～(*＾▽＾*)b

ちーさん、昨晩は　残業or忘年会！？
もし　忘年会だったら　酔って　腐上司がバレませんでしたか？(笑)
アッチにイケメン～♡ﾍ(~~*ﾍ)))) ｳﾋｮﾋｮ((((ﾉ*~~)ﾉ コッチにイケメン～♡

きえ様、１２月に入って　何かと気忙しい時期ですが、
無理の無い更新で　くれぐれも　お体に気を付けてお過ごし下さいませ。
(⌒0⌒)／~~~ ほんじゃね！...byebye☆

けいったん様
こんにちは～。
ようやく終われました～。
私的には何話も続くよりサクサク感で進めていきたいところがあって…。
これでも、のびたくん?だったのです。

> 長年に亘って　燕の心に植え付けられ育てられたものは　中々　枯れはしないでしょう
> でも　これからは　ひとつ一つ事ある毎に（←絶対にあると、確信してます(笑)）
> 五泉の　いっぱいの愛情で　新たに植え付けられ育てて貰えばいいですよね♪

間違いなく枯れていかない心情ですね。
そのたびに五泉は苦労し、ため息をつくのでしょう。
ひとつひとつ教えられてくツバメですね。

> 兄の能生が　厄介事を持ち込んで来そうですが、
> その時は　五泉に頑張ってもらわなくっちゃね♪ｶﾞﾝﾊﾞﾘ━━(｀･д･´)ﾉ━━ﾏｽ！

兄上も、また間違いなく何か面倒事を持ってきそうですね。
言いくるめられるだけの燕。
「コレコレこうだから、これが五泉のためになるんだよ。だから燕くんから言ってね」
なーんて吹きこまれて。
『禁句』は常に繰り返される。

> きえ様、
> 雛壇のガヤ読者の声にも負けず　滞りなく無事に最終話を迎えられ　おめでとう&お疲れ様です。
> 才≡⊃"├！(*ﾟ▽ﾟﾉﾉﾞ☆ﾊﾟﾁﾊﾟﾁ
>
> nicjikaさん、お褒めに預かりありがとう♪
> 顔文字を考えるのが好きなので　ある意味　趣味かも～
> nichikaさんの「SS」も面白かったよ～(*＾▽＾*)b
>
> ちーさん、昨晩は　残業or忘年会！？
> もし　忘年会だったら　酔って　腐上司がバレませんでしたか？(笑)
> アッチにイケメン～♡ﾍ(~~*ﾍ)))) ｳﾋｮﾋｮ((((ﾉ*~~)ﾉ コッチにイケメン～♡
>
> きえ様、１２月に入って　何かと気忙しい時期ですが、
> 無理の無い更新で　くれぐれも　お体に気を付けてお過ごし下さいませ。
> (⌒0⌒)／~~~ ほんじゃね！...byebye☆

皆様に楽しませていただきました～♪
忙しい日々は皆様も同じことと思います。
12月、本当に慌ただしいです。
イケメンにかこまれているちー様がうらやましいなぁ。
皆様、ご病気にもきをつけて、健康でいてくださいね。
コメントありがとうございました。

うー、終わっちゃった。
私の頭の中のあれやこれやは無かったわ。
あったら、来年まで終わらないけどねー(笑)

私、お兄ちゃん嫌いじゃないですよ。
燕ちゃんを大事にしてくれるなら、大歓迎です。
しかし、イッツミ～。
男らしい。そうか、爺さんになっても燕を愛していくんだな？ヨシヨシ、頑張ってツバメマスターを極めてちょ(笑)

ツバメマニュアル最重要事項

一日、一回は『愛してる』『好きだよ』と、言いましょう。自信が無いので言葉が足りないとすぐ淋しがります。淋しいオーラは大変危険です。すぐに察してあげましょう。放置するとすぐに次のマスターを探してしまいます。


刈羽さんとお兄ちゃん。
どっちもタチヒロシみたいな二人がくっついたら・・・
ええ、わかってます！
師匠と妄想しときます。

師匠、昨日は忘年会。
ほとんど女子(笑)男子は、上司二名(笑)
でも、カウンターに座ってたお兄さんがイケメンでした。隣が男子なら・・・私の頭の中はお花畑～。

ちー様
こんにちは～。

> うー、終わっちゃった。
> 私の頭の中のあれやこれやは無かったわ。
> あったら、来年まで終わらないけどねー(笑)

終わりましたよ～。
ちー様の望むものが書かれた日には…。
確かに年越しカモしれませんね。
(…えっ…って、どんなもの???)

> 私、お兄ちゃん嫌いじゃないですよ。
> 燕ちゃんを大事にしてくれるなら、大歓迎です。
> しかし、イッツミ～。
> 男らしい。そうか、爺さんになっても燕を愛していくんだな？ヨシヨシ、頑張ってツバメマスターを極めてちょ(笑)
>
> ツバメマニュアル最重要事項
>
> 一日、一回は『愛してる』『好きだよ』と、言いましょう。自信が無いので言葉が足りないとすぐ淋しがります。淋しいオーラは大変危険です。すぐに察してあげましょう。放置するとすぐに次のマスターを探してしまいます。

どこまででも大事にされる燕でしょう。
それこそ、お兄ちゃんと五泉に。
そこでなにやらバトルが始まるかは知らないけど。
五泉は近づくなといい、能生は俺が与えたんだ…と眺めようとして…。
刈羽は「またはじまったよ…」と兄弟げんかを大人しく見守ってくれるのかしら。

> 刈羽さんとお兄ちゃん。
> どっちもタチヒロシみたいな二人がくっついたら・・・
> ええ、わかってます！
> 師匠と妄想しときます。

このダブルは…。
惜しいところも残しているんですが…。
(だから脇役にくいつくのわねぇ)
どっちもタチだねぇ。

> 師匠、昨日は忘年会。
> ほとんど女子(笑)男子は、上司二名(笑)
> でも、カウンターに座ってたお兄さんがイケメンでした。隣が男子なら・・・私の頭の中はお花畑～。

イケメン男子に寄れなかったの?
お花畑、私も見たいよ～。
この時期、忙しいよね。
無理しないでね。
コメントありがとうございました。

リアルタイムに読み始めが出来た作品だからあっという間に
終わってしまった感です。
またきえ様もゆっくりしながら次回作を楽しみにします。

丘の住人に方にも名前を呼ばれたりして、ホントご近所さん
気分を味わいました。　また集まれますように、よい日を皆で過ごせますように～～～（＾＾）/

nichika様
こんばんは。

> リアルタイムに読み始めが出来た作品だからあっという間に
> 終わってしまった感です。
> またきえ様もゆっくりしながら次回作を楽しみにします。

ちょうどいいタイミングで読み始められたようですね。
私自身、長く書いていたい性格ではなくて、さっさと終わりにしたような感じです。
一か月くらいの単位でまわしていきたいんですけれどねぇ。
次回作、書けるように努力したいです。

> 丘の住人に方にも名前を呼ばれたりして、ホントご近所さん
> 気分を味わいました。　また集まれますように、よい日を皆で過ごせますように～～～（＾＾）/

丘の住人(笑)
いろいろな方が出入りしてくれています
みなさん、ご近所さんですよ。
コメントありがとうございました。

あーよかったぁ
燕もこれでやっと落ち着いてちゃんと学校に行って勉強もできますね
五泉の下についてあと２年研修して卒業あかつきには
彼の片腕として立派な補佐役となることでしょう
将来のための投資を無駄にしないどころか何倍にも大きくして返してくれそうです

五泉兄、やなヤツー
と思いましたが、悪い人ではなんですよね
ちょっとばかり調子が良くて
罪悪感なしに人を駒としても使える
会社のトップとしてはピッタリな人でしょうが
使われる部下や小間使いに取っては碌でもない上司であり兄ですね
燕には旦那の兄になる人だから義兄？
これからもいろいろ苦労させられそう
頑張れ～燕

甲斐様
おはようございます。

> あーよかったぁ
> 燕もこれでやっと落ち着いてちゃんと学校に行って勉強もできますね
> 五泉の下についてあと２年研修して卒業あかつきには
> 彼の片腕として立派な補佐役となることでしょう
> 将来のための投資を無駄にしないどころか何倍にも大きくして返してくれそうです

人のため、は自分のためでもありますからね。
お勉強しながら社会科見学もして、燕、大忙しです。
五泉にしてみたら、二年後が楽しみかもしれませんね。
いつも一緒にいて、仕事の効率が上がるか、下がるか…。

> 五泉兄、やなヤツー
> と思いましたが、悪い人ではなんですよね
> ちょっとばかり調子が良くて
> 罪悪感なしに人を駒としても使える
> 会社のトップとしてはピッタリな人でしょうが
> 使われる部下や小間使いに取っては碌でもない上司であり兄ですね
> 燕には旦那の兄になる人だから義兄？
> これからもいろいろ苦労させられそう
> 頑張れ～燕

お兄さんの相手も大変ですね。
平然と、堂々と物事を押し付けてくる人ですから。
悪い人ではないんですよ。
それが分かるから付いていく部下たちがいるのでしょうね。
そこらへんはお兄さんの人柄、といいますか…。
お読みいただいて、またコメントありがとうございました。

遅くなりましたが、きえちゃん、完結おめでとうございます♪
燕ちゃん飼育マニュアルも完成ですね～(^∇^)
で、腹黒兄ちゃんにもお仕置きだね～。
ふふふ…(￣ー￣)

さえ様
おはようございます。

> 遅くなりましたが、きえちゃん、完結おめでとうございます♪
> 燕ちゃん飼育マニュアルも完成ですね～(^∇^)
> で、腹黒兄ちゃんにもお仕置きだね～。
> ふふふ…(￣ー￣)

完結一安心でした。
お兄ちゃんもきっとお仕置きされるでしょう。
撥ねつけていそうだけど…。
燕、もう何も不安がることなく五泉のそばにいてほしいものです。
コメントありがとうございました。

こんにちは～。
わざわざ読み返してくださいましてありがとうございました。

> なかなかハードな兄弟の話だったんですね(笑)我が儘って以外と難しいのよね～下手すりゃタカリになっちゃうもんねΨ(`∀´#)

甘えるのって相手の負担になっているんじゃないかなって心配するところですね。
五泉は燕が甘えてくれれば、自分を見ていると言う自信になるんでしょうが…。
ハードな兄弟…。うーん、どっちも強引だからね。
それでないと会社を回していけないっていうところもあるんでしょうかね。
コメントありがとうございました。