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BLの丘
春が来てくれるなら 26
2013-05-13-Mon  CATEGORY: 春が来てくれるなら
【大月視点です】
たぴたぴ変わってしまってすみません。


週があけて、勝沼と顔を合わせる機会もなかった。
彼は仕事柄、あちこちを出歩いていたし、大月も様々な雑用に追われている。
韮崎も上野原も、それぞれの仕事が忙しくて、いちいち、大月に構っていられないようだった。
また影ながら、韮崎が上野原に対して牽制もしていたようだ。
明野と共に暮らしていることまでは話さなくても、単なる"弟"のような存在でそれ以上にも以下にもならないと。
大月は自分に危害がなければどうでもいいと昔から思ってるような人間である。
今更、韮崎がどの男に手を出していようがそれも関係がない。
自分とのことは、"割り切った関係"であることを誰よりも知っている。
就職させるため、また、ふらふらと遊び歩かせないため。
一度抱かれて、その手管に溺れたのは大月自身だったのだけれど。
気持ちの良い時間は決して嫌ではなかった。

明野とは・・・、こんなふうに大事に扱われているのだろうか、ふとよぎる。
身代わりと分かっていても、扱われ方に酔いしれた。
今まで、大月を抱いてきた男たちとは、何もかもが違っていた。
韮崎の抱き方は"繊細"といっていい。
しかし、勝沼が現れた時点で、過去のナニカは本当の意味で闇に葬られるのだろう。
もう、韮崎との"関係"はないな・・・と漠然と感じるのだ。
大月が勝沼に対して本気になるかどうかは、まだ分からない。
それは勝沼にも伝えてあることだし、その他同様に扱われるのも嫌だと聞かされてもいる。
ただ、初めて家の中に存在した人間は、決して嫌うものではなかった。
躊躇いもなく、堂々とした態度で過ごしてくれることは、こちらに緊張感も抱かせなかった。
良い意味で、"付き合いやすい"人物だと再確認できたことでもあった。

韮崎はあまりこの部署内にいることはない。
名前ばかりはここにあるが、ほとんどは明野と行動を共にすることが多い。
大月が入社したから、ちょくちょく顔を出すようになった、とのことだ。
その分、室内の社員にも緊張感は漂うようになったのだが。

勝沼からのメールはちょくちょく入る。
仕事の合間、暇な時間を見つけては、短い文を送ってくる。
『ランチの安い店を見つけた』とか『今日は少し遠出』など、今までだったらはっきり言ってうざったかった内容ばかりだ。
それが迷惑に思わないのは、交友関係が狭められているせいだろうか。
出会う人間が少なくなっているのだから、一つの会話が新鮮にも思えてくる。
こんな感覚は今まで味わったことがなかった。
とはいえ、大月から返信することは滅多にない。

週末になれば、また『ご飯を食べにいこう』と連絡が来た。
前回の失態があったことで躊躇してしまうところもあったが、一人、家にいることの淋しさを覚えていたのも事実。
そこは韮崎とは全く違った立ち振る舞いだった。
悩んで返事ができないままでいれば、総務部に勝沼の姿が現れる。
また『出張申請書類』を手にしていたが、それは本人のものではない。
ここに来るまでの口実か・・・。

「一泊?ホテルは?」
「だからさぁ。それ、大月の仕事じゃん」
泊まりたいところに泊まればいいのに、とは勝手な言い分だが、予算のことなども考えればなんでも容認できるというものでもないだろう。
そのあたりも、韮崎が入ってから、随分とチェックが厳しくなったらしいが。
大月の脇に立った勝沼は、スッと身をかがめてくる。
小声で語りかけてくるところは、私語であるのが分かる。
「今夜、メシ食いに行こうってメール届いた?」
「あー、来てたね・・・」
「で?」
都合はどうなのかと、その返事をもらいに来たのかと改めて知らされた。
直接話すのが早いとはこのことだろう。
「まぁ、いいにはいいけど・・・」
「もしかして酔い潰れたこと、気にしてんの?」
前回のことを口にされては、言い当てられたようでふてくされ気味にもなる。
無意識に唇を尖らせてしまえば、それだけで理解したようだ。
「なんだったら大月んちに買いこんでいくっていうのでもいいけど」
言われては、そういうのもいいか、と考えた。
何より体の疼きがあった、というほうだろうか。
いい加減な状態で始めたくない勝沼の気持ちは分かっても、試してみたいものは大月の中に宿っている。
誘ったなら、どう反応してくるのだろう。

「分かった、じゃあ、うちで」
「OK。帰り、何か買い物していこう。少しくらいなら作ってやるよ」
「え?作るって?」
「あのさー、大月って、普段、何食って生活してんだよ・・・」
出来あいのものを買って帰るものだと思っていた大月には意外な言葉が聞かれて疑問が流れていく。
またもや呆れた勝沼のため息がこぼれたが、そこはもう、諦めた世界だったのか。

しかし、未知なる世界は、やはり大月の心を弾ませてくれるものとなっていた。

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コメント

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視点が変わっても 大丈夫だよ~ん♪
コメントけいったん | URL | 2013-05-13-Mon 13:20 [編集]
大月、勝沼、韮崎、明野の 4人が、
「この時は 何を思っている?」とか、「こう言ってるけど実は…」とか、気になっているから モヤモヤを引き摺らなくて スッキリするから!

昨日の誤アップの 明野視点を読むと 彼は 人当たりの良い外見とは  少し違って 中々のリアリストで 冷静な男だと思った。
それに比べると 大月は やっぱり甘ちゃんだなぁー

きえちん、niったん、私のお腹を心配してくれて ありがとう!
もうすっかり お腹は大丈夫です。
戻って欲しくない食欲もね 復活したよ~( ̄∇ ̄*)ゞエヘヘ♪
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