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BLの丘
白い色 11
2010-10-29-Fri  CATEGORY: 白い色
ブルブルッと震える身体を大翔が抱き直してくれる。
そこには「心配しなくていい」という雰囲気が嫌と言うほど含まれていた。
それをみてますます駆の溜め息が深くなる。
駆に向けた頬を、大翔の胸の中に押し戻される。
「『言い分』?!ふざけんじゃねーよっ!!」
「俺も今回の件は秀樹を責めた。これは人としてやるべきことじゃないだろ」
「分かっているんだったら何で肩を持つ?!」
「肩を持つつもりはない。ただ、美祢ちゃんのことも聞きたかったんだ」
美祢が飲んでいたグラスに日本酒を注いだ駆は、そのままグラスを口につけて空けた。
何かを吐き出したい気持ちがあるのがはっきりと分かる。

怒りで目の前が見えなくなっている大翔を、美祢がぎゅっと抱きしめることで押さえた。

「美祢ちゃん、秀樹に本気じゃなかったんだろ?」
突然問われた言葉の意味を、美祢は理解できなかった。
自分はずっと北野を想い続けていたと疑っていなかった。
差し伸べられる手に一喜一憂し、囁かれる言葉に胸を躍らせた。
これを『恋』と呼ばずに何と言うのだろう…。

「兄貴」
「おまえはちょっと黙っていろ。…秀樹ももう随分前から気付いていたんだよ。美祢ちゃんは決して秀樹とは並ぼうとしない。秀樹はいつも虚無感を抱えていた。一緒に居ながら同じ世界を生きられないことに絶望を味わっていたんだ。共に生きることを最初から拒否した人間は、どれだけ思っても近付いてこない。誘ったのが自分だから待つ気でいたらしいが、美祢ちゃんは変わることがなかったって、な。
自分には表面上しか寄り添おうとしないのに、明らかに自分に向けるものとは違って、当たり前のように並んで心も肌も許す人間がいる。話を聞いた時に、すべての原因が大翔にあることを知った。無意識でやっていることは理解できても、それがたとえ『親友』という立場だったとしても、秀樹には重い壁だったんだ」
美祢は目を見開いた。
自分が『釣り合わない』と常に意識を向けたことが、北野を追い詰めていたのか…。
そんなふうに北野が感じていたなど全く気付いていなかった。
大翔との接触が『恋愛事情』に大きな影響を及ぼすとも思ってもいなかった。
なにより、北野との全てが『恋』ではないと言われたことのほうがショックで…。
自分が抱えていた想いはなんだったのだろうか、と改めて突き付けられる。
同時に北野を失えても、大翔を失うことは考えられず、大翔に依存している自分に初めて気付いた気分だった。
だけどそこに、北野に寄せたような恋心は微塵もない。

「当時秀樹が継ぐ会社は資金繰りに困窮していた。昔からの取引先だった銀行の頭取の娘と縁を作ることで援助を約束されたんだ。会社の半分を売るようなものだ。今ではだいぶ持ち直しているが。だからといって、秀樹は会社の為に身を捧げるような奴じゃない。結局1年ほど相手と付き合いながら考えていたそうだ。先の見えない将来に期待するよりも、確実な道を選んだ。その間、美祢ちゃんとのことをはっきりさせられなかったことは秀樹自身の不実としか言いようがない。
最後美祢ちゃんと連絡を絶っていたのは心の整理をつけたかったからなんだろう。だけど先に誤解を与えた。
美祢ちゃんが会った人間はその家族(弟)らしい。彼は美祢ちゃんの存在を知っていたんだな。別れられなかった自分が悪いとは言っていたが、秀樹の立場から勝手な勘違いを起こした彼が酷い言葉を放ってしまったこと、もっと早くに話をつけるべきだったと秀樹本人も悔いていた。美祢ちゃんから最後の返事をもらえなかったことで、今日決断したそうだ」
「そんな馬鹿な話があるかよっ!!美祢の気持ちなんか無視か?!正当化してんじゃねーぞっ!!」
「美祢ちゃんは最初から『北野』に収まる気はなかった。全ての原因であり結果だよ」

駆の言うことは正しかった。
北野の想いを受け止めていながら、心の隅では拒絶していた…。
生きていく世界が違うとか、生活感にズレがあるとか…。
無理が生じる生活が分かるから、いつも諦めていた。
だからこそ、すんなりと受け入れられた『別れ』。
最後に会った居酒屋で抱いた感情は、嫉妬よりも酷い言葉を投げつけられた『悔しさ』だった。

北野の行動を振り返る。
与えられる高価なプレゼント。
連れられて行った生活感のないマンション。
かけ離れた世界を見せることで、美祢からの別れ言葉を耳にしたかった…。
自分からは振れない、情けなさだ。

そんな行動を取らせてしまった美祢の方が後悔していた。
耐えきれずに美祢は大翔のシャツを掴んだ。
「ひろと…」
掠れる声が美祢の口から洩れた。
お互い、傷つけあうだけの恋だったのか…。

美祢の声を聞いて、駆は北野が告げた言葉を反芻し、その正しさを知った。
『…あのふたりは離れない…』

どんな恋人に出会おうが変わらないだろう。
出会った恋人をただ傷つけるだけだ。
それが分かった時、駆は美祢に対して、思っていたことを告げた。

「美祢ちゃん、俺と付き合うか?」

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今日も?!お兄様っ!!\(◎o◎)/!
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コメント

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複雑になりそう・・・
コメントけいったん | URL | 2010-10-29-Fri 01:41 [編集]
美祢と 大翔は 傍から見ると 友情以上の関係なのかも。
大翔に依存する美祢と そんな美祢を 限りなく許し受け止める大翔...
恋人が そんな二人を見たら 自信喪失ですもんねー

駆の告げた言葉は 美祢を 好きだから言った言葉には 思えませんが、その真意は?

きえ様、ご無沙汰です。 作品を読んでますが ポチ逃げばかりです。 ごめんなさい。久し振りのコメに 緊張~(^^:)ゞbyebye☆
No title
コメントmiki | URL | 2010-10-29-Fri 03:09 [編集]
ええっ、まさかの展開(@_@) 私もけいったん様と同じくお兄さんが本当に美祢を好きだから言ったのではないとは思ってますが、どんな考えがあるのでしょう?
美祢と大翔の関係が北野を傷つけていたなんて、ある意味2人はショックですね。そんなつもりがなかっただけに…

ココで書いても仕方ないかもしれませんが、けいったん様勝手に名前を使ってしまってスイマセン<m(__)m>
Re: 複雑になりそう・・・
コメントきえ | URL | 2010-10-29-Fri 07:17 [編集]
けいったん様
おはようございます。

> 美祢と 大翔は 傍から見ると 友情以上の関係なのかも。
> 大翔に依存する美祢と そんな美祢を 限りなく許し受け止める大翔...
> 恋人が そんな二人を見たら 自信喪失ですもんねー

ふたりはねー。仲良すぎちゃっているんですよね。
恋人の前でも堂々といちゃいちゃ(本人たちは無意識)してそうだし。
真っ先に頼るのは『親友』とくればやりきれないでしょう。

> 駆の告げた言葉は 美祢を 好きだから言った言葉には 思えませんが、その真意は?

兄ちゃん、本気なのか?
何かの意図があって…?!
さて…。

> きえ様、ご無沙汰です。 作品を読んでますが ポチ逃げばかりです。 ごめんなさい。久し振りのコメに 緊張~(^^:)ゞbyebye☆

お忙しいなかわざわざコメントまで残してくださいましてありがとうございました。
Re: No title
コメントきえ | URL | 2010-10-29-Fri 07:21 [編集]
miki様
おはようございます。

> ええっ、まさかの展開(@_@) 私もけいったん様と同じくお兄さんが本当に美祢を好きだから言ったのではないとは思ってますが、どんな考えがあるのでしょう?
> 美祢と大翔の関係が北野を傷つけていたなんて、ある意味2人はショックですね。そんなつもりがなかっただけに…

ははははっ…(^_^;)
まさかの展開、すみません。
兄ちゃん、何考えてんだか…。
大翔はともかく、美祢はそういう細かいこと、気にしちゃうような子なので。
今回の北野とのことが今後に影響しなければいいんですけど。
コメントありがとうございました。
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