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BLの丘
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2009-12-25-Fri  CATEGORY: 季節SS
またくだらないSSです。どうかお許しくださいm(__)m

「蝋燭の火とかどうすんの?」
思わず言いかけた言葉が唇の中に飲み込まれる。
二日遅れで聖夜を迎えた自分たちに、吹き消す必要などないと言いたいような千城の唇が落ちた。
クリスマスなんてとっくに過ぎちゃったよ…。
そう呟きたい英人なのに言葉が出てくることはない。
不可抗力な自然現象に阻まれては人間なんてちっぽけなものだと感じる。
それゆえに、また出会えてよかったという感動すらあった。
海外に飛ぶたびに事故にあわなければいいなというささやかな願いがある。
たとえ何百分の一とか何万分の一とかいわれる飛行機事故だって、今回みたいに離着陸の遅延とかを目の当たりにされたらいつだって不安になる。

二人で食べようと思ったケーキは冷蔵庫の中で味を落としていた。
でも英人はせっかくフランス料理亭の楯山に教えられながら作ったケーキを千城に味わってほしかったから捨てることができなかった。
もともと家事が苦手ではない英人だ。
千城に出会う前までは細々とかき集めた材料で様々な料理を作っていた。
一つの物体が違う形の物になって口に運ばれることは嬉しいことに違いない。
だけど2日間も放置されてしまったケーキはパサパサとしているし味の肥えた千城に食べさせられるものではなくなっている。
それが分かっていても捨てられなかったのはせめて蝋燭をつけてくれることに期待を寄せたから…。
協力してくれた楯山にはもうしわけないけれど、気分だけ味わえればいいやってどこかで思っていた。
リビングテーブルの上に並べた料理とワインと…、寛ぐ風景の中、遅くなりながら味わった『クリスマス』。
その蝋燭の火も消えない中で落とされた甘い口付け…。
まるで生クリームを舐めたかのような砂糖菓子を思わせる甘い蜜に英人は一瞬びっくりした。
いつの間にか消されてしまった蝋燭からキナ臭い香りが漂う。
同時に唇の上に白いクリームが塗られた。
薄暗く電気の落された部屋の中では千城の瞳を追いかけるのがやっとだ…。
「おまえを全て食べてしまいたい」

ソファの上に転がされた体からシャツの前ボタンが全て外され、上半身が露わになる。
暖房で温められたはずの空気中ですら、裸にされたらその冷たさに体が戦慄くのに…。
突然ひんやりとした泡が胸に落されてピクリと震えた。
冷たさと解けるような滑りの上で、ケーキの上に乗せたはずの大ぶりのイチゴが胸の上に乗っていた。
赤い蕾の上を更に彩る固形物。
目にした情景が想像を越える厭らしさを湛えているようで身を捩ればころりとイチゴが床の上へと転がり落ちていった。
「やだっこんなのっ!!」

まるで玩具のような気がした…。

英人は長いこと、『男に仕える身』として過ごしてきた。
過去に取らされた体位や屈辱は言葉では表しきれない。
もちろんそんなことを今の恋人である千城に改めて知ってほしくなどないし教えたくもない。
あの頃は、相手に興奮を与えることが全てだった。体を開き相手を煽り満足させる…。堕ち潰れたような世界。
そんな中で『食べ物』を扱うことだってなくはなかった。
体中に這わせられた刺身や海藻類を全て相手の口の中に収めるまで我慢しなければならなかった。
わざとらしく舌先で動かされ、一番敏感な部分へと運ばれる。動くことを絶対的に禁止され少しでも勃起すれば「厭らしい」と罵られた。

その時の屈辱をふと思い出した。
英人が激しく嫌がることに千城も罪の意識を纏った。
「すまない…」
自分の興奮ばかりを押し付けてしまったと反省する千城の態度に、これが男の欲望なのかと少し思う英人だった。
愛する人の腕の中であれば少しぐらいは我慢できるかも…。

転がり落ちてしまったイチゴを拾う気にはなれなかったけど、残ったクリームを舐めてもらうくらいはいいかな…。
「もう絶対にしないで…」
涙目で訴えながらも、今日が最初で最後だよと譲歩すれば千城から嫌われなくて良かった…という安堵の息が漏れた。
…そんな心配するくらいなら最初からしなきゃいいのに…

綺麗に舐めとられる感触は快感でしかない。
普段とは違う滑りと甘く漂う豊潤な香りに酔わされそうだ。
遅ればせながらのクリスマスプレゼントだと英人は思うことにした。

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今度こそ投石はご勘弁を…っ(深謝)
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コメント

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らぶりークリスマス
コメント甲斐 | URL | 2009-12-26-Sat 02:35 [編集]
千城さんのえっちー!!
甘すぎるケーキにさらに砂糖増量ですね。
Re:
コメントたつみきえ | URL | 2009-12-26-Sat 11:49 [編集]
MO様

こんにちは。

>初めて二人で過ごすクリスマス、二日遅れになっちゃったけど、良かったですね。せっかくの手作りケーキも、けんかの材料になっちゃいそうでしたが、英人も嫌なことを きちんと千城に伝えられるようになって、良かったね。「嫌われたら、どうしよう」と落ち込む千城が可愛いです。クリスマスに、こんな甘い二人に会えて、良かったです♪

やっぱり締めはこの二人でしょう!ってことで書いてみました。
はっきり言えるようになったのはいいものの、結局流されている英人です。
そして思い通りにしてしまっている千城タン…。
苦情がくるかと思っていましたからよろこんでくれる方がいて良かったです。
コメントありがとうございました。
Re: らぶりークリスマス
コメントたつみきえ | URL | 2009-12-26-Sat 11:55 [編集]
甲斐様

こんにちは。

> 千城さんのえっちー!!
> 甘すぎるケーキにさらに砂糖増量ですね。

どんだけ砂糖使ったんでしょう。ドバッて投げ込んじゃった模様。
たぶん来年からケーキは用意しないって思った英人かも?!
ケーキが食べられなきゃ英人を食べようかっていう発想の千城だったのかな。
コメントありがとうございました。
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