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BLの丘
秋の夜長に想像したもの8:秋彦 【観潮楼:秋の作品】 最終話
2010-10-21-Thu  CATEGORY: 観潮楼
秋に鳴く虫はなんだろう…と、ふと思った。
コオロギかな…。鈴虫かな…。

自然と入ってくる声音だった。
嫌悪もなく、拒絶もなく、四季が訪れるのと同じように、自然と受け止めてしまえる、『音』。
紛れもなく、誠一の声だった。

今、耳にした言葉を幾度も繰り返す。
不安を幾つも抱えたけれど、やっぱり誠一は秋彦の傍に居てくれるのだと分かった瞬間、堪え切れない涙が誠一のシャツを濡らし、肌まで湿らせた。
「せ、…っちゃんっ…」
一度は離れようとした腕が、誠一の背中に回る。
ぎゅって抱き締めれば、もっと強い力で抱擁された。
「誠っちゃんのこと、好きっ!!僕も好きだよっ!!…ほんとに?!ほんとに僕、迷惑かけてない?」
「ったりめーだろーがっ。あきがいなかったら、俺の人生、ないんだっ」

夢のようだった言葉が鼓膜に響いてくる。
込み上げてくる嬉しさと感動で、秋彦は何を話していいのかも分からなくなっていた。
「いつ、…いつ、こんな汚い僕、捨てられるかって…っ…、こわくて…、ヒックッ」
「あきはめちゃめちゃ綺麗だろっ!あの時、俺、どれだけ、悔しかったか…っ!!あきに辛い思いさせたこと、ずっと後悔してた。もうこの先、絶対に嫌だって…。何があってもあきのそばにいたいってっすっげー、思ったっ」
「僕、ね、ちゃんと、勃つよ…。不能なんかじゃなくて…」
「そういうこと、言うなっ!!マジ我慢できなくなるっ」
怒ったような困ったような誠一の声を聞いた時、一層強く抱き寄せられた下腹部に、硬いものが当たるのを感じた。

「せ…」
紛れもない雄の力だ…。

「分かるか?俺、あきを見ているだけでこんなになっちゃうんだ。いつあきに変態呼ばわりされて嫌われるかって不安だった。一緒の大学行けたら、二人で一緒に住めるって、そんなことばっか考えて…。あきの夢は俺の夢でもあったんだ。いつまでもあきと一緒に過ごせたらいいって…」

経営学を学んで、税理士とか会計士とか、個人で事務所を持てるようになったらいいな…と、秋彦が初めて夢を語った相手は誠一だった。
詳しい仕事内容もまだ分からずに、漠然とした夢だった。
そうなれるまでの道のりも分かってもいない。
おっとりとした性格の秋彦は、サラリーマンとして生きていくには無理があるだろう、ということだけは、なんとなく自分でも気付いていた。
誠一はそこに向かって行けるための成績を着実に作り上げていたのだ。

そこまで深く、長く、秋彦のことを考えてくれていた誠一に、その場の欲求を押し付けようとしていた自分を恥じた。
隙があれば誠一を誘い込むような、淫女のような態度を取っていたと振り返る。
真剣に考えてくれていた誠一に対して、あまりにも下品で失礼で、みっともなかったと後悔した。
こんな自分でもまだ『好き』と言ってくれるのだろうか…。

「誠ちゃん、…ぼく、ごめん…」
「何、謝ってんの」
「だって、僕、…誠ちゃんの、そういうの、なんとなく分かっていながら…、苦しめることばっか…」
秋彦が涙声の中からぽろりと漏らせば、誠一の目が見開かれた。
秋彦だって確信はなかったから、試していた、といっても良かったかもしれない。(口には出せないけど)

同級生の間でも、この歳になればそれなりに卑猥な発言も増える。
中にはすでに経験済みの人間もいたし、どんなシチュエーションが『男心をくすぐるか』的な話題も耳に入った。
果たしてそれが誠一に対して有効だったかは疑問だったが、実行してみてはいた。

真実を知れば、秋彦を抱えたまま、誠一から盛大な溜め息がこぼれた。
やっぱり呆れられたのだろう…と秋彦は途端に心をしぼませた。

「あき…。俺、どんだけ我慢してきたと思ってんの…」
「だから、ゴメン…て…」
「あきがこんなに意地悪だなんて思わなかった…」
「…」

本当に嫌われてしまうだろうか…。
ざわざわとゆれる心を見透かしたように、そっと身体を離した誠一が、秋彦の額に唇を落とした。
それだけでもびっくりしたのに、顎先をつままれて、唇を塞がれる。
初めてのキスは突然やってきた。
そっと触れるだけに留まった。
「俺、今はこれで我慢するから…。一緒に受かろう。合格したら、俺の全部をやる。その代わり、あきの一生を俺にくれよ」

秋の夜、もう肌寒い風が吹くというのに、心に流れたのは間違わない情熱。
未来に向かって闘志を燃やし、沸き立つ想いを心に刻んだ。
見た夢は同じ…。

2010あきエチ
chobon様より絵をお借りしました。
お持ち帰りはご遠慮ください。




―完―
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連続up大変申し訳ございません。
いきなり書けた…。
(って、なんか、続編ありそうな気配なんですけどね…。とりあえずこの辺で区切りを…。)

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コメント

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No title
コメントかや | URL | 2010-10-21-Thu 17:22 [編集]
完結おめでとうございます!
無事、両思いになれて、良かったです~(≧∇≦)
合格したら、大好きな誠ちゃんが貰える(☆☆)ものすっごく効き目がありそうですね♪アキちゃん、頑張りそうです!
イラストは、合格したらこうなれる、的な誠一くんの妄想でしたか☆

テンプレ可愛くなりましたねー。←今頃
表示が早くなりました。私のパソコンの容量が少ないせいなんですが。

「白い色」もドキドキしながら読んでます。
私が代わりにグッサリ言ってやりたいわ。ウガー!
Re: No title
コメントきえ | URL | 2010-10-21-Thu 17:45 [編集]
かや様
こんばんは。
ご一緒していた…????(違うところにいたけど…)

> 完結おめでとうございます!
> 無事、両思いになれて、良かったです~(≧∇≦)
> 合格したら、大好きな誠ちゃんが貰える(☆☆)ものすっごく効き目がありそうですね♪アキちゃん、頑張りそうです!
> イラストは、合格したらこうなれる、的な誠一くんの妄想でしたか☆

やっと終わりましたよ~ぉ。
本当は最初の一話だけだったのに、読者様に『続き』と言われて、『はい、ただいま~ぁ』と書き続けました。
長々続きました…。
chobon様には大変失礼と思いながら、『妄想』でした。
二人の夢が分かった今、秋彦もがんばるでしょうっ!!

> テンプレ可愛くなりましたねー。←今頃
> 表示が早くなりました。私のパソコンの容量が少ないせいなんですが。

テンプレの件は他の読者様にもご指摘いただいたんです。
開けなくなりましたって、もらって、以前使っていたものに戻しました。
かやちゃんも同じ症状だったのかなぁ。
どんな原因があるのか私も分かりませんが、さくさく進んでくれることには心も晴れますよね♪

> 「白い色」もドキドキしながら読んでます。
> 私が代わりにグッサリ言ってやりたいわ。ウガー!

かやちん…(;一_一)
あなたがでてくると本当にグサッてやられるから…。
立ち直れなくなって再起不能?!
(アド様にでもそれで一話書いていただきたいわ)←他人任せ

コメントありがとうございました。
No title
コメントらぅら | URL | 2010-10-21-Thu 17:49 [編集]
きえさん こんばんはぁ~♪

とりあえず。。。←ここ強調しておきます(ニヤw
完結おめでとうございます。
やっと、やっと両想いになれて良かった。

あとは。。。無事同じ大学に合格することですね♪
合格したら。。。( ´艸`)ムププ
楽しみにしてまぁ~す。
Re: No title
コメントきえ | URL | 2010-10-21-Thu 18:06 [編集]
らぅら様
こんばんは~。秋の夜長にご一緒した~♪

> とりあえず。。。←ここ強調しておきます(ニヤw

え?!
さりげなーくリク頂いていますでしょうか…(汗汗)

> 完結おめでとうございます。
> やっと、やっと両想いになれて良かった。
>
> あとは。。。無事同じ大学に合格することですね♪
> 合格したら。。。( ´艸`)ムププ
> 楽しみにしてまぁ~す。

合格した後のこと!!
『幸せに暮らしましたとさ』(←昔話風)

えー?!だめ~ぇ?!
…、らぁちゃんに泣き疲れたら一枚脱がないと…(←それもちがう~ぅ)
いつか、続編、書きたいと思います。
コメントありがとうございました。
No title
コメントきえ | URL | 2010-10-22-Fri 08:02 [編集]
MO様
おはようございます。

>二人で同じ目標を持ち、一生共にするという夢もあるのですから、合格は間違いなしでしょう!そして、その先には・・・。私も来春、期待しています♪

誠一のやつ、変な妄想だけでなく、ちゃんと将来のこと、かんがえていたんですね~。
一緒に頑張っていくと思います。
来春ですか~。
覚えているかなぁ。(←ひどっ)
コメントありがとうございました。
No title
コメント甲斐 | URL | 2010-10-22-Fri 08:42 [編集]
この過激に素敵なイラストから
こんな切なく甘いお話が創作されるとは意外でした

両片想いのすれ違った気持ちが
ぴったりと合った瞬間の二人の驚きと喜びが伝わってきて
こちらまで、よかったーっと肩の力が抜けました

結局イラストのような状況は想像というか希望、あるいは予定って感じのところで終わりましたが、実行したときの報告もほしいな♪と思いました
Re: No title
コメントきえ | URL | 2010-10-22-Fri 12:57 [編集]
甲斐様
こんにちは。こちらにもありがとうございます。

> この過激に素敵なイラストから
> こんな切なく甘いお話が創作されるとは意外でした

あはははは…(´∀`;)
イラストに対して失礼だったような気もしなくもないですが…。

> 両片想いのすれ違った気持ちが
> ぴったりと合った瞬間の二人の驚きと喜びが伝わってきて
> こちらまで、よかったーっと肩の力が抜けました
>
> 結局イラストのような状況は想像というか希望、あるいは予定って感じのところで終わりましたが、実行したときの報告もほしいな♪と思いました

やっと完結しました~。
素直になって話し、お互いの気持ちが聞こえればホッと一安心ですね。
『想像の秋』でしたからね…。
つ、つづき、ですか…。
実行できる日がくればいいと思います。
コメントありがとうございました。
No title
コメントa | URL | 2010-10-23-Sat 10:18 [編集]
完結おめでとうございます。
可愛らしい2人の姿に胸が温かくなりました~!
アキちゃんもこれで、一層受験勉強頑張れますね^^
良いお話でした。また機会がありましたら続編見たいです。
ありがとうございました♪
Re: No title
コメントきえ | URL | 2010-10-23-Sat 11:12 [編集]
a様
こんにちは。

> 完結おめでとうございます。
> 可愛らしい2人の姿に胸が温かくなりました~!
> アキちゃんもこれで、一層受験勉強頑張れますね^^
> 良いお話でした。また機会がありましたら続編見たいです。
> ありがとうございました♪

ずっと二人を応援していただきましてありがとうございました。
気持ちも伝わったし、二人で目指す目標もはっきりとしたし。
俄然やる気になってくれるでしょう。
続編、ただいま考え中です。
コメントありがとうございました。
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