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BLの丘
Present 40
2010-03-22-Mon  CATEGORY: Present
鹿沼が料理を作る以上、どうにも鹿沼の家の方が勝手が分かるだけに、雅臣が訪ねることが多い。
二連休の鹿沼とは違って、明日の休みが合うだけの雅臣は、仕事帰りのそのままで鹿沼の家に訪れた。
出迎えてくれた鹿沼と共に、部屋の中から温かく香ばしい香りが雅臣を包んだ。
一人暮らしではまず滅多に目にすることのない春の食材が並んだキッチンには絶句させられた。
鹿沼の料理の腕はこれまでにも充分なほど知らされていたが、まさかここまで…とは…。
筍の御飯、ハマグリのお吸い物、菜の花のお浸し、鯛の煮付け…などなど。
「ねぇ、これ何?」
「あぁ、フキノトウですよ。天ぷらも美味しいって聞いたので作ってみました」
今では鹿沼の家のキッチンに立つことにも抵抗がなくなった雅臣が、準備途中の鹿沼を手伝おうと手を出せば、「先にお風呂に入ってきたらどうですか?呑むんでしょ?」とさりげなく促される。
確かに仕事帰りのままのスーツ姿では寛ぐ体勢に入れない。
もしくは暗に邪魔にされているだけだ。

いつものことに、「お言葉に甘えて」とバスルームに潜り込むものの、なんとなく鹿沼を待たせるようで気が急くのか、ほとんどカラスの行水に近かった。
用意された着替えに袖を通す。
鹿沼の家に雅臣の衣類があるように、雅臣の家にも鹿沼の着替えは保管されている。
雅臣は鹿沼の服でも代用できたが、鹿沼はそういうわけにはいかない。
はっきりいって、どちらに転がり込んでも生活に支障はない現在だったし、そんな些細な事が心が温かくなるほど嬉しかったりする。
雅臣の出てくる頃を見計らったのか、春とはいえまだ出しっぱなしのこたつの上に次々と料理が運ばれてくる。
「この前、いいお酒を貰ったんです。冷酒でもいいでしょ?」

雅臣は呑めるお酒なら何でもよかったから素直に頷いた。
「龍太は?呑まないの?」
氷で冷やされた冷酒専用のとっくりにお酒が注がれて、ぐい呑み用のグラスが雅臣の前に置かれる。
「呑んでもいいですけど…。アルコール入ると、持続性高まっちゃうから雅臣さん、明日寝込みますよ」
しれっと言い放たれてカァァと顔が熱くなった。
官能に犯される雅臣とは逆に、アルコールで麻痺したように、鹿沼は果てるのが極端に遅くなる。
つまり、その間雅臣はただ翻弄されっぱなしということだ。
過去にも何度か経験はしているから、次ぐ日の後悔は分かっていても、飽きることなくそれだけ求められるということは雅臣にとって喜びでもあった。
「の、のみすぎなきゃいいんだよっ!」
「雅臣さんに付き合うと際限ないですからね。まぁいいや。今日はこの一升瓶しか開けませんよ。続き、ありませんからね」
極限まで追いつめられて果てさせられて底無しの泥沼の中を彷徨う、煌々とした時を自ら愉しんでいるとはとても言いたくなかったが、内心ではその時が好きだったりする。
また『厭らしい身体だ』と言われたくない自尊心も追い打ちをかけていたから本音は鹿沼は知らないものの、我も忘れて縋りつく行為は酔ったうえでできることのような気がしていた。
飲む量を制限され、『いや、そんなに呑まないだろう…』と心の中でツッコミを入れてみるのだが…。
返した言葉に、今宵の情事の許可を下したのも同然で。
それは明日はベッドの中で過ごしてもいいという答えを出したようなものだった。

食事の席が始まり、美味しい料理とお酒に下鼓を打ちながら、日常であったくだらない話などに花を咲かせる。
どんな話題にでも違和感なく飛びついてくれる鹿沼とは会話が切れることなどまずなかった。
雅臣はふと思い出したように、「あっ!」とカバンを手繰り寄せた。
脈略の無い突然の行動に鹿沼がキョトンと雅臣の行動を追っている。
「ねぇ、そうだ!龍太にさ、プレゼントっ!!この前、見て、なんとなーく、おまえなら似合うんじゃないかなって…」
取りだしたデパートの包み紙。
たいして大きくはないけれど、それをみせれば鹿沼の表情が硬くなった。
嬉しくない…とかではなくて、緊張…???
そんな鹿沼の反応がどことなく可愛くも見える。

「えっ?!これ?俺に?」
「ん。いつも迷惑ばっかりかけちゃっているしさ…。何にもしてあげられないけど。もらうばっかりだったからたまには…と思って…」
まじまじと見つめられれば照れが交じって言葉がうまく出て来なくなる。
本当はもっとさりげなく渡して、さりげなく受け取ってもらって、さりげなく「ありがとう」って言ってもらえればいいくらいの存在だったのに…。
しみじみと見つめられるから…。「もういいよ、しまって」と言いたくなった。

「ね、開けていい?これ…」
「あとにして。やだ、なんだか恥ずかしい」
「なら、尚更今開ける。すっげー、嬉しい、チョー嬉しいっ!」
一年に一度しかない誕生日プレゼントかクリスマスプレゼントを貰ったような、嬉々とした少年の顔がそこにあった。

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お待たせしました。明け方からこんなの書いていたし…。
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