勝沼はしばらくだまっていたが、漏れたのは大きなため息だった。
人の人生を諦観しているようで、だけどその奥で、成り行きを黙って見守れないような優しさが滲み出ていた。
テーブルに肘をつけて額を抱え込むあたり、大月とは違った、性への思いがあるのだろう。
「大月・・・、それ、本気で言ってんの?」
冷たい口調だったかもしれないけれど、蔑みがみられなかったのは、それこそ、自惚れなのだろうか。
大月も勝沼も発言の"元"をたどっていた。
『抱きたいなら抱かせてやる。気に入らないなら別れる』
自身で持っていたモットーが、たった一言で否定されていた。
何を告げられているのかは百も承知しながら、嫌われることをどこかで受け入れたくなかった。
他人に全てを委ねることの危険性は誰よりもしるはずなのに。
違いというなら、・・・大月は常に自分が中心で、相手から拒絶される意味を知らない。
勝沼もその一握りと捉えていたのだろうか。・・・自惚れが、この人は去られない と思わせていた。
大月は"愛情"の中で育った覚えがない。
父も母も仕事に忙しく、気付けば兄も他の人間に気を取られていた。
それは今だからこそ分かることなのだけれど。
心の奥底に沈殿する思いとは・・・。
『求めてほしい』ものとは、そのへんに転がってもいた。
『いつかは流れて消える』つまり浄化装置付きの男ばかりだった。
淡々と過ごした日々。
裏切られるのは嫌だ・・・、そう教えたのは何よりも"韮崎"という人物だろう。
本当は心底愛されたいのに、隙間のふちだけ撫でて消えていく。
おもわせぶりな態度。
まるで、埋められない、明野への思いを、どこかではらすかのように・・・。
きっと、お互い"愛"という腑を焦がすようなものに出会えていなかったのだろう。さらにはその扱い方も。
弱くなった大月に、更なる棘を刺したのは、目の前の勝沼だった。
「悪い・・・って、先に謝っておく。最初、大月と韮崎さんとのこと、疑ってたのは俺も同じ。でも、大月、そんな素振り見せなかったし、安心もしていた。・・・けど、今の発言聞いちゃうと、・・・」
言葉を詰まらせた勝沼に返せるものもなく、続きを待つしかない。
これまでのやりとりを聞いたら、韮崎との関係を疑われても仕方がない。
そこまで漏らしたのは自分なのだし・・・。
黙ってしまう大月に次の言葉が聞こえてくる。
「大月・・・って誰とでも寝らるやつ? べつにそれを悪く言うわけじゃないけど。・・・ってか、それは最初から何だか分かっていたけれど。俺も男だし、なんか、わかるよ、そーゆーの」
相変わらず包み込んでくれる発言には苦笑も湧いた。
同時に『最初からわかっていた』という発言は聞き捨てなれなかった。
たどたどしい発言でありながら、しっかりと思っていた状況を伝えてくることには、聞き入ってしまう。
なにより慌てたのは、『わかるよ・・・』というほうだろうか。
同じように勝沼は誰かを抱いていたと思えば、想像だけで羞恥と嫉妬にかられていた。
思っていた以上に冷静な態度。
更に聞こえたのは冷酷とも言える発言だった。
「俺、『ただ抱いてみたい』っていう気持ちで大月と付き合う気、ないから。もちろん、『玉の輿』なんて言ったのは冗談だし、俺としては自分で守りたい人間に"守られる"ことだけは嫌だね」
勝沼のプライドなのだろう。
大月から得られる恩恵など、求めてはいないとはっきりと告げられる。
きちんと目標を持っていた人だった。
クラゲ状態の自分とは違っている。
酔っているのかも分からない眼差しに翻弄されそうで、大月は故意的に誘う魅惑を放ちながら、その話題から、・・・自分で誘っておきながら避けた。
あとは何の話をしたのだろうか・・・。
いつもよりも早いペース。またそこは個室。
酔い潰れるのには気持ち良すぎるくらいに、大月は身を投げ出していた。
『抱く気があるなら連れ去ればいい』
『抱く気がないなら、このまま放置すればいい』
経験談が物を言うとはこのことか。
自分の体は誰かがどうにでもしてくれるという甘えがかしこに表れる。
道端で転がって、警察に補導されたときも、韮崎が迎えにきた。
乱暴な男に引っかかって、喧嘩混じりの騒動を起こしたときも、謝りにきたのは韮崎だった。
"想い"とは。"愛"とはなんなのだろう。
もし、それを勝沼に告げたなら、ただの嫌味なのだろうか。
少しでも私生活を語れば、今日もこうして一人、離れていく人物を知る。
こんな時ほど自分の生まれ育った環境を疎ましく思ったことはないだろう。
"自分だけを"・・・見てほしい・・・
眠りにつく寸前で耳元に誰かの唇が届いた。
「大月が委ねてくれたら、守ってやるよ。誰かのように、絶対にそばにいて、裏切らないから・・・」
それは、一番欲して、求めて安心したい空間だったのかもしれない。
声を聞いては夢の中に誘われるように、安らかな寝息を立てた。
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340000名さま 見かけたらお一言♪
人の人生を諦観しているようで、だけどその奥で、成り行きを黙って見守れないような優しさが滲み出ていた。
テーブルに肘をつけて額を抱え込むあたり、大月とは違った、性への思いがあるのだろう。
「大月・・・、それ、本気で言ってんの?」
冷たい口調だったかもしれないけれど、蔑みがみられなかったのは、それこそ、自惚れなのだろうか。
大月も勝沼も発言の"元"をたどっていた。
『抱きたいなら抱かせてやる。気に入らないなら別れる』
自身で持っていたモットーが、たった一言で否定されていた。
何を告げられているのかは百も承知しながら、嫌われることをどこかで受け入れたくなかった。
他人に全てを委ねることの危険性は誰よりもしるはずなのに。
違いというなら、・・・大月は常に自分が中心で、相手から拒絶される意味を知らない。
勝沼もその一握りと捉えていたのだろうか。・・・自惚れが、この人は去られない と思わせていた。
大月は"愛情"の中で育った覚えがない。
父も母も仕事に忙しく、気付けば兄も他の人間に気を取られていた。
それは今だからこそ分かることなのだけれど。
心の奥底に沈殿する思いとは・・・。
『求めてほしい』ものとは、そのへんに転がってもいた。
『いつかは流れて消える』つまり浄化装置付きの男ばかりだった。
淡々と過ごした日々。
裏切られるのは嫌だ・・・、そう教えたのは何よりも"韮崎"という人物だろう。
本当は心底愛されたいのに、隙間のふちだけ撫でて消えていく。
おもわせぶりな態度。
まるで、埋められない、明野への思いを、どこかではらすかのように・・・。
きっと、お互い"愛"という腑を焦がすようなものに出会えていなかったのだろう。さらにはその扱い方も。
弱くなった大月に、更なる棘を刺したのは、目の前の勝沼だった。
「悪い・・・って、先に謝っておく。最初、大月と韮崎さんとのこと、疑ってたのは俺も同じ。でも、大月、そんな素振り見せなかったし、安心もしていた。・・・けど、今の発言聞いちゃうと、・・・」
言葉を詰まらせた勝沼に返せるものもなく、続きを待つしかない。
これまでのやりとりを聞いたら、韮崎との関係を疑われても仕方がない。
そこまで漏らしたのは自分なのだし・・・。
黙ってしまう大月に次の言葉が聞こえてくる。
「大月・・・って誰とでも寝らるやつ? べつにそれを悪く言うわけじゃないけど。・・・ってか、それは最初から何だか分かっていたけれど。俺も男だし、なんか、わかるよ、そーゆーの」
相変わらず包み込んでくれる発言には苦笑も湧いた。
同時に『最初からわかっていた』という発言は聞き捨てなれなかった。
たどたどしい発言でありながら、しっかりと思っていた状況を伝えてくることには、聞き入ってしまう。
なにより慌てたのは、『わかるよ・・・』というほうだろうか。
同じように勝沼は誰かを抱いていたと思えば、想像だけで羞恥と嫉妬にかられていた。
思っていた以上に冷静な態度。
更に聞こえたのは冷酷とも言える発言だった。
「俺、『ただ抱いてみたい』っていう気持ちで大月と付き合う気、ないから。もちろん、『玉の輿』なんて言ったのは冗談だし、俺としては自分で守りたい人間に"守られる"ことだけは嫌だね」
勝沼のプライドなのだろう。
大月から得られる恩恵など、求めてはいないとはっきりと告げられる。
きちんと目標を持っていた人だった。
クラゲ状態の自分とは違っている。
酔っているのかも分からない眼差しに翻弄されそうで、大月は故意的に誘う魅惑を放ちながら、その話題から、・・・自分で誘っておきながら避けた。
あとは何の話をしたのだろうか・・・。
いつもよりも早いペース。またそこは個室。
酔い潰れるのには気持ち良すぎるくらいに、大月は身を投げ出していた。
『抱く気があるなら連れ去ればいい』
『抱く気がないなら、このまま放置すればいい』
経験談が物を言うとはこのことか。
自分の体は誰かがどうにでもしてくれるという甘えがかしこに表れる。
道端で転がって、警察に補導されたときも、韮崎が迎えにきた。
乱暴な男に引っかかって、喧嘩混じりの騒動を起こしたときも、謝りにきたのは韮崎だった。
"想い"とは。"愛"とはなんなのだろう。
もし、それを勝沼に告げたなら、ただの嫌味なのだろうか。
少しでも私生活を語れば、今日もこうして一人、離れていく人物を知る。
こんな時ほど自分の生まれ育った環境を疎ましく思ったことはないだろう。
"自分だけを"・・・見てほしい・・・
眠りにつく寸前で耳元に誰かの唇が届いた。
「大月が委ねてくれたら、守ってやるよ。誰かのように、絶対にそばにいて、裏切らないから・・・」
それは、一番欲して、求めて安心したい空間だったのかもしれない。
声を聞いては夢の中に誘われるように、安らかな寝息を立てた。
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勝沼が話す言葉ひとつ一つに 見せる態度に
大月が 心寄せて行く様子が 手に取る様に分かりますね。
でも まだ 私は疑っているんだよねー(;一一) ジィー
勝沼が 大月にとって 信じていい相手だと思える 何か決定打が欲しい
HOMERUN♪(*^-^)oノ"Σ☆---------------o カキーン!
大月が 心寄せて行く様子が 手に取る様に分かりますね。
でも まだ 私は疑っているんだよねー(;一一) ジィー
勝沼が 大月にとって 信じていい相手だと思える 何か決定打が欲しい
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勝沼って本音でぶつかっていく好青年ってとこでしょうか。
裏表のない性格に大月も惹かれていくのでしょう。
大月のまわりって、損得考えるような人間ばっかりだったんだろうね。
そこにほだされ・・・・るのかなぁ?!(←)
勝敗を決める決定打、さて誰が打つのでしょうか。
またね(^.^)/~~~
裏表のない性格に大月も惹かれていくのでしょう。
大月のまわりって、損得考えるような人間ばっかりだったんだろうね。
そこにほだされ・・・・るのかなぁ?!(←)
勝敗を決める決定打、さて誰が打つのでしょうか。
またね(^.^)/~~~
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