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BLの丘
白い色 12
2010-10-30-Sat  CATEGORY: 白い色
再び酒瓶を傾けてグラスに注いでいた駆から、突拍子もない台詞が吐かれれば、美祢は意味が理解できずに思考が停止した。

…誰と誰が付き合う…???

「ふざけんなよっ!!何馬鹿な事、言ってんだっ!!」
すぐに大翔が反撃に出た。
興奮し続ける大翔とは対照的に駆は落ち着いた態度のままだ。
「馬鹿なことでもないだろう。美祢ちゃんが今フリーで俺も気に入っているとなれば誘いをかけて何が悪い」
「だからって何で兄貴なんかにっ!」
「じゃあ、誰ならいいんだ?」
「美祢を大事にしてくれる人に決まってんだろ」
「俺だって美祢ちゃんのことは大事に思っている」
「ちょ、ちょっと待って!駆くんっ!!」
…どこまで本気なんだ…???
駆が男を相手にできる人種だなんてこれっぽっちも思っていなかった。
それだけでも充分な驚きである。
酔っているわけではないし、勢いで冗談めいたことを言う性格ではないのも承知している。
兄として憧れるところはあるが、それが恋愛感情に発展するかと考えれば疑問である。
とはいえ、これまでの美祢の付き合い方は、相手から誘われ付き合っているうちに感情が追いついてくるというパターンばかりだった。
もちろん、そんなに多くの人間と付き合った経験があるわけではないが、一緒にいれば情も移る…といった感じだ。
結局最後は振られる結果になるが、その原因は今駆に説明されたことが理由だろう。

「なんで、僕なんか…」
「『僕なんか』?おいおい、本気で言っているのか?美祢ちゃんほどをもってそんなことを言われたら他の奴らは何て発言すればいいんだ?」
「自分がそれに釣り合うと思っている兄貴の方が身のほど知らずだろう」
美祢の質問はどこかはぐらかされたようで、困惑は大きくなる一方だ。
真剣に声をかけられているというのであれば、こちらもきちんとした答えを出してやるのが筋というものだろう。
駆のことを嫌っているわけではないし、駆のことだから、無理に強要してくることもないと思う。
今までの付き合いに少しの親密さがプラスされるだけでいいような気もしなくない。
だけど、本当にそれを『付き合う』と言えるのだろうか…。
そんなもので満足されるのだろうか。
「おまえはいちいち煩いよ。まぁ今は秀樹のこともあったしいきなり気分を切り替えて考えられることじゃないだろうけどさ。少しくらいは頭の隅に置いておいてよ」
北野が取った行動の全てを白状してしまえば、駆には開き直ったような態度が見え隠れした。
「美祢ちゃんの性格ならもう充分なくらい理解しているしな。それとも俺に”抱っこ”をされるのは嫌か?」
揶揄されて、美祢は改めて自分の今の状況に視線を下ろした。
先程言い当てられたばかりだというのに、美祢はまだ大翔の膝の上から降りていない。
慌てて大翔から離れようとするのを、「みね~ぇっ」と大翔に押し留められる。

それを見ながら駆がフッと口角を上げた。
「あぁ、おまえたちの”それくらい”は充分許してやるよ」
やけに恐ろしく寛容な”告白”だった。



「意味がわからん」
会社近くの蕎麦屋で向かい合わせに座った菊間が、ランチの天麩羅蕎麦とかつ丼のセットを頬張りながら溜め息をつく。
美祢は他人事のように、『相変わらず良く食べるな~』などと頓珍漢なことを思っていた。
体格を思えば納得もいくのだが…。
美祢と菊間が話していた内容は美祢のことだった。

美祢はこの1カ月ほど、駆にかけられた言葉に返事をすることはなかった。
嫌でも社内で顔を合わせるために美祢はぐるぐると頭と心を悩ませていた。
肝心の駆はそんな美祢を見ても人前では普段通りでこれまでと変わることはない。
あれは本気のことだったのだろうか…と給湯室で溜め息などをついていれば、さりげなく隣にいたりして優しさを見せられる。
そんなところは確かに今までと違ってはいたが…。
大翔との関係を知る社員は当然駆とのことも承知しているので、多少の歩み寄りは今更気にされていない。
寧ろ、大翔の時のように意識的に目を向けられないだけ、他の社員と話をしているのと同じ感覚だった。
美祢は返事を先延ばしにしていることに、日を重ねるごとに曖昧にするのは失礼になると思い始めていた。
そう思えるほど、自然と駆との関係が親密さを増していたのだ。
それが余計に美祢の中で渦巻いて心を締めつけてくる。
駆と付き合うことに抵抗がないと感じ始めているのも正直なところだ。

思い悩む日々の美祢に気付かない菊間ではなかった。
いつもならば社員食堂で食べる昼食、心配した菊間に誘われこうして社外へと足を向けている。
当然社内で話したい内容ではない。
信頼を持って、ぽつりぽつりとあれからの出来事を話してしまえば、あからさまに不思議な顔をされた。

「美祢ってば、逆玉狙いなの?ってか良くもこう、上流階級の人間が集まってくるよな~」
それは感心なのか呆れなのか…。
自分の意思ではないと、例のごとく美祢が唇をとがらせれば、いたって真剣な眼差しが美祢に向けられた。
「ところでさー、何で美祢は副工場長とそういう関係にならないの?」
最大の疑問だと、目の前の瞳は語っていた。

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コメント

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コメントきえ | URL | 2010-10-30-Sat 10:51 [編集]
MO様
こんにちは。

>私も菊間が言ったことは疑問でした。大翔は男性を恋愛対象にすることは無いからなのか?自分の気持ちに気づいてないからなのか?駆は本当に美祢を恋愛対象として見ているのか?大翔と美祢の心を試す為に言ったのか?そして菊間の存在も・・・気になることだらけです。更新を楽しみにしています♪

ナゾだらけの連中ですね(^_^;)
すみません、何も答えられなかった…。
今後のお話の展開の中から少しずつ答えを見つけていってください(←いい加減だなぁ…)
あ、でも大翔、同類ですから。
そこがまた問題で…。
コメントありがとうございました。
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