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BLの丘
想像と理想と現実 2
2010-10-30-Sat  CATEGORY: 観潮楼
この作品は以前【観潮楼企画】『秋の夜長に想像したもの』の続編にあたります。
しかし今回、観潮楼のお題とは関係のない季節と内容になっておりますので、この話は【観潮楼参加作品】としてはupいたしません。(目次だけは並べて置いておきます)
リクエストを頂き、あまりお待たせするのもどうかと思って現時点でのupとさせていただきました。
観潮楼の規約に基づき、イラストの掲載もありません。どうぞご了承ください。





掲示板の前にはすでに人だかりができていた。
誰もがほんのわずか数分後の未来に、不安を隠せないでいる。
誠一と秋彦も、繋いだ手を離すことなく、寄り添うようにして、寒い中刻一刻と時を待った。
周りには同じように家族や友人を携えて、掲示板をいまかと待つ人で溢れかえっていた。
誠一は、その瞬間まで秋彦の手を離そうとはしなかった。

それから張り出された結果…。

その時の沸き立つ感動を何と表現したらいいのだろうか…。
掲示板に張り出された受験番号を、自分のはもちろん、秋彦のだって頭の中に記録されていた。
二つの番号が同時に視界の中に飛び込んでくる。
繋いだ手に、一層強く力が籠った。
喜びを噛みしめるまでに、幻か?嘘ではないのか?と一瞬の戸惑いが流れるものの、次の瞬間には秋彦の手を離れ、細い身体が誠一の腕の中にあった。
「やったーっ!!やったよっ、あき~っ!!合格だっ!!さすがあきだっ!!」
「ほ、んとに…?ほんとに、誠ちゃん…」
勢い余って秋彦の体を抱きしめてしまったせいだろうか。
まだ自分の目で確認していないといったおっとりな秋彦が震えながら誠一の背を掴んだ。
緊急事態にはどうしたって出遅れる秋彦の性格や反応を誠一は良く知る。
胸の中に抱きこんだ腕を腰にまわして振り返らせ、「ほら、見てよ」と、その感動を秋彦にも味合わせた。
一歩遅れて、確認した秋彦が、嬉しさのあまりに涙を淵に溜めた。
「誠…っちゃん…」
「もう、一緒だ。絶対にあきを離さない…」
合否の結果に、それぞれが涙を流しあう中、誠一と秋彦は人目も憚らず、その場で熱い抱擁を重ねた。
待ちに待った時がようやく、訪れたのだ…。
夢へと近付く第一歩目の切符をようやく手に入れた瞬間だった。

ホテルに戻って、興奮からどうにかふたり落ち着いたところで、親への報告を済ませる。
どちらの親も涙声で、母親と父親と代わる代わる受話器を交わした。
秋彦の母は思い詰まって言葉がうまく発せなかった。
「せ、…せ、ちゃ…、ほんと、に…ほんと、に、ありがと、ね…。たらないところは、…どれだけだって私たちが協力するから…。秋を…」
『静香さん…』
両家の両親が同じ空間にいるのは、同時に聞こえた声で判断がついた。
誠一と秋彦が、朝の早い時間に顔を合わせた頃から、たぶん、この連絡を待っていたのだろう。

二人はさらに、両家との挨拶まで済ませた。
『一緒に住む』
最初にそう告げたのは誠一だった。
「二人で別々の部屋を借りたら割高だし、ルームシェアっていうのも流行っているんだ。あきとだったら問題ないだろ?変に相手を勘繰る必要もないしさ」

秋彦の両親にとっては願ってもいないことだった。
もちろん、生活の全てが把握できるように委ねられるわけではないが、少なくても秋彦のことを知っている人間が傍に居てくれる…。
どれだけ心強いことか。

「絶対に護りますから…」
研ぎ澄まされた言葉を最後に、誠一は通話を切った。


改めて向かい会った二人は、どちらからともなく手を伸ばした。
幾度もその体温を感じるくらい近くにいたけれど、今、触れるものは、決して他人には譲らないと誓える思い。
ただ触れるだけではない、激しくぶつかり合う唇に、少しの痛みはあったけれど、続けられる舌を絡め合う口付けに、新たな一歩を踏み出したことを強く感じた。
少しだけ離れた隙間で「あき…」と囁かれる。
「せい…」と答える…。

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