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BLの丘
原色の誘惑 2
2012-08-14-Tue  CATEGORY: 原色の誘惑
怒りの中で用を足せば、一気に酔いが醒めた気分になってしまった。
そう、気分良く飲んでいたのが全くもって台無しだ。
明らかに不機嫌さを表して席に戻れば、席を移動して隣に来ていた三十代半ばの係長、赤倉(あかくら)が訝しがってきた。
この人もあまり背は高くないが、誰にでも気さくに話しかけてくれる雰囲気が好きだ。
部長などの上役と下の人間のパイプ役も担ってくれる細やかさがある。ただ、最近前頭部が広くなってきたカナ…とは誰も口にしないけど。

問われて由利も、まさか半痴漢行為にあった…と口にするのはあまりにも悔しく、でも答えなきゃ仕方がない。
「女性と間違われたんです…」と頬を膨らませた。
するとクスクスと「本荘は可愛いからなぁ」と、またここでも聞きたくない台詞を聞いた。
先ほどの男も去り際に『可愛い』と言い捨てて行った…、と思い返しながら、ふとその『可愛い』は赤倉が言う容姿のことではなく…。
見られた部分の事を言うのか…?と顔が俯き、視線がきちんと閉められたファスナーに落ちた。
そりゃ…そんなのは…そんなのは言われなくったって…っっ!!
笑われた顔まで浮かんでくる。
もうここまでくれば、ヤケ酒したい気分になってくる。
先程は自制しようとした気分も吹っ飛んでおり、早々におかわりのハイボールを注文していた。

それが三回繰り返されようとした時、さすがに目の前にいた一つ上の高畠萩生(たかはた はぎお)が止めに入った。
短く刈り上げた髪としっかりした体躯は、何かのスポーツをやっていました、と告げてくる。
闘争心がある性格でありながら、面倒見が良いところもきちんと持っている。
「ユーリ、もうやめておけよ。ぶっ倒れるぞ。それでなくったって、今まで何杯空けているんだよ」
そんなことを言われても自分は充分なくらいしっかりしていると言い張った。
「大丈夫ですよ。じゃあ、これで終わりにしますから」
思いのほか、しっかりとした口調で話す由利に、その微笑まれる表情も相まって、高畠も苦笑で諦めてしまう。

しかし、これが悪かった…。
グラスの中身を半分ほど空けたところで、一気に酔いが回りだし、天地が分からなくなった。
眠い…というように目を閉じて、上半身が数回回転することにすぐに気付いたのは高畠だ。
「ユーリっ」
その声に反応して、咄嗟に赤倉が由利の体を支え、かろうじてテーブルの上に突っ伏す惨事を回避してくれた。
丸まる猫のように横に倒された時には、由利はドロップアウトしていて、誰の問いかけも耳に届いていない状態になっていた。
全員から溜め息が漏れたのは言うまでもない…。


由利が目を覚ましたのは明け方前だった。
周りの世界はまだ太陽の光をあびていない。うっすらと、東の空が白くなりはじめていた。
あまりにも喉が渇いて、水が飲みたくて目が覚めたのだ。
何も考えることなく、普段の行動を取るように、ベッドから降りてキッチンに行って、水でも飲んでこよう…という感覚だった。
だが、思った以上にアルコールは分解されていなかったようで、動かした体に力は入らなく、派手な音を立てて床の上に転がり落ちた。
その時、由利の脳内は、何故こんなことになっているのかさえ、考える力を失っていた。
「いったぁ…」
寝ていた位置が、まずベッドの端のほうだったのが悪い。寝返りを打ったつもりがそのまま落下。
体のだるさと痛みとでしばらく動けずにいると、部屋のドアが開いた。
「ユーリッ?!」
聞きなれた自分と良く似た声が響いてくる。
パッと電気がつけられ、咄嗟の眩しさに硬く目を瞑ってしまうが、近寄ってきた人物が誰なのかは理解できた。
自分と同じ顔、同じ体型、双子の兄である、由良(ゆら)だ。

双子は学部こそ違ったが、同じ大学に進んだ。実家を離れるのは仕方がなく、だからといって同じ敷地内に通うことになる二人が、離れて暮らす理由もない。
一人にされるよりは二人でいたほうが安心だった。
更に、入社した会社まで同じとくれば、どちらも引っ越す必要性を見つけられなかった。
一部では、双子という物珍しさで採用された…などという陰口もあったが、それぞれの上司が「言わせておけ」と一蹴してくれたものだ。

「ユーリっ、何してんのーっ?!」
由良に抱き起こされても由利の体はぐにゃあと崩れていく。
「ユーリっ!!しっかりしてっ。とにかくベッドに戻ってっ」
「ゆらぁ、お水…」
「水?!…あぁ、そうだろうね、あれだけ飲めばっ。待ってて、持ってくるから。…ほらっ、よいしょっ」
夜中だから大声をあげることはないけれど、声音には苛立ち、呆れが顕著に表れている。それでもしっかり最後まで面倒を見てくれるのは、昔からだった。
由良の細い腕に支えられてどうにかベッドの上にのぼった。
分かるから由利も甘えた態度に出てしまうのだ…。とくにこんな時には…。
胸がムカムカしている。
でも由良が持ってきてくれたペットボトルの水を一気に飲み干してしまえば、少しは楽になれた気がした。
由良が胸で支えながら起こしてくれた背中も、目的を果たせばまたクタリとシーツの上に転がった。
端に腰かけたままの由良の掌が、伸びた前髪をかきわけてくれる。
「何があったの?ユーリがこんな飲み方するなんて、滅多にないことじゃない」
心配してくれているのか…。
何もかもを理解してくれている双子の兄に、隠し事なんかしたこと、あったっけ…?と由利は漠然と振り返ってしまった。
いや、隠し事なんてできたっけ…というほうだ…。

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やっと出てきた…、色々な人…。
(*゚ロ゚)ハッ!兄弟の次は双子かぁ?!……いや、べつに…ヾ(- -;)マアマアマア

もう一話書けたので、今日のお詫びを込めて、明日0時に次のをupしますね。
気ままに読みにきてください。

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コメント

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No title
コメントけいったん | URL | 2012-08-14-Tue 23:34 [編集]
ある程度の登場人物紹介は、これで終わりなのかな?
前回の「待っているよ」も たくさんの人物登場でしかたらね。 
今回は、前作の様に「誰が相手?」と、パニクらない様に どっしりと構えてますので~♪

由利と由良の双子とな!?
双子=ソーセージ=由利の可愛い”ブツ”‥な~んてね!
エッ♪(* ̄ω ̄*)。oO ポッ♪...byebye☆
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-08-15-Wed 05:38 [編集]
けいったん様
おはようございます。

> ある程度の登場人物紹介は、これで終わりなのかな?
> 前回の「待っているよ」も たくさんの人物登場でしかたらね。 
> 今回は、前作の様に「誰が相手?」と、パニクらない様に どっしりと構えてますので~♪

Σ (゚Д゚;)……す、すみません、まだ終わっておりません…。
たくさん? たくさんいましたかね~。…いたか…。
今回はもう、はっきりしておりますよ~。
安心して(←)お読みください。

> 由利と由良の双子とな!?
> 双子=ソーセージ=由利の可愛い”ブツ”‥な~んてね!
> エッ♪(* ̄ω ̄*)。oO ポッ♪...byebye☆

由利と由良 どっちがお兄ちゃん? となった時、五十音で、ら・りの順番で記憶しておいてください。
可愛い…のはさて…。
最初っから"ブツ"が出ていますからね~。
コメントありがとうございました。
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