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BLの丘
七色の虹 9
2012-09-21-Fri  CATEGORY: 七色の虹
休み明け、由良は食堂で高畠と再会した。
新庄と食堂に入っていこうとして、後ろから「由良~」と聞きなれた声が響いてくる。
振り返れば大きく手を振った由利が駆けだしそうな勢いで笑顔を向けていた。
その後ろで苦笑した高畠は、半ば呆れかえっている様子だ。
由利が由良と顔を合わせるたびに、童心に返ったような態度に出るためで、本来の由利の姿とも言えるものだった。
腕を絡ませて抱きついて…。一連の”挨拶”を済ませて、由良は高畠に向き直る。
いつもと違う光景がそこにはあった。
「あれ?湯田川さんは?」
企画室の人間が三人揃うのが常なのに、一人足りない。
由良からの質問をもらった高畠が、「なんだか人に会うとかで外に行った」と簡潔に答えてくれる。
休憩時間になにをするのも自由なので、由良も新庄も素直に受け入れてしまう。

テーブルに着こうとして全員が無意識に顔を見合わせた。
どう座ろうかと考えてしまったのだ。
普段であれば由良を中心に両脇を由利と新庄、前に高畠と湯田川が座るのだが、四名となった現在、二名ずつに分かれるところだろう。
当たり前のように新庄が高畠の隣に行こうとしたのは、離れたがらない双子を知るからだった。
だけど同時にこんなチャンスは滅多にあることではなく、由利には申し訳ないけれど、由良は高畠の隣に寄りたかった。
咄嗟に名案が脳裏を過っていく。

「俺が高畠さんと並ぶよ。たぶん、みんなユーリと間違えるよ」
「ってことは本荘君は”由良”になっちゃうってことか」
悪戯心満載の由良に気付いた新庄がクスクスと笑いながら位置を変わってくれる。
これには高畠が呆れるかと思ったが、由利さえ許せばどんなことでも受け入れてくれる寛容さがあった。
結局、精神的な意味も含めて、高畠の中では由利に基準があるのは致し方ないことなのだろう。
そこは悔しいところでもあるが、職場を共にすれば気にするのは当たり前だった。
一瞬戸惑いを見せた由利だったが、目の前にいるのだから反対はされなかった。
もちろん由良の企んでいることも理解しているから、その”いたずら”に乗ってきてくれる。
少しの後ろめたさはあったけれど、一番もっともな理由づけだった。

新庄と由利が並んでいる姿を見るのも不思議な感覚だった。自分が新庄の隣にいる時も、こんなふうに見られているのだろうか。
新庄はやはり由良に接するのと変わらない態度で由利に声をかけてくれている。
すでに免疫のついた新庄だからこそ、由利も気を許しているようだった。
由良は高畠のトレイに視線を落とした。
さんまの蒲焼丼のご飯は大盛りだし、他にミニ天ぷらうどんが添えられている。色とりどりの具材が煮込まれた肉じゃがの小鉢付きだった。
すでに食べる量は知っていたが、改めて見れば、すごいなぁと感心し、また、先日出した料理の少なさを思い起こさせた。
ちなみに今日の由良と由利は揃って親子丼だった。お味噌汁と漬物がついている。
「やっぱり物足りなかったんじゃ…」
ボソッと零れてしまった言葉に、高畠が「?」と首を傾げる。
由利と新庄も何かと耳を傾けてくる。
「この前…。ご飯、少なかったんじゃ…」
由良の言いたいことは高畠もすぐに理解できるのだろう。ポンポンと頭上に手のひらが乗る。
「夜の寝る前にそんなに食ってどうするんだよ。酒も入っていたんだからちょうどいいか、摂り過ぎだろ」
「そうだけど…」
今は昼間だし、エネルギー補給はしなければいけないの、ともっともな意見を語られた。
それから思い出したように高畠が由利に向き直った。
「あっ、そうだ、ユーリ。あの”ナントカチップ”、俺買いたいんだけれど、どこで売ってるの?リピートすることがあるのなら一緒に頼んで欲しいし、ないならサイト、教えて」
「"ナントカチップ”?」
由利が素っ頓狂な声で聞き返してくる。
勝手に袋を開けてしまったことを伝え忘れていたと、由良も今になって気付いた。
それ以前に、何も言ってこないけれど、由利はすでに気付いているのだろうか。
「この前、ユーリがネットで買った野菜チップってやつ、半分食べちゃったの…」
由良が改めて言えば、「そーなんだ…」と大して気にしていない様子で返される。
まぁ、こんな反応だろうな…とは前もって想像できたことでもあったけれど。

新庄だけが黙って様子を伺っているという感じだった。
会話の端々から状況を読み取っているのだろう。
「うん、いいよ。美味しかったんだ~。よかった~ぁ」
はやり自分が選んだものを評価されれば嬉しいだろう。
「まさか由良、ユーリに黙っていたんじゃ…」
今頃になって現実を知ったらしい高畠が半ば咎めるように由良を見下ろしてくる。
だけどこれが普通だった自分たちに、端から責められる権利はないだろう…と思ってしまうのは甘えか…。
まぁ、そこのところの繋がりの良さも、咄嗟に判断できない高畠でもなく、スッとこの話題からは反らされた。

いつも通りに食事を進める。相変わらず食べるのが早い高畠と新庄だったが、由良と由利はマイペースで進んでいく。
会話はテレビの内容だったり、またネットの話に戻ったりと、結構賑やかだった。
由良が「肉じゃが、もらってもいい?」とそっと尋ねると、箸先でつまんでいた高畠がそのまま由良の口元に寄せてくれた。
由良と由利の間では普通の出来事でも、高畠が相手となれば違和感も生まれるというものだろう。
でもその自然さが、由良をより昂らせてくれる。
嬉しくて頬が上がった。
自分でいつも食べているはずのものなのに、人からもらうとどうしてこんなに美味になるのだろう…。
いつもであれば由良が気付く、由利が頬張っては口端を汚した由利を、新庄がペーパーで拭ってくれていた。
まぁ…、羽後に見せられる光景ではないだろうが…。

そして誰もがきっと由利と由良の違いなど分かってはいないだろう。
だからこそ、高畠に甘えられたのかもしれない。
由利はこんな風に甘えないかもしれないけれど、由利になれるから、高畠に近付けることでもあった。

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コメント

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由良ぁぁぁ
コメントちー | URL | 2012-09-21-Fri 04:27 [編集]
な、何なの?この可愛らしい生き物・・・
いや、由良は。

由利になりすましてでも高畠さんに近寄りたかった?
隣でご飯食べたかった?
やだ、もう。中学生か(笑)
おばちゃん、キュンキュンしちゃったよ、由良。

でも、三角三角、言ってた私ですが。
由良が高畠さんに振られて、新庄さんに・・・
ってのもアリですよね?
また、それはそれで可哀想とか言うのですが、弱ってる由良も可愛いかな?なんて。
(ちー、悪い人だ)

足踏みしてても可愛い由良が読めて嬉しいです。
由利といるのも~。
こんな可愛い双子ちゃん。どこに行けば見られますか?

うちの職場にはいませんけどね。
Re: 由良ぁぁぁ
コメントたつみきえ | URL | 2012-09-21-Fri 07:10 [編集]
ちー様
おはようございます。

> な、何なの?この可愛らしい生き物・・・
> いや、由良は。
>
> 由利になりすましてでも高畠さんに近寄りたかった?
> 隣でご飯食べたかった?
> やだ、もう。中学生か(笑)
> おばちゃん、キュンキュンしちゃったよ、由良。

なんなんでしょうねぇ、この物体は…生物は…。
本性がばれればバレるほど、由良の内面が晒されていきますね。
やっぱりこの辺は『由良視点』っていう書き方だからできることでしょうか。
小中学生並みの行動力でしょうか。
好きな子には意地悪しちゃう、強気に出ちゃう????
だけど時には優しくしてほしくて甘えちゃうんだね。

> でも、三角三角、言ってた私ですが。
> 由良が高畠さんに振られて、新庄さんに・・・
> ってのもアリですよね?
> また、それはそれで可哀想とか言うのですが、弱ってる由良も可愛いかな?なんて。
> (ちー、悪い人だ)

由良は振られちゃうのか~(笑)
新庄もいい人ですからね。
由良も由利も懐いていることだし。
まぁ、どっちでもいいかぁ(←)

> 足踏みしてても可愛い由良が読めて嬉しいです。
> 由利といるのも~。
> こんな可愛い双子ちゃん。どこに行けば見られますか?
>
> うちの職場にはいませんけどね。

本当に足踏みしてますねぇ。
進まなくて読者様、イライラしているんじゃないかなと思っておりますけれど。
まぁ、私が書いているものですからね…。
こんな双子ちゃん、どこにいるかしら。
我が家の近所に住む双子ちゃんが将来、こんなふうになってくれることを妄想してます。
コメントありがとうございました。
No title
コメントけいったん | URL | 2012-09-21-Fri 09:26 [編集]
高畠に対して 必死にアピってる由良は、私も可愛いと思うな♪

今は まだ 由利との同等扱いから 優しくされてるけど、
早く その位置から抜け出せたら いいのにね!

由利と雄和が、早々に恋人になったから 由良と高畠の関係が焦れったく感じるのでしょう
でも これはこれで ジレジレが いい感じ~♪
( *^-^)ρ(^0^* ) あ~ん...byebye☆

Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-09-21-Fri 11:40 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> 高畠に対して 必死にアピってる由良は、私も可愛いと思うな♪
>
> 今は まだ 由利との同等扱いから 優しくされてるけど、
> 早く その位置から抜け出せたら いいのにね!

必死(爆)
そうですね~。
一生懸命ですよね。
そんな姿も確かに可愛いものでもありますが…。
由利と同じ扱いじゃ満足できないんですよ~。
高畠、分かってくれるかなぁ。

> 由利と雄和が、早々に恋人になったから 由良と高畠の関係が焦れったく感じるのでしょう
> でも これはこれで ジレジレが いい感じ~♪
> ( *^-^)ρ(^0^* ) あ~ん...byebye☆

あっちはあっという間にカップルになっちゃったからね。
こっちは由良の片思いですでに数年…ですから。
由良も苦労人だなぁ。
でもこんなところで甘い時間(ジレジレ)を過ごしてね。
コメントありがとうございました。
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