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BLの丘
白い色 8
2010-10-26-Tue  CATEGORY: 白い色
ほとんど連れ去られるように大翔の車に乗せられて、家に寄れば必要な『お泊まり道具』を素早く手にされ(美祢の家の中については把握済みの大翔が即座に揃える)、国分寺家へと御招待された。
車の中でかいつまんで、北野との事の流れを説明すれば、激怒した大翔が声を荒げた。
「秀樹さんってそういうこと、する人だったわけ?!よくも、図々しく俺のとこに美祢の様子を聞きに来られたよなっ」
美祢のために憤慨してくれる大翔の態度も有り難かった。
国分寺家と北野の付き合いも、それなりに深いものがあるはずだ。
大翔だって、信頼できるから美祢を預けてくれたのだとも思う。
冷静になって考えた今、あんな終わり方になってしまったが、それまでは良くしてもらった思い出ばかりだ。
いい夢が見られた…というべきか。
きっと、彼なりに、何か事情があったのではないか…、そんな風に思えるようにもなっていた。
だから、今でも連絡を取りたがるのだろうか…。
その疑問を大翔に問いかけはしなかったが。

国分寺家の玄関をくぐると、社長夫人である春代(はるよ)が出迎えてくれた。
髪の全てをまとめて頭上に結い上げ、洗練されたメイクを施した姿は華やかさはあるが派手ではない。
「美祢ちゃん、久し振りね~ぇ。ムサイ男ばかりの家だから、美祢ちゃんが来てくれると花が咲いたようでうれしいわ~」
ぎゅーっと抱きこまれるのはいつものことだった。
家族を『ムサイ男』と言い表されて、自分も男なんですけれど…と内心で呟いている。
花柄のエプロンをひらひらとさせる春代に大翔が「風呂は?」と問いかけた。
「用意出来てるわよ。うちの人たちは、いつも帰ってくると真っ先にお風呂に入りたがるから」
「工場の中、湿気がすごいからベタつくんだって。美祢、一緒に入ろ。夕飯、部屋で食うから」
「あら、そうなの?」
「え?おじさんは?」
「オヤジなんかに付き合わせたら俺と美祢の話なんか何もできないだろ」
ここに来て美祢は、全ては大翔の計画だったことを知った。
『社長』の名前を出すことで、大翔と一緒に帰らせたのだ。

春代に聞かせるわけにはいかないが、意思表示でぷうっと膨れた頬を大翔にツンとつつかれる。
それから腕を取られて一度荷物を大翔の部屋に置き、二人で浴室に向かった。
国分寺家の浴室は、美祢の家のものよりもずっと広いので、大人が二人で入っても窮屈に感じない。
実際、今でも社長夫妻は時折一緒に入っているようで、美祢と大翔が一緒に入ると言っても春代は違和感も持っていなかった。
幼い頃から繰り返されたことに、美祢自身も抵抗がない。

不思議と大翔を『男』と意識したことはなかった。
共に過ごしてきた友人であり、兄弟のようでもある。
だからこうして一緒に入浴もできたし、抱きしめられることもキスも友情表現の一つだった。

「美祢、洗ってやるよ」
椅子に座った美祢の背後に立った大翔がシャンプーを泡立てて美祢の濡れた髪の間に指を潜り込ませた。
「大翔の指って、気持ちいいよね。マッサージされているみたい」
「いつも繊細な『おとうふ』を扱っておりますので」
「大翔が持ったらぐしゃって潰しそう(笑)」
「怪力みたいに言うなよ…」
揉みこまれるような洗われ方は、美祢は嫌いではなかったから素直に身を任せる。
まだ小さかった頃は、駆と3人で良く入ったものだ…と、ふと思い出した。
駆の姿が頭を過れば、連鎖的に北野を思い出した。
駆と北野が友人である関係から、いつか、嫌でも顔を合わせる時が来るような気がする。
その時に自分はどんな顔で北野と視線を交わすのだろうか…。
北野にどのようにみられるのだろうか…。

「美祢って豆腐に似ているよな」
シャワーで泡を流されている時だったから、大翔が何を言ったのか、良く聞き取れなかった。
流れてくるお湯のせいで、目も口も閉じたまましばらく過ごした。
お湯が止まるのと同時に「何?」と聞き直す。
「ん?美祢は豆腐に似ているって」
「豆腐?なんで豆腐?」
大翔の言う意味が全く分からず、キョトンと振り返って見上げる。
壊れ物を扱うように、大翔は美祢の首筋から手を当てて背中を撫でた。
「色、白いし、キメは細やかだし。些細なことでぼろって崩れるくせに、ちょっと水抜きしてやればしっかりと形を保つ」
「それ、褒めてんの?」
「当然だろ」
だけど表現のされ方がなんとなく気に入らなくてまた唇を尖らせてしまう。
それからすぐ、背中を温かな肌で覆われた。
肩越しに伸びてきた大翔の腕が美祢の胸の前で組まれる。
「美祢を傷つける奴は絶対に許さない。秀樹さんが何を言いたいのか知らないけど、場合によっちゃ、兄貴にも縁切ってもらうつもりでいるから」
本当にそんなことができるわけがないとは分かっているけれど、大翔なりに精一杯、美祢を想ってくれる気持ちは伝わってきた。
愛情よりも友情のほうが、もしかしたら強い『きずな』なのかもしれない、と美祢はふと思った。

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どこまでオープンなんだ、この二人は…。
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コメント

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No title
コメント | URL | 2010-10-26-Tue 15:22 [編集]
MO様
こんにちは

>誰からも可愛がられ、愛されてる美祢ですね。自分の事を理解してくれて、そばで守ってくれる頼もしい存在なんて、羨ましいですね。彼らは、この後も恋愛抜きの存在なのかどうか?今後の展開が、楽しみです♪

なかなか展開が進まなくて私のほうがいらいら?
でもそれなりに状況説明は書き加えていた方がいいかなってむだな話が増えているようです。
美祢はかわいがわれております。
大翔と美祢の関係…。うーんっ。
ナゾ!!
楽しみにしてもらって本当にありがとうございます。
コメントありがとうございました。
No title
コメントかや | URL | 2010-10-26-Tue 15:28 [編集]
北野の腹積もりが全然わからないです。
仕返しでも企んでるんじゃ?なんて考えてしまいますね。
別れたかったのか、別れたくなかったのか・・・。
ハッキリしない男ってイヤだなあ。
Re: No title
コメントきえ | URL | 2010-10-26-Tue 17:43 [編集]
かやちゃん
こんばんは。

> 北野の腹積もりが全然わからないです。
> 仕返しでも企んでるんじゃ?なんて考えてしまいますね。
> 別れたかったのか、別れたくなかったのか・・・。
> ハッキリしない男ってイヤだなあ。

北野っち、はっきりしないですね~。
この後、少しくらいは判明するかと思うので気長にまってやってください。
はっきりしない男、いやですよねー。
せせらぎですいません、濁流にしたいです。
コメントありがとうございしました
管理人のみ閲覧できます
コメント | | 2010-10-26-Tue 17:50 [編集]
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Re: こんばんわ
コメントきえ | URL | 2010-10-26-Tue 18:20 [編集]
uちゃん
こんばんは。

レス不要と言われながら何故か書きたかった。

プロットないです。
いきあたりばったり。
あまりメモφ(..)メモメモとってないでね…

好きになる男のタイプは人それぞれですね~。
コメントありがとうございしまた。
No title
コメント甲斐 | URL | 2010-10-26-Tue 23:15 [編集]
『何か事情があったのではないか』だなんて、二股掛けられた挙句しつこいストーカーされる事情なんか考慮する美祢のお人よし加減に呆れつつも、こんないい子には幸せになってほしいって思います
「もしかしたら」と、いい思い出ばかりの恋した人がまた戻ってくることを心のどこかで期待してるのかな
嫌いにはなりきれないのが切ないですねぇ
Re: No title
コメントきえ | URL | 2010-10-27-Wed 07:26 [編集]
甲斐様
おはようございます。

> 『何か事情があったのではないか』だなんて、二股掛けられた挙句しつこいストーカーされる事情なんか考慮する美祢のお人よし加減に呆れつつも、こんないい子には幸せになってほしいって思います
> 「もしかしたら」と、いい思い出ばかりの恋した人がまた戻ってくることを心のどこかで期待してるのかな
> 嫌いにはなりきれないのが切ないですねぇ

美祢、どこまでお人よしなんだか…(/_;)
よりを戻すことは考えていないです。
でも思い出としてとっておく…そんな感じでしょうか。
嫌いにはなれないんでしょう。
たとえ戻ってきても許さないコワーイお兄さんが追い払いそうですね。
コメントありがとうございました。
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