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BLの丘
愛妻弁当
2012-05-29-Tue  CATEGORY: 契り
体格の良い、似たような男の間をフラフラして、誰かに寄生し続け、見せかけの愛情を振りまいてその気にさせていたとは、本人からも聞いた話だったが…。
出会った頃に、共に住んでいた男の存在も、伊吹の精神を圧迫するものがあったのだろう。
一緒に住み始めてから、伊吹は伸び伸びと生活している感じはする。
あの男に、一度出会った時に、きっちりとした雰囲気は、当の本人にも家の中にも見えてくるものがあった。
伊吹にしてみたら、それさえも重荷に感じるものになっていたのかもしれない。
細かなことを言わない甲賀の性格も受け入れられて、なにもかも、全てにおいて、今の伊吹には心地良いもののようだ。
それらを感じられれば甲賀の機嫌も良くなる。
自分の感情を素直に表現してくれること。

ずっと引きずっていた、過去の男との悩みも、ようやく解決したらしく、なんとなくあった後ろめたさが綺麗に消えた。
付き合っている、という関係にありながら、明らかな浮気を繰り返し、逃げるようにその場所を出てきたことは、一方的な別れ話で、伊吹なりに残した男に対して気まずさがあったのは甲賀も気付くことだった。
奪った…のは確かに甲賀だったが、本心から喜んでくれる状況でなければ、本当の幸せを手に入れたとは言い難いだろう。
営業という仕事柄、感情を誤魔化す術は甲賀とは比にならないほど上手である。
年上…という人生経験もあるのだろうか。それらを感じるたびに、まだ未熟ものだといわれているようで、甲賀としてはあまり面白くない状況だったけれど…。
素直に甘えられているのだと分かるくらいに、寄り添ってくる存在は何より愛おしい。
今までとはまた違った、伊吹から醸し出されるもの。
他人の幸せまで祈り喜べる気持ちを持つとは、たとえどんな相手だったとしても、人の優しさを感じられた。

本来の年齢を思わせない、可愛らしく若い雰囲気がある。
ハキハキとした態度も、若さを引き立てるものになっている。
出会った頃から、その元気さと明るさに惹かれ、実際の年齢を聞いた時には、甲賀は言葉を失った。
絶対に同じ年くらいか、年下だと思っていたものが、六歳も年上だったのだから…。
もちろん、それくらいのことで萎える思い入れではなかったが…。

朝はどちらかというと伊吹のほうが時間に余裕があった。
営業という仕事柄、かなり時間に自由が利いている。
その間に出会われる人間関係は、甲賀の心配する点でもあったけれど。
仕事なのだと割り切るしかない。
これまでとは違い、嘘をつくこともなく、確実にこの家に帰ってくるのだから…。

伊吹の生活にこれといって口出しをすることはなかったが、絶対にこだわったのは寝室の存在だった。
ベッドはひとつあればいい。
淋しがる性格を知るからこそ、喧嘩をしようが、なにがあろうが、寝る場所だけは一緒が良いと言い張った。
体の甘みで誤魔化してしまうのもどうかと思うが…。
伊吹が激しく嫌がらないことに、甲賀も調子に乗りたくなる。
可愛さのあまりか、嫉妬の挙句か、夜に頑張ると次の日の朝、甲賀と同じ時間に伊吹は起きてこない。
昔は朝早くに消えていた存在だったのに、安心して眠る姿を見ては、ここにいるのだと、甲賀も安堵した。
無理をさせたことも理解しているから、甲賀も簡単な朝食を用意してあげて出勤していく。
それが、ある日、珍しくキッチンに立つ伊吹を見た。
過去、家事は同居人がほとんどやっていたという伊吹は、正直、家事が得意とは言えない。それは甲賀も知るところだ。
「伊吹、こんな朝っぱらから、何してんの?」
背後から話しかければ、忙しさからなのか「うるさい」と言わんばかりの態度で無視される。
「伊吹ちゃ~ん」
「『ちゃん』言うなっ」
「だから、何してんの?」
「弁当作りっ。甲賀、食う量多いから、持参したほうが安いだろ」
「は?」

確かに収入面でも伊吹に迷惑をかけているところはあるかもしれない。
以前より広いマンションに越したことで家賃も倍近くかかってくる。
いくら二人でルームシェアとはいっても…。
外食続きでは…と夕食など、手作りすることはあったけれど、市販品で賄うなど横着することも多かった。
細かく会計処理をしてくれるのは、性格なのだろうか…。
「えーと…、伊吹ちゃん…」
「おまえ、今度『ちゃん』言ったら、追い出すっ」
照れ隠しなのは分かるけれど…。何か言えば口が真っ先に動く気の強さはある意味感心できるものだったが、今は嫌味など浮かばず、嬉しさだけがこみ上がってくる。
「いぶき~っっっ」
背後から抱きついては後ろ足でスネを蹴られて悶絶した。
「前の夜、何もしなかった時だけ作ってやるっ」

えーと、それは…。
愛妻弁当を持っていける喜びが勝るか、夜の営みを優先させるか…。
甲賀にとっては究極の選択とも言えそうだ。
しかも外食は自腹である。

「伊吹、可愛い~っ、可愛いっ~」
くっついていれば、いずれ伊吹から寄り添ってくるだろうなどという考えも横切っていく。
その時は『甲賀がなにかした』には当たらないだろう。
まあ、間違いなく弁当はないだろうが、食費くらいは出してくれるかもしれない。
家計簿を付けられる性格はありがたい。
「伊吹~っ、俺、頑張って働いてくるからっ」
「おー、働けっ。その筋肉、もっと鍛えて来いっ」
「え?」
なんだか目的が違うような気がしなくもないけれど…。
伊吹が喜んでくれるなら何でもアリだ…と思ったかもしれない甲賀の一日が始まる。

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読者様に『甲賀視点』のリクを頂いて、ちょろっとだけ書いてみました。
でもやっぱり、文章力ないなぁ…。
あ、読みきりですよ。

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コメント

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可愛い
コメントちー | URL | 2012-05-29-Tue 18:36 [編集]
伊吹ちゃん、可愛いのー。
(甲賀じゃないから怒られない)

愛妻弁当、作るなんて健気ね。
でも、私ったら信楽さんに聞きにいくのかしら?なんて思っちゃった。
バレなきゃ良いよね?バレなきゃ・・・

きえさんが、読みきりとか書くとついつい、続きを待ってますと言いたくなるちーでした。
あ、ちー(きちく)にしとけば良かった
(笑)
Re: 可愛い
コメントたつみきえ | URL | 2012-05-30-Wed 07:05 [編集]
ちー様
おはようございます。

> 伊吹ちゃん、可愛いのー。
> (甲賀じゃないから怒られない)
>
> 愛妻弁当、作るなんて健気ね。
> でも、私ったら信楽さんに聞きにいくのかしら?なんて思っちゃった。
> バレなきゃ良いよね?バレなきゃ・・・

Σ (゚Д゚;)
バレなきゃ…。
でもちー様に気付かれたってことは、甲賀が気付くのも時間の問題?!
……、いえ、きっと、自力でがんばっていますよ、伊吹は…。
決して、営業の途中で作ってもらったものを仕入れていないはずです!!
あとは詰め込めばいいだけだからラクだよね~(←)

> きえさんが、読みきりとか書くとついつい、続きを待ってますと言いたくなるちーでした。
> あ、ちー(きちく)にしとけば良かった
> (笑)

ちー(きちく)様(を始め他の読者様にも)に次を期待されるというのは、書いていて良かったな~と思えるところです。
とりあえず書いた文は、つまらなくて飽きられたものではなかったのかな~とうぬぼれて…。
ちー(きちく)様にお尻に火をつけられていますが(笑)
コメントありがとうございました。

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