2ntブログ
ご訪問いただきありがとうございます。大人の女性向け、オリジナルのBL小説を書いています。興味のない方、18歳未満の方はご遠慮ください。
BLの丘
大人の時間 4
2010-03-18-Thu  CATEGORY: 大人の時間
「まぁ、坊やのそばにいる以上、美琴に相手ができてもその人が可哀想なだけだな」
グラスを傾けながら水谷が野崎の整理した書類をめくった。
これだけ完璧な仕事をするからには、私生活にも支障が出るだろうと水谷は内心で思っている。
それを苦とも思っていないでそつなくこなしてしまうんだから感心するばかりだ。
そして事務的に動く野崎を、感情があるのかと少々心配したりもする。
「ええ。時間外労働もここでこうして行っているわけですし」
「まるで俺が拘束しているような発言だな。主が違うだろう」
「社長からはきちんとしたお給料を頂いています。こちらはボランティアに近いですから」
「でも嫌がらずに来る」
野崎にとっては『責任』という言葉のほうが大きかった。
この店の管理…というか、水谷の財産をどうするか、千城に依頼された仕事といっていい。
潰せば日野の負担となり、神戸も気を病め、千城の不快を買う。

改めてデスクの前に座った野崎を歓迎したような水谷の言葉が響く。
「たまには付き合えよ」
頬に手を伸ばしてきた水谷の手をぴしゃりと叩いた。何を言いたいのかは判断がつく。
先程千城が明日の朝きちんと出勤するかと尋ねたのは野崎の身を思ってのことなのか…。
「どこかの娼婦か男娼とお間違えのようですね。こちらを片付けましたら私は帰らせていただきます」
出しっぱなしにされた書類を手早く整理し始めた野崎に小さな吐息が聞こえた。
「そういうところがさ…。可愛くないよ。一夜の間違いくらい『大人の男』にはつきものだぞ」
「貴方と一緒にしないでください。何が間違いですか。簡単に言うなど…。もっとも貴方は『一夜』が365日続いているようですが」
核心をつかれて水谷はやれやれと肩を竦めた。
さすがに365日はないが、奔放に過ごしてきたことに変わりはない。
この事務所に限らずホテルなど連れ込んだ若い男は数知れず。
日野こそ、黙っていてはくれているが、実際に跨いだ数は年の数を優に超える。
それも男も女も関係なく…。
そういう点では日野の相手である神戸とは気があった。
もちろん日野本人にも他人にも封じられた内容だが、過ごした過去は覆しようがない。
一度くらい相手を頼みたい男だったが、すでに遅すぎ見事に断られたも同然だった。

「日野を大事にしたい…」
神戸からはなたれたその言葉に日野を譲ったようなものだ。
この話は野崎の知らないところで交わされている。
神戸は正面から日野を譲り受けたいと申し出てきた。
いつまで経っても双方で譲らず、辞めさせもせず、辞めもせず煮え切らない関係が続いた。
千城が気付いていたかどうかは疑問だが、野崎を差し向けてもらえたのは水谷にとって喜ばしいことだった。
間に野崎が入ることで千城や神戸の願いが叶う運命となる。
水谷とて、日野の幸せを望んでいた。彼の過去は知っている。
両親を失い、愛情の一つも浴びずに過ごした少年時代。
流れついたこの世界でも着実に実力を身に付け這い上がった。
強い精神力があったからこそ、得られた『幸福』を手放せたくはなかった。
神戸から聞いた言葉に水谷は何も言わず、ただ頷いた。
「あぁ。君が日野君を幸せにするんだな…」
確認したときの神戸の顔は力強かった。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
関連記事
トラックバック0 コメント2
コメント

管理者にだけ表示を許可する
 
『さすがに365日はないが・・・』360日くらいはあるかも・・・
コメント甲斐 | URL | 2010-03-18-Thu 12:34 [編集]
日野ちゃんの幸せを願っている人がここにも一人いたんですね。
そんな水谷さんですが、やっぱり神戸さんには一度お手合わせを・・・と目をつけてたってことですか、いつかの一夜に食べたいと。
でも純愛を貫く覚悟の神戸さん今は日野ちゃん一筋なんですね、よかった。

すると、みこちゃんは、日野ちゃんを円満に辞めさせ、神戸さんと千城さんが幸せになるために人身御供として提供されたってこと?
裏方はきっちり仕事させますから後は、あなた次第です。
お好きになさってください?あるいは、
いくらなんでもこれは喰えないでしょう?かな。
肉食獣の前に差し出すウサギじゃなくて、ハリネズミ。
うん、たぶん食べない・・・きっと、、、、
Re: 『さすがに365日はないが・・・』360日くらいはあるかも・・・
コメントきえ | URL | 2010-03-18-Thu 16:13 [編集]
甲斐様
こんにちは。

> 日野ちゃんの幸せを願っている人がここにも一人いたんですね。

日野の幸せを願いつつ、頭(下半身)は常に違う幸せを求めているようです。
神戸、危機一髪?!

みこちゃん、供物同様扱い?!
> 裏方はきっちり仕事させますから後は、あなた次第です。
> お好きになさってください?あるいは、
> いくらなんでもこれは喰えないでしょう?かな。

このセリフは、千城の心の内側のような気がするのですが…
ぜーったい、こんなやつ喰わねえ。いざって時は自分でどうにでもカタをつけるし…とか。
『あらゆることに精通している』(千城父談)野崎ですから、送ってしまえばあとは自分でなんとでもするだろう…(←ほったらかし)

跨いだ数は年の数を越え…。
多少、一定の時期を過ごした方がいたとしても…ねぇ…。
360日もあればそりゃ数は計測不能ですよ。

> 肉食獣の前に差し出すウサギじゃなくて、ハリネズミ。
> うん、たぶん食べない・・・きっと、、、、
水谷って雑食ですよね~きっと、、、、
コメントありがとうございました。

トラックバック
TB*URL
<< 2024/09 >>
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 - - - - -


Copyright © 2024 BLの丘. all rights reserved.