彼女には見た目とは全く異なったキツさがあった。
誰もが呆然とする中、叩かれた頬に手を当てることすら忘れて、雅臣は彼女を見返した。
恨まれる要素が全くわからない。
『泥棒猫』って何?…まさか、鹿沼龍太…?
再び裏切られるのだろうかという不安が一気に駆け上がってくる。
今、付き合っているといえる人間は鹿沼以外に思い浮かばなかったから、嫌でも彼との繋がりしか想像できなかった。
「よりによって何でうちの人なのよっ?!何年越しの恋だか何だか知らないけど、今更よりを戻そうっていったって許さないんだからっ!!」
「ちょっと、待ってください。何の話ですか?」
意味が分からず問いかけた雅臣に、白を切っていると思われたのか、再び彼女が手を振りかざした。
「やめろっ!」
店内に飛び込んできた男がいる。まるで彼女を追ってきたかのようだった。
仕事先かどこかから駆け付けたような姿だった。
きちんと着こなされたスーツの上に、グレーのコートを羽織っている。コートの前は留められてもいなくて慌てていたのだろうと想像させた。
走ってきたのだろうと分かるくらいに息が切れてはいたが、雅臣に詰め寄る彼女の手を引く。
男は北本だった。
「なんでよっ!こんなやつの何がいいっていうのっ!?貴方だって汚らわしいっ!こんな…こんなっ…っっ!!」
わぁぁぁぁっと泣き崩れる女性がいる。
彼女が北本の妻なのだとはその瞬間に理解できた。
だが、状況はまったく理解不能だ。
今更何の間違いがあったら北本との関係が問われるというのだろうか。
店先で繰り広げられる醜態に、雅臣は北本を連れだって外に出た。店内で話したい内容ではない。
「何で今頃こんな話が出てくるの?」
感情を剥き出しにして怒りたいところだが、涙に濡れる彼女とベビーカーに乗った子供を見ると、雅臣が感情的になれば逆効果な気がしてくる。
北本は彼女を胸に抱き宥めていた。その仕草には昔の親しかった頃の思い出が甦ってくる。
最後こそ悲惨な別れだったが、付き合っていた時は陽だまりのような日々だった。
ちくっと胸が痛くなるのを感じた。
「ちょっと、な…」
「ちょっとぉ?人を巻き込んでおいて、その説明はなんだよっ」
「あとで話にくるよ。とりあえず今日は…」
「二度と来るなっ」
感情を抑えようとはしても、やはり込み上げてくるものがある。
精一杯の虚勢のようにも感じた。
それに雅臣と北本が再会するとは、彼女にとっても気の良い話ではないだろう。
「言い訳くらいさせてくれ」
「聞きたくない」
雅臣がキッと睨み上げれば、フッと笑った北本がいた。
この状況で笑えるって、どんな神経を持ち合わせているんだ?!
強気な発言を繰り返す雅臣を気にかけた様子を見せたが、北本は妻を連れベビーカーを押すと人混みの中へと紛れていった。
雅臣は自分が怒っているのだと信じ込もうとした。
物のように簡単に捨てた男に対する憤りと、自分の中に甦った過去…。
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誰もが呆然とする中、叩かれた頬に手を当てることすら忘れて、雅臣は彼女を見返した。
恨まれる要素が全くわからない。
『泥棒猫』って何?…まさか、鹿沼龍太…?
再び裏切られるのだろうかという不安が一気に駆け上がってくる。
今、付き合っているといえる人間は鹿沼以外に思い浮かばなかったから、嫌でも彼との繋がりしか想像できなかった。
「よりによって何でうちの人なのよっ?!何年越しの恋だか何だか知らないけど、今更よりを戻そうっていったって許さないんだからっ!!」
「ちょっと、待ってください。何の話ですか?」
意味が分からず問いかけた雅臣に、白を切っていると思われたのか、再び彼女が手を振りかざした。
「やめろっ!」
店内に飛び込んできた男がいる。まるで彼女を追ってきたかのようだった。
仕事先かどこかから駆け付けたような姿だった。
きちんと着こなされたスーツの上に、グレーのコートを羽織っている。コートの前は留められてもいなくて慌てていたのだろうと想像させた。
走ってきたのだろうと分かるくらいに息が切れてはいたが、雅臣に詰め寄る彼女の手を引く。
男は北本だった。
「なんでよっ!こんなやつの何がいいっていうのっ!?貴方だって汚らわしいっ!こんな…こんなっ…っっ!!」
わぁぁぁぁっと泣き崩れる女性がいる。
彼女が北本の妻なのだとはその瞬間に理解できた。
だが、状況はまったく理解不能だ。
今更何の間違いがあったら北本との関係が問われるというのだろうか。
店先で繰り広げられる醜態に、雅臣は北本を連れだって外に出た。店内で話したい内容ではない。
「何で今頃こんな話が出てくるの?」
感情を剥き出しにして怒りたいところだが、涙に濡れる彼女とベビーカーに乗った子供を見ると、雅臣が感情的になれば逆効果な気がしてくる。
北本は彼女を胸に抱き宥めていた。その仕草には昔の親しかった頃の思い出が甦ってくる。
最後こそ悲惨な別れだったが、付き合っていた時は陽だまりのような日々だった。
ちくっと胸が痛くなるのを感じた。
「ちょっと、な…」
「ちょっとぉ?人を巻き込んでおいて、その説明はなんだよっ」
「あとで話にくるよ。とりあえず今日は…」
「二度と来るなっ」
感情を抑えようとはしても、やはり込み上げてくるものがある。
精一杯の虚勢のようにも感じた。
それに雅臣と北本が再会するとは、彼女にとっても気の良い話ではないだろう。
「言い訳くらいさせてくれ」
「聞きたくない」
雅臣がキッと睨み上げれば、フッと笑った北本がいた。
この状況で笑えるって、どんな神経を持ち合わせているんだ?!
強気な発言を繰り返す雅臣を気にかけた様子を見せたが、北本は妻を連れベビーカーを押すと人混みの中へと紛れていった。
雅臣は自分が怒っているのだと信じ込もうとした。
物のように簡単に捨てた男に対する憤りと、自分の中に甦った過去…。
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北本、、、、ますます嫌なやつに見えてきたですよ。
二度と来るな!!
人間として男として最低な生き物という感じがにじみ出ているようです。
二度と来るな!!
人間として男として最低な生き物という感じがにじみ出ているようです。
甲斐様
おはようございます。(もうこんにちはかな)
> 北本、、、、ますます嫌なやつに見えてきたですよ。
> 二度と来るな!!
> 人間として男として最低な生き物という感じがにじみ出ているようです。
なんでこんなことになっちゃったのかが明かされるのはもうちょっと先の話なんですけど…。
「塩まいとけっ」って感じです。
北本は思いのままに生きていますね。
自分勝手で…。
でも雅臣の中では美化された思い出が存在しているみたいです。
何気ない仕草にふっ、と脳裏をよぎるものがあったようです。
コメントありがとうございました。
おはようございます。(もうこんにちはかな)
> 北本、、、、ますます嫌なやつに見えてきたですよ。
> 二度と来るな!!
> 人間として男として最低な生き物という感じがにじみ出ているようです。
なんでこんなことになっちゃったのかが明かされるのはもうちょっと先の話なんですけど…。
「塩まいとけっ」って感じです。
北本は思いのままに生きていますね。
自分勝手で…。
でも雅臣の中では美化された思い出が存在しているみたいです。
何気ない仕草にふっ、と脳裏をよぎるものがあったようです。
コメントありがとうございました。
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