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BLの丘
春が来てくれるなら 22
2013-05-10-Fri  CATEGORY: 春が来てくれるなら
何故同じ部屋で寝なかったのかと少しの疑問はあったけれど、そこは、韮崎に案内された過程があるのだろうか。
しかし、いつも通り、堂々と過ごしてくれる姿に、呆気にとられながら安堵感も湧いた。
かしこまることなく、『友人』の家として居座ってくれるのは、大月にとって新鮮だった。
この家に来た人間は何人いたのだろうか・・・。
就職して環境が変わったこともあるのだが、きっと勝沼が初めてではないか。
違和感がありながら心地よいものでもある。
今現在の"住む空間"は、殺風景で、人の息使いなど感じなかった。
人の気配があることが、どれだけ安らぎに変わるのだろう。
改めて知ることが嬉しさなのか悲しさなのか。

韮崎は、コトが終われば視界から消えていたし・・・。
もともと、ふらつかせないために抱いていた処置だったのだから、その扱いは当然のことなのか。

バスルームから出てきた勝沼は、上半身裸のまま、首にかけたバスタオルでごしごしと頭をかきむしっていた。
リビングのソファで暇を持て余していた大月はその姿に一瞬みとれる。
一度は見たことのある裸体だったが、こうして部屋の中にやってくると、また違った雰囲気だ。
締まった体から、そっと視線を外した。
「大月んちって、やっぱすげーのな。バスルームだけでうちの一間、とれそう」
「何、ばかなこと・・・」
「いや、マジマジ。悪いけど、うちになんか泊められないやって本気で思うわ」
一人暮らしの相場・・・というのはなんとなく耳にはしていた。
自分だって、親や兄たちの手がなかったら、段ボール箱にビニールシートでもかけている立場だろう。
自分の力で生きている勝沼のほうが、何倍も素晴らしいと思わされる。

「あ、朝飯、なんか、食うだろ?今、母さんに頼んで適当に作ってきてもらうから・・・」
「はっ?!ちょっとまて。自分で作るとかしないわけ?」
無駄に広い、リビングとダイニングとキッチンを一瞥され、呆気にとられた勝沼の視線は驚愕をたたえたままで大月に戻ってきた。
ハウスキーパーまで入るこの家は、大月にとって、『寝に帰る』空間でしかない。
同じ敷地内にいることで、より身近さを感じるのか、母親はマメに冷蔵庫の中をいっぱいにしてくれた。
昔から変わらず、大月は家事を自分でする、という考えがない。

「作る・・・って・・・何を?」
使ったことのないキッチンを一瞬見やり、立ち尽くしている勝沼に視線を戻す。
彼は呆然とした態度で、「お坊ちゃまだな・・・」とポツリつぶやいた。
「あそこにあるデカイ冷蔵庫、まさか飾りじゃないだろうな」
同じようにキッチンを見た勝沼が確認してくる。
「何かしら入っているよ。見る?」
ソファから立ち上がった大月は、勝沼の興味に応えることにした。
それより、何か着るものを用意してやるべきなのだろうが、体格を考えると貸せるものがあるはずがなかった。
視線をどこに向けたらいいのかと彷徨わせてしまう。
「うん」
後をついてくる勝沼は、一緒に冷蔵庫を覗きこんでまた感心していた。
すぐに食べられる食材が、少ないながら放りこまれている。
母親が作って置いていったおかずは、何日前のものだったか・・・。まだ食べられるのだろうかと首をひねる。
「なんだよ、いろいろあるんじゃん」
「バナナとかミカンとか?」
「そうじゃなくて・・・。卵とかハムとかのこと」
「ふーん」
「あと、パンでもあればなぁ」
勝沼のつぶやきに、明野のところから分けてもらうことを思いついた。
「兄貴のところから何かもらってくるか。ついでに巨摩の服でも借りてきてやるよ」
「きょうま?」
「あぁ、韮崎。アイツの服なら着られるだろ」
「げっ。い、いいよ。そんな、悪い・・・」
大月の提案には、速攻で顔をひきつらせる。
良いとか悪いとかの問題以前に、その格好のままでいられるほうが困る。
ましてや、風邪などひかれては・・・。

「どうせ夕べ、会っているんだろ。泊まってること、知っているんだから平気だよ」
「そういう問題じゃなくてさ・・・。っていうか、お兄さん、近くにいるの?」
「上の階。その上に親がいるから、まぁ、一緒に住んでいるようなものかな」
「おいおい・・・。さすが資産家は違うねぇ。でも韮崎さんの服は、マジでいいから」
まぁ、勝沼の複雑な心境が分からないわけでもないが、今は四の五のと言っていられないだろう。
大月はすぐに携帯を手にすると、明野に電話をかけていた。
事情を話せば、食品と衣類を持ってきてくれるとのことだ。
出歩かなくて済むのなら、そのほうがラクでいい。
黙って話を聞いていた勝沼も、その展開には「か、顔向けできない・・・」と焦っていたけれど。
しかし、実際現れたのが韮崎本人だったことに、更なる驚きが襲ったようだった。

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コメント

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今日は 雨、ヽ`、ヽ`个o(・_・。)`ヽ、`ヽ、
コメントけいったん | URL | 2013-05-10-Fri 10:27 [編集]
大月と 勝沼の環境の違いから来る価値観って すごい差があるよね~

私の大学生時代の友達に すっごい金持ちのお嬢が居たんだけど 
(まぁ そこの大学は お嬢が いっぱい居たんだけどね!)

そのお嬢は、普通に シャネルなどのブランドの服や鞄、靴を いつも身に着けていたもんなぁー
彼女本人は 気さくで 顔立ちも普通?で 化粧も薄い子だったから 他の友人に聞くまで 気づかなかったし。。。(←んー、気づかれないってのも ちょっと可哀想かも?(笑))

でも 仲良くなるにつれて 値観にズレを感じたモノです。
金持ちって スゲェーって!

それはそうと きえちん!
やっと 明野の登場で 本人を見られると思ったのに!
韮崎が来るなんて 会いたかったなぁ....
あぁ 残念。。。。(( T_T)トボトボ
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