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BLの丘
白い色 13
2010-10-31-Sun  CATEGORY: 白い色
菊間の質問に、美祢がそれこそ意味が理解できないとキョトンとすれば、一瞬考えるように菊間が動きを止めた。
「あー、ごめん。俺、そっちのことって良く分かんないから。普通に誰でも対象になるのかと思ってた」
ノーマルの人間にすれば、相手を探す基準値なんて想像ができないのは分かる。
大翔との親しさを考慮すれば当然湧く疑問なのだが、生憎、美祢には大翔に対しての恋愛感情は皆無だ。
それは大翔も同じだと思っている。
付き合う意味での『抱く、抱かれる』が、全く想像できないのだ。
美祢は静かに首を振った。
「ううん。僕こそ、こんな話をしちゃってごめんね」
気持ち悪いとか思われないだけ良いはずである。

それから美祢は食べるわけでもなく、どんぶりに入ったきのこ蕎麦を箸先でつついた。
「大翔とはなんてゆーかさー。”そういうこと”できるって考えられないんだよね…」
「"そういうこと”?えっち?」
単刀直入に質問されて美祢はボンッと赤くなり視線を伏せた。
美祢の反応で答えを貰った菊間は、まぁなんとなく理解できるかな、と頷いた。
男女間だって、好みというのはあるし、全ての女を抱きたいと思うわけではない。
「けどしょっちゅうその辺でイチャイチャしているじゃん。”そういうこと”したい感情とは別なわけ?」
「そんなの当然じゃんっ。それにイチャイチャなんかしてないしっ!」
言い切るあたり、強者だと菊間は内心で思ったが口には出さなかった。
きっと大翔に聞いても同じ答えが返ってくるのだろう…。

「で、常務ならいいわけ?」
美祢は俯いたまま、また蕎麦を箸でいじった。
「わかんない。でもそういう気持ちをもったら転がっていける感覚はある」
そう、美祢の中で大翔と駆に対して持てる違いはそこだった。
具体的に言葉に表すことは難しかったが、駆との逢瀬は想像できるのに、大翔とはただの会話なのである。
あくまでも駆は『他人』だった。
「ま、美祢がそれでいいっていうのなら別に俺が口を挟むことじゃないし。でもさー。そんなことになって副工場長は何も言わないの?」
「別に。最初だけ、なんか、猛反対したけど、今はそんなに。…でもいつもだよ。僕が『○○と付き合うことにした』って言えば『大丈夫か?』って聞かれて、その後は放っておかれるし」
余程悪い噂でも耳にしない限りは止められることはない。
その辺りは美祢の意思を尊重してくれているのだと思っていた。
ただ、必ず一度は会わせろと強要はされたが…。
その点、駆とは兄弟という、お互い知り過ぎた仲なだけに、確認する必要もないのだろう。

兄弟ともなれば多少の抵抗を持ってもいいものではないかと菊間は思わず考えてしまうのだが、考え方はどうも異なるらしい。
「はぁ、そんなもんですか…。…余談だけど、副工場長って今付き合っている人、いるの?」
突然何だろう?と思いながら美祢は正直に首を振った。
「今はいない、かな。昔営業やってた頃はしょっちゅう相手、変えてたけどね」
「何で?」
「さぁ、そんなの知らないよ。『性格が合わなかった』とか『好みじゃなかった』とか色々聞いたけど」
「まさかとは思うけどさ、その相手、美祢、全員会ったことあるの?」
「うん。いつも紹介されるから」
菊間は頭を抱えたい気分になるのをかろうじて堪えた。
『無意識』もここまでいけば恐ろしい。
振ったか振られたかはともかく、原因は『美祢』にあるのだろう…。
それにたぶん、大翔の基準値は美祢なのだ。
営業に出ていれば出会う数も増える。
大翔の容姿をもっていれば声を掛けられる数も半端ないのも合点がいく。
社内に籠る今だから余計に美祢を構うのか…ともたやすく浮かんでくる。
そんな二人が、どうしてそれ以上の関係になれないのか、菊間にはやはり疑問でしかない。
かといって、重ねて問うたところで返ってくる答えは変わることがないし、本人たちもその先を望んでいないのだろう。

食事を終えて社屋に戻り、コーヒーでも…と二人で給湯室に向かえば、ぱったりと駆と出くわした。
即座に居辛さを覚えた菊間の空気を感じ取った美祢は、「貴宏さん、持って行ってあげる」と”年配者”を気遣った。
駆にしてみれば『常務』という存在が窮屈に感じられるのだろうという感覚でしかない。
美祢もまさか菊間に打ち明けてしまった、とは言いづらかった。
「うん、じゃあ」とその場を去っていく菊間の背中を見送った。
駆が美祢のコーヒーカップを用意してくれる。
その隣で美祢が菊間のカップを取り出した。
「社食にいなかったけど、二人でどこかに行っていたの?」
コーヒーのデカンタを持った駆が静かに問いかけてきた。
美祢と菊間の仲の良さも事務所内では知れ渡っていることだった。
改めて問われて、少しだけ後ろめたさが湧く。
「うん、前のお蕎麦屋さんに…」
「そう。じゃあ今度は俺と行こうか」
「そ、そんなことしたら…」
「何?」
半分からかわれているような気もしなくない。
平社員が常務などと…と戸惑いを見せる美祢に、だけどいたって真面目な表情で、駆は言葉を続けた。
「今夜あたり、夕食でもどう?」
それは、国分寺家で奇妙な”告白”をされてから、初めての誘いだった。

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