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BLの丘
チョキチョキ 6
2011-06-06-Mon  CATEGORY: チョキチョキ
呼ばれては無視するわけにもいかない。
片付けかけた食器をテーブルに戻して、その席へと顔を向ける。
改めて正面から見ると、自分を追っていた男は見たことがある気がした。
何もかもを監視…というか、把握しようとする視線は、どこかで感じたことがある。ただ、それが分からない…。
「はい、…えと…」
オーダーをしてくる様子もない姿は即座に知れた。個人的な話がしたいのだろうということも…。
そのために、タイミングを伺っていた…という態度である。

「突然ごめんね。後で話ができる時間があったら、教えてほしいんだ」
さり気なく名刺を渡される。
レストランの名前と、責任者としての肩書、手書きされた個人的な連絡先まであるものだった。
そのレストランの名前には覚えがある。熊谷と本庄が揃って移籍した店だ。
『越谷羽生(Uise Koshigaya)』
この男を見たことがある…、と思ったのは間違いではない。一度訪れた時に、ホールの全てを支配していた人物である。
思い出すことができても、そんな人間がどうして自分に声をかけてくるのかが分からなかった。

「あの…、えと…」
意味が理解できずに動揺しまくる春日に対して、羽生の人慣れした笑みは変わることがない。
どう返事をしたらいいものかと悩む春日を見つめながら、同じ席に座った男が苦笑しながら越谷の突発的な動きを制した。
「羽生、これ、いきなりのナンパに間違えられるから~」
しかし、この状況を完全に楽しんでいるのは雰囲気だけで伝わってくる。
まるでからかわれているといった行動に、客の前であるということを忘れて怪訝な表情を浮かべた。
「皆野が声をかけるほうが、より怪しいよ」
「俺は通いつめて親しくなってからにする」
「先手を打たないと取られるからね」
「まぁ、選ぶのは彼だけど」
羽生は隣の男を一応窘めはするが本気の言葉ではないのは、二人の親しみある口調で知れた。
そして言葉の端々から二人の好みが似ているのだということもなんとなく伝わってきた。
…その対象が自分では困るものなのだが…。
「皆野~」
「え?別にいいじゃん。まだ手に入れたわけじゃないだろう」
「やっぱりおまえを連れてくるのは間違いだった…」
「自分で誘っておきながら良く言うよ~。俺の休日、返せってんだ~」
「あの~…」
あまりにもさり気ない言葉使いに思考が混乱する。本気でナンパしに来たのだろうか、この二人は…。

羽生は一度見たことがあるから、…それでも理由が知れずに瞠目するばかりだ。もう一人の男に関しては面識も何もない。
見た目だけで判断されるのは春日にとっても嬉しいことではなかった。
それでなくても頼りなさげに見られてしまう華奢な体格なのだ。誰かに囲われ守られるようなのは好かない。
小さな小競り合いが目の前で繰り広げられる。
気軽な言葉であっても二人の興味を引いている自分の存在はさすがに理解できる。
小さく問いかけた春日の言葉に、羽生が勤務中である春日の状況を察して『皆野』と呼んだ男との不毛な会話を中断させた。
それからいたく真面目な表情に変わる。
「この場で話せることではないんだ。このお店のことにも関わってくるからね。できれば改めて時間を作ってほしい」
羽生の台詞は他の従業員に聞かれたらマズイことを表していた。
その真剣な眼差しに、話の内容が冗談などではなく、これまで聞かされたナンパ紛いのものとは一切関係ないと告げていた。
「え、と…」
春日はどう答えたらいいのかと躊躇する。
『客』に対する接客の仕方など、すでにどこかに飛んでいた。

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出た!!羽生~!!

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