成俊は栗本と佐貫のはからいで職場を3日休んだ。
離婚がらみの不安定な精神からくる心の病と、表向きの理由は用意されていた。
医師からの診断というものに、会社側も譲歩を見せてくれる。
今までの勤勉な態度も評価されてのことだった。
ずっと佐貫の家に居座ってしまったことも心苦しかったが、佐貫はなかなか成俊を外に出そうとはしなかった。
お互いに言葉を避けているのに、望むものをくれる。
冷えた家庭と似ているようでありながら、存在するものは対照的な温かさだった。
その居心地の良さに溺れそうになる…。
大事を取って寝室で与えられていた食事も、一人で動けるようになればリビングに移動するし、栗本が来れば嫌がらずに身体も見せる。
過保護ともいえる状況なのに、栗本は佐貫の行動を何一つ否定しなかった。
それが、尚更過去の、佐貫の苦痛を裏付けているようだった。
二度と同じ目には合わせない…。
成俊を守りながら、佐貫をも護る周りの気遣いに、譲原の言葉が甦って来る。
…『ずっと見ていた…』…。
ただの『好き』などではない、もっと深くて辛いもの…。
佐貫が大事なものを失ってから、再び手に入れられる時までを見守っていたのだと改めて知る。
対象が譲原自身でないことも、薄々気付いていたのだろう。
その価値が、自分にはないと言われているのだろうか…。
離婚をしたから…?
今はもっと…穢されている…。
これを知ったら譲原は…、もっと佐貫にふさわしくないと攻めて来られるのだろうか。
佐貫の献身的な扱いは徐々に成俊を追いつめ始めた。
過去と重なる、ただの同情…。
それでもいい、そばにいたいと思ってしまう欲。
リビングで夜の時間を二人で過ごしていた時、まるでそれをたち切るかのように、成俊は「明日から仕事に行く」と告げる。
佐貫は首を横に振った。
「まだ犯人は捕まってない。何故あそこにいた?どうしてこんなことになった?」
幾度も問われることに、成俊も首を振る。
「この前と同じ…。チンピラに絡まれた…」
何度同じことを繰り返しても、佐貫は信じていないのが一目瞭然だった。
だけど、思い出させたくない心理もあるのだと思う。
成俊の言葉に、深いため息を零すだけで、その場ではそれ以上の追及はされない。
「送り迎えはしてやる」
あまりにも意外な方向で話をまとめられて、成俊の方が驚きに目を見開く。
「な…っ?!」
「おまえは何も言わない。こういった奴は弱みに付け込んで2度3度と同じことを繰り返すんだよ。特に男なんて、表沙汰にできない典型的な例だからな」
女なら強姦罪が適用される。
それでも訴えるには相当な勇気が必要なはずだ。
ましてや、男の自分が襲われたと、どう訴え出られるか…。
泣き寝入りしようとしていた成俊の心情を、佐貫はしっかりと見透かしていた。
「言っただろう。おまえのことは守ってやると。もう二度とあんなことに巻き込まない」
勘違いしそうになる…。
添えられる指先に頬を寄せ、抱きしめられる体に全てを委ねてしまう。
同情?愛情?…どちらに置かれるのだろう…。
佐貫の心はどこにいってしまったのだろう。
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離婚がらみの不安定な精神からくる心の病と、表向きの理由は用意されていた。
医師からの診断というものに、会社側も譲歩を見せてくれる。
今までの勤勉な態度も評価されてのことだった。
ずっと佐貫の家に居座ってしまったことも心苦しかったが、佐貫はなかなか成俊を外に出そうとはしなかった。
お互いに言葉を避けているのに、望むものをくれる。
冷えた家庭と似ているようでありながら、存在するものは対照的な温かさだった。
その居心地の良さに溺れそうになる…。
大事を取って寝室で与えられていた食事も、一人で動けるようになればリビングに移動するし、栗本が来れば嫌がらずに身体も見せる。
過保護ともいえる状況なのに、栗本は佐貫の行動を何一つ否定しなかった。
それが、尚更過去の、佐貫の苦痛を裏付けているようだった。
二度と同じ目には合わせない…。
成俊を守りながら、佐貫をも護る周りの気遣いに、譲原の言葉が甦って来る。
…『ずっと見ていた…』…。
ただの『好き』などではない、もっと深くて辛いもの…。
佐貫が大事なものを失ってから、再び手に入れられる時までを見守っていたのだと改めて知る。
対象が譲原自身でないことも、薄々気付いていたのだろう。
その価値が、自分にはないと言われているのだろうか…。
離婚をしたから…?
今はもっと…穢されている…。
これを知ったら譲原は…、もっと佐貫にふさわしくないと攻めて来られるのだろうか。
佐貫の献身的な扱いは徐々に成俊を追いつめ始めた。
過去と重なる、ただの同情…。
それでもいい、そばにいたいと思ってしまう欲。
リビングで夜の時間を二人で過ごしていた時、まるでそれをたち切るかのように、成俊は「明日から仕事に行く」と告げる。
佐貫は首を横に振った。
「まだ犯人は捕まってない。何故あそこにいた?どうしてこんなことになった?」
幾度も問われることに、成俊も首を振る。
「この前と同じ…。チンピラに絡まれた…」
何度同じことを繰り返しても、佐貫は信じていないのが一目瞭然だった。
だけど、思い出させたくない心理もあるのだと思う。
成俊の言葉に、深いため息を零すだけで、その場ではそれ以上の追及はされない。
「送り迎えはしてやる」
あまりにも意外な方向で話をまとめられて、成俊の方が驚きに目を見開く。
「な…っ?!」
「おまえは何も言わない。こういった奴は弱みに付け込んで2度3度と同じことを繰り返すんだよ。特に男なんて、表沙汰にできない典型的な例だからな」
女なら強姦罪が適用される。
それでも訴えるには相当な勇気が必要なはずだ。
ましてや、男の自分が襲われたと、どう訴え出られるか…。
泣き寝入りしようとしていた成俊の心情を、佐貫はしっかりと見透かしていた。
「言っただろう。おまえのことは守ってやると。もう二度とあんなことに巻き込まない」
勘違いしそうになる…。
添えられる指先に頬を寄せ、抱きしめられる体に全てを委ねてしまう。
同情?愛情?…どちらに置かれるのだろう…。
佐貫の心はどこにいってしまったのだろう。
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どんな感情でもいいから・・・って 佐貫を離したくない 成俊は 思っているのでしょうね。
ほんと 霧の中を彷徨う様に 先の見えない二人ですね。
佐貫の思いの先が 分かれば 案外 簡単なのにぃ~!
ント・・σ( ・´_`・ )。oO(悩)...byebye☆
ほんと 霧の中を彷徨う様に 先の見えない二人ですね。
佐貫の思いの先が 分かれば 案外 簡単なのにぃ~!
ント・・σ( ・´_`・ )。oO(悩)...byebye☆
成俊さんは心身ともにボロボロな状態なのに、本当のことを言えずに隠し事したりどうしていいか分からないでぐるぐるしているとますます深みにはまりそうで心配です。
全部投げ出して甘えてしまったらどんなに楽になれるかと思うけれど、愛情ではなくて同情から世話を焼くいてくれているのだと思うとできないという気持ちが見えてきて切ないです。
追伸
視点の変化など分で読みづらいとかいうことはないですよ
見えてない部分はあとあと徐々に解明されていくことでしょうから楽しみにあれこれ想像しながら読んでます。
全部投げ出して甘えてしまったらどんなに楽になれるかと思うけれど、愛情ではなくて同情から世話を焼くいてくれているのだと思うとできないという気持ちが見えてきて切ないです。
追伸
視点の変化など分で読みづらいとかいうことはないですよ
見えてない部分はあとあと徐々に解明されていくことでしょうから楽しみにあれこれ想像しながら読んでます。
このコメントは管理人のみ閲覧できます
けいったん様
おはようございます。
> どんな感情でもいいから・・・って 佐貫を離したくない 成俊は 思っているのでしょうね。
成俊ってばここまで執着したか…と母が驚いております ←
> ほんと 霧の中を彷徨う様に 先の見えない二人ですね。
> 佐貫の思いの先が 分かれば 案外 簡単なのにぃ~!
>
> ント・・σ( ・´_`・ )。oO(悩)...byebye☆
彷徨ってますねぇ。
佐貫が曖昧にしすぎなんでしょう。
でも成俊が知っちゃった!っていうのも引っかかっているのかもしれません。
コメントありがとうございました。
おはようございます。
> どんな感情でもいいから・・・って 佐貫を離したくない 成俊は 思っているのでしょうね。
成俊ってばここまで執着したか…と母が驚いております ←
> ほんと 霧の中を彷徨う様に 先の見えない二人ですね。
> 佐貫の思いの先が 分かれば 案外 簡単なのにぃ~!
>
> ント・・σ( ・´_`・ )。oO(悩)...byebye☆
彷徨ってますねぇ。
佐貫が曖昧にしすぎなんでしょう。
でも成俊が知っちゃった!っていうのも引っかかっているのかもしれません。
コメントありがとうございました。
甲斐様
おはようございます。
最強だ、ボディーガード(爆)
> 成俊さんは心身ともにボロボロな状態なのに、本当のことを言えずに隠し事したりどうしていいか分からないでぐるぐるしているとますます深みにはまりそうで心配です。
>
> 全部投げ出して甘えてしまったらどんなに楽になれるかと思うけれど、愛情ではなくて同情から世話を焼くいてくれているのだと思うとできないという気持ちが見えてきて切ないです。
一人でぐるぐる考えちゃう子なんですね~。
そこをうまく佐貫が救ってくれれば問題解決~…にならないかな…。
愛情だったら素直に甘えられるんでしょうけど、同情では余計に手を煩わせるだけ…と自粛モードです。
> 追伸
> 視点の変化など分で読みづらいとかいうことはないですよ
> 見えてない部分はあとあと徐々に解明されていくことでしょうから楽しみにあれこれ想像しながら読んでます。
視点が変わるのって読みづらいかな~と思いましたが、楽しんでいただけたようで良かったです。
このことをいつ本人が知るのか…を待っていただけたら、と思います。
コメントありがとうございました。
おはようございます。
最強だ、ボディーガード(爆)
> 成俊さんは心身ともにボロボロな状態なのに、本当のことを言えずに隠し事したりどうしていいか分からないでぐるぐるしているとますます深みにはまりそうで心配です。
>
> 全部投げ出して甘えてしまったらどんなに楽になれるかと思うけれど、愛情ではなくて同情から世話を焼くいてくれているのだと思うとできないという気持ちが見えてきて切ないです。
一人でぐるぐる考えちゃう子なんですね~。
そこをうまく佐貫が救ってくれれば問題解決~…にならないかな…。
愛情だったら素直に甘えられるんでしょうけど、同情では余計に手を煩わせるだけ…と自粛モードです。
> 追伸
> 視点の変化など分で読みづらいとかいうことはないですよ
> 見えてない部分はあとあと徐々に解明されていくことでしょうから楽しみにあれこれ想像しながら読んでます。
視点が変わるのって読みづらいかな~と思いましたが、楽しんでいただけたようで良かったです。
このことをいつ本人が知るのか…を待っていただけたら、と思います。
コメントありがとうございました。
s様
おはようございます。
> 成俊くん~、素直に佐貫さんに甘えてみたら?
> 佐貫さん、あなたも成俊に話してみたら?
> お互いがちょっと歩みよっては?
歩み寄りが足りない二人ですね。
他の人間からの親切に「甘えとけ」と言っていた佐貫ですが、自分に対しても言ってあげてほしい…。
> 近頃、お昼休憩が忙しくて、コメントする時間が足りない~(はやくお弁当食べればいんだけど…)やっぱり、携帯からのコメントは難しい!!!。
お忙しいのにコメまでいただけて感謝です。
貴重なお昼休み、有意義に過ごされてください。
コメントありがとうございました。
おはようございます。
> 成俊くん~、素直に佐貫さんに甘えてみたら?
> 佐貫さん、あなたも成俊に話してみたら?
> お互いがちょっと歩みよっては?
歩み寄りが足りない二人ですね。
他の人間からの親切に「甘えとけ」と言っていた佐貫ですが、自分に対しても言ってあげてほしい…。
> 近頃、お昼休憩が忙しくて、コメントする時間が足りない~(はやくお弁当食べればいんだけど…)やっぱり、携帯からのコメントは難しい!!!。
お忙しいのにコメまでいただけて感謝です。
貴重なお昼休み、有意義に過ごされてください。
コメントありがとうございました。
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