「と…さん、なに、して…」
後ろ姿だけでもそれが誰なのかは充分分かる。
海斗の声に驚いた『客』は呆然としたように振り返った。
「か、いと…、なぜ、ここに…?」
聞きたいのはこちらの方だ。
すぐに気付いた鳥羽が、「ごめん、帰る」と店員に叫ぶように言って、海斗の腕を掴んだ。
「まって、何?どういうこと?!」
海斗は連れ出されながら、疑問を投げかけたが、鳥羽には完全に無視されていた。
鳥羽にしてみれば、二度と会いたくない…、会わせたくない人間が現れたのも同然だ。
それも、親しくしていた隣人と共に…。
本来ならこの陰に何かがあると核心を抱くのは当然のことだったが、海斗は気付くどころか、人とは違った気持ちを抱いていた。。
「鳥羽っ!!」
駅のロータリーまで引っ張るように連れられて、つかまれた手を振りほどこうと激しく抵抗する。
今見た景色を、もう一度確認したかった。
“それ”が表す意味を理解できない海斗ではない…。
ただ、海斗が確かめたかったのは二人の関係ではなく、何故こんなに近くにいるのに、自分に最初に会いに来なかったのか、というほうだった。
一気に『見捨てられた』という感情がせり上がってくる。
「知ってたの?!」
「知るわけないだろっ!!」
鳥羽なら海斗が苦しまないために、と黙っていたのかと、彼まで疑りだす始末だった。
海斗を『守る』と聞いた言葉が耳に木霊して、堰きとめていた思いが濁流に押し潰されてひしゃげていくようだった。
「あ、れ、…とぅ…さんだよね…?」
まだ釈然としない、と記憶をたどる海斗が顔を歪めた。
人が行き来する中でも鳥羽は海斗を腕の中に押し込んだ。
「わ、すれてくれ…、頼むから忘れてくれ」
耳に響く鳥羽の声すら、遠くに感じる。
父が自分に性のなにやらを教えたことを思えば、それ相応の経験があるのは承知していた。
もちろん、黙っていなければならないこととは自分の性癖を含めて漠然と知っていた。
それでも、母との関係が長く続いたことを思えば、本気で付き合っている人間がいるとも思えなかったし、それでいいと受け止めている自分の考えもある。。
だが、今見た光景は、どう見たって『大人の何か』を偲ばせている。
「う、そ…」
頭を巡らせる海斗に鳥羽は再び願った。
――これ以上、海斗を苦しめないでくれ――…と。
何度も海斗の携帯電話が鳴った。
誰が鳴らしているのか分かるから、戸惑う海斗に、鳥羽が取り上げてしまい電源を切られた。
アパートに辿り着けば、海斗の部屋へとなだれ込むように入れられた。
両隣は当然のように暗闇の部屋だ。
別に父が誰と関係していてもいい、とは頭で分かっている。
母という妻を持ち、息子という自分とも関係がある、特殊な存在。
あの花巻の驚いた顔も脳裏から離れなかった。
それは当然、海斗と父の存在位置を知ってのことなのだろう。
何故それを知ったのか…。
父が話したからなのか…。
裏切られたようだ…。
海斗の部屋に連れられ、ベッドを前にして、海斗はゆっくりとその衣を剥がされた。
「海斗には、俺がいる…」
優しい吐息が肌を滑る。
父に気が削がれたことを、鳥羽が気にするのは当然のことだと思った。
「好き」と打ち明けながら、今でも過去に囚われる自分を、どれほど卑しい人間と思うのか…。
それでも、海斗を想ってくれる…。
優しさは酷であり、嬉しさなのを否定できない。
鳥羽を受け入れたいと望みながら、父から離れることもまだ海斗にはできなかった。
ずるい隙間に自分は落ちた。
「鳥羽…」
「『健太』って呼んで…」
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ここまででした…明日はありません…。
後ろ姿だけでもそれが誰なのかは充分分かる。
海斗の声に驚いた『客』は呆然としたように振り返った。
「か、いと…、なぜ、ここに…?」
聞きたいのはこちらの方だ。
すぐに気付いた鳥羽が、「ごめん、帰る」と店員に叫ぶように言って、海斗の腕を掴んだ。
「まって、何?どういうこと?!」
海斗は連れ出されながら、疑問を投げかけたが、鳥羽には完全に無視されていた。
鳥羽にしてみれば、二度と会いたくない…、会わせたくない人間が現れたのも同然だ。
それも、親しくしていた隣人と共に…。
本来ならこの陰に何かがあると核心を抱くのは当然のことだったが、海斗は気付くどころか、人とは違った気持ちを抱いていた。。
「鳥羽っ!!」
駅のロータリーまで引っ張るように連れられて、つかまれた手を振りほどこうと激しく抵抗する。
今見た景色を、もう一度確認したかった。
“それ”が表す意味を理解できない海斗ではない…。
ただ、海斗が確かめたかったのは二人の関係ではなく、何故こんなに近くにいるのに、自分に最初に会いに来なかったのか、というほうだった。
一気に『見捨てられた』という感情がせり上がってくる。
「知ってたの?!」
「知るわけないだろっ!!」
鳥羽なら海斗が苦しまないために、と黙っていたのかと、彼まで疑りだす始末だった。
海斗を『守る』と聞いた言葉が耳に木霊して、堰きとめていた思いが濁流に押し潰されてひしゃげていくようだった。
「あ、れ、…とぅ…さんだよね…?」
まだ釈然としない、と記憶をたどる海斗が顔を歪めた。
人が行き来する中でも鳥羽は海斗を腕の中に押し込んだ。
「わ、すれてくれ…、頼むから忘れてくれ」
耳に響く鳥羽の声すら、遠くに感じる。
父が自分に性のなにやらを教えたことを思えば、それ相応の経験があるのは承知していた。
もちろん、黙っていなければならないこととは自分の性癖を含めて漠然と知っていた。
それでも、母との関係が長く続いたことを思えば、本気で付き合っている人間がいるとも思えなかったし、それでいいと受け止めている自分の考えもある。。
だが、今見た光景は、どう見たって『大人の何か』を偲ばせている。
「う、そ…」
頭を巡らせる海斗に鳥羽は再び願った。
――これ以上、海斗を苦しめないでくれ――…と。
何度も海斗の携帯電話が鳴った。
誰が鳴らしているのか分かるから、戸惑う海斗に、鳥羽が取り上げてしまい電源を切られた。
アパートに辿り着けば、海斗の部屋へとなだれ込むように入れられた。
両隣は当然のように暗闇の部屋だ。
別に父が誰と関係していてもいい、とは頭で分かっている。
母という妻を持ち、息子という自分とも関係がある、特殊な存在。
あの花巻の驚いた顔も脳裏から離れなかった。
それは当然、海斗と父の存在位置を知ってのことなのだろう。
何故それを知ったのか…。
父が話したからなのか…。
裏切られたようだ…。
海斗の部屋に連れられ、ベッドを前にして、海斗はゆっくりとその衣を剥がされた。
「海斗には、俺がいる…」
優しい吐息が肌を滑る。
父に気が削がれたことを、鳥羽が気にするのは当然のことだと思った。
「好き」と打ち明けながら、今でも過去に囚われる自分を、どれほど卑しい人間と思うのか…。
それでも、海斗を想ってくれる…。
優しさは酷であり、嬉しさなのを否定できない。
鳥羽を受け入れたいと望みながら、父から離れることもまだ海斗にはできなかった。
ずるい隙間に自分は落ちた。
「鳥羽…」
「『健太』って呼んで…」
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ここまででした…明日はありません…。
やっぱりおとうさんとの特別な関係というのは
すぱりと割り切れるものではいのでしょうね
「好きな人」ではないく「おとうさん」を取られたという感覚なんじゃないのかなと思いますけどね
そこには恋愛感情はないのでしょうが
鳥羽さんとしてはここで黙って引き下がれませんよね
すぱりと割り切れるものではいのでしょうね
「好きな人」ではないく「おとうさん」を取られたという感覚なんじゃないのかなと思いますけどね
そこには恋愛感情はないのでしょうが
鳥羽さんとしてはここで黙って引き下がれませんよね
かや | URL | 2010-09-25-Sat 12:57 [編集]
花巻さーん。仮にも探偵なんじゃないの?そこで驚いてどーする(笑)
いくらだって誤魔化しようがあるでしょうにねえ。
誤魔化したら話が進まないのか(^^;)
ジグザグ展開楽しいですねー。
いくらだって誤魔化しようがあるでしょうにねえ。
誤魔化したら話が進まないのか(^^;)
ジグザグ展開楽しいですねー。
よ~く 考えてみると 父さん、あなたって 酷い人だ!
海斗ママにしてみれば グチュグチュの 泥沼...(_ _ii)
妻が 居るのに 義理の息子に 手は 出すわ。愛人?は 同性で おっさんだし・・・
どうか 海斗ママには ばれません様に。。。
(ToT)ゞbyebye☆
海斗ママにしてみれば グチュグチュの 泥沼...(_ _ii)
妻が 居るのに 義理の息子に 手は 出すわ。愛人?は 同性で おっさんだし・・・
どうか 海斗ママには ばれません様に。。。
(ToT)ゞbyebye☆
甲斐様
こんにちは。
コメレスできないままでごめんなさい。
> やっぱりおとうさんとの特別な関係というのは
> すぱりと割り切れるものではいのでしょうね
> 「好きな人」ではないく「おとうさん」を取られたという感覚なんじゃないのかなと思いますけどね
> そこには恋愛感情はないのでしょうが
> 鳥羽さんとしてはここで黙って引き下がれませんよね
海斗にとっては長すぎる日々だったんでしょうか。
まだ甘えたい盛りのお子様です。
父がコロコロと変わったから、余計に、優しくされてまたどこかに行かれちゃったらやだっていう感覚ですか。
鳥羽、ここで海斗を引っ張っていかないと…
コメントありがとうございました。
こんにちは。
コメレスできないままでごめんなさい。
> やっぱりおとうさんとの特別な関係というのは
> すぱりと割り切れるものではいのでしょうね
> 「好きな人」ではないく「おとうさん」を取られたという感覚なんじゃないのかなと思いますけどね
> そこには恋愛感情はないのでしょうが
> 鳥羽さんとしてはここで黙って引き下がれませんよね
海斗にとっては長すぎる日々だったんでしょうか。
まだ甘えたい盛りのお子様です。
父がコロコロと変わったから、余計に、優しくされてまたどこかに行かれちゃったらやだっていう感覚ですか。
鳥羽、ここで海斗を引っ張っていかないと…
コメントありがとうございました。
かやさま
こんにちは。(今言うのも変な気がしなくもないですが)
> 花巻さーん。仮にも探偵なんじゃないの?そこで驚いてどーする(笑)
> いくらだって誤魔化しようがあるでしょうにねえ。
> 誤魔化したら話が進まないのか(^^;)
>
> ジグザグ展開楽しいですねー。
またそのうち舞台裏でも書こうかな…というシーンでした。
花巻の性格も、海斗たちの前と、海斗パパの前では多少変わるところもあるんでしょう。
どちらにしても誤魔化すでしょうね。
コメントありがとうございました。
こんにちは。(今言うのも変な気がしなくもないですが)
> 花巻さーん。仮にも探偵なんじゃないの?そこで驚いてどーする(笑)
> いくらだって誤魔化しようがあるでしょうにねえ。
> 誤魔化したら話が進まないのか(^^;)
>
> ジグザグ展開楽しいですねー。
またそのうち舞台裏でも書こうかな…というシーンでした。
花巻の性格も、海斗たちの前と、海斗パパの前では多少変わるところもあるんでしょう。
どちらにしても誤魔化すでしょうね。
コメントありがとうございました。
けいったん様
こんにちは。
> よ~く 考えてみると 父さん、あなたって 酷い人だ!
一番の被害者は海斗ママですかね。
> 海斗ママにしてみれば グチュグチュの 泥沼...(_ _ii)
> 妻が 居るのに 義理の息子に 手は 出すわ。愛人?は 同性で おっさんだし・・・
>
> どうか 海斗ママには ばれません様に。。。
ママにばれるようなドジは踏まないと思いますが…。
こっちがばれちゃった…。
一番の問題人がパパでしたね…。
さて、どうしようか、この後。
コメントありがとうございました。
こんにちは。
> よ~く 考えてみると 父さん、あなたって 酷い人だ!
一番の被害者は海斗ママですかね。
> 海斗ママにしてみれば グチュグチュの 泥沼...(_ _ii)
> 妻が 居るのに 義理の息子に 手は 出すわ。愛人?は 同性で おっさんだし・・・
>
> どうか 海斗ママには ばれません様に。。。
ママにばれるようなドジは踏まないと思いますが…。
こっちがばれちゃった…。
一番の問題人がパパでしたね…。
さて、どうしようか、この後。
コメントありがとうございました。
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