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BLの丘
策略はどこまでも 27
2009-07-13-Mon  CATEGORY: 策略はどこまでも
カーテンで閉ざされた部屋の中にも、太陽の薄明りが差し込んでくる。
いつも使っている枕よりも硬い感触が頭の下に敷かれ、胸の上にある圧迫感を少々感じて、まだ眠っていたいと思いながら重い瞼を上げれば、目の前で眠りについている高柳の顔が飛び込んできた。
選ばれしパーツを取り揃えたような、整った顔立ちは見ていて飽きることがない。

那智を壁側に置いて眠っているのはいつものこと。高柳の顔には陰影がつけられ、どこかの絵画に描かれた人物のようだった。
その顔があまりにも近い位置にあって、さらに自分が高柳の腕枕によって抱かれ、もう片方の腕で包み込まれていることに気付くと、那智は昨夜の情事を思い出した。享楽する自分が脳裏に浮かぶと、途端に全身を駆け巡る羞恥心でカッと熱くなる。
高柳に向ける密かな想いに気付いてしまったこと以上に、人に見せたくない醜態を晒したようで心臓がドキンと跳ね上がった。

学生時代からシングルベッドの中で並んで眠り、朝を迎えたことなど数えられないほどあったのに、こんなに近くに寄ったことなどなかったはず。
目覚めた時に顔を合わせたくないと思えるシチュエーションがやってくるなど露ほども思っていなかった。
高柳が起きる前に、ベッドの中から抜けてしまおうと咄嗟に思いついた那智は、自分の上に乗った高柳の腕をどかそうとして、二人が全裸でいることを知った。
ふと思い返しても、行為の後にどうなったかなど記憶になかった。ということは、途中で意識を飛ばしたことになる。
尚更抑えることのできない羞恥心に襲われ、何を思うより起き上がろうとしたが腰から響く鈍痛に顔を歪めた。

倦怠感は全身を覆い尽くしていて、体を動かすことができない…。
「…ウ…っ!!」
思わずうめき声が漏れる。
那智からこぼれた声で、高柳の長い睫毛を纏った瞼がゆっくりと上がった。
こんな時ですら、高柳の持つ華やかな顔に見とれる自分がいた。切れ長の二重の双眼、長い睫毛、通った鼻筋、低い声を響かせる唇。
起こしてしまったことを悪いと思いながらも、深い海の底のような視線を向けられれば反らすこともできず、言葉も忘れてその瞳を見返した。
だがそれも一瞬のことで、高柳の逞しい腕が強く那智の体にからみついて引き寄せられた時には、顔が真っ赤になるのがわかった。

直に触れる肌が、昨夜の自分たちをよりリアルに想像させ、那智は恥ずかしさのあまり、腕を高柳の胸に当て突っぱねようとしていた。
「ちょ…っ」
自分たちの置かれている状況をはっきりと認識してしまうと、より一層落ち着かず顔すらまともに見られないというのに、高柳はそうではなかったようだ。
額にそっとした高柳の唇の温かさを感じる。
「もう起きたの?体大丈夫?」
慣れた手つきで背中をさすられ、背骨に沿って指先が腰まで下りていく。那智は奇妙な居たたまれなさを感じた。
恥ずかしいというのはもちろんあったが、こういった状況に慣れきっている高柳の落ち着きぶりがひどく悲しかった。

那智は小さく首を振った。那智の反応に気づいた高柳が少しの距離を置いて覗き込んでくる。うつむいたままの那智の顎を上向かせると辛そうに笑った。
「悪かったな」
その『悪い』は無理矢理体を繋げたと思っているからなんだろうか。謝って終わるつもりでいるんだろうか。
昨夜の情事は高柳の中でどういう風に位置づけられているのだろう。
朝になって、いつもと変わらない素振りを見せられると、全てが夢の中の出来事だったのではないかという錯覚に陥る。それならばそれでいいけれど…。
軽く啄ばむようなキスを落とされた後、再び抱きすくめられ、高柳の掌が腰の辺りを撫でながら彷徨った。

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