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BLの丘
春が来てくれるなら 44
2013-05-31-Fri  CATEGORY: 春が来てくれるなら
連休というのはなんと素晴らしいのだろうと、大月はベッドの中でゴロゴロしながらしみじみと思っていた。

大月が目覚めた時は勝沼の腕の中で、その態勢はお互いの体温を求めるようにぴったりと寄り添って眠っていたのだと教えてくれる。
ふたりとも裸のままだったので、人肌が心地よかったのだろう。
寝返りをうとうにも、ギシギシいう体にしかめっ面を浮かべた。
腰回りの鈍痛に小さなうめき声が上がり、すぐそばの勝沼はその声と動きで覚醒したようだ。
「大月…?」
気遣う声音ではあったけれど、勝沼の手のひらが尻の膨らみを撫で、太腿をさすり、股間にも指を這わせて、上がってきた指が、また左の乳首をつまんだ。
抵抗する間を持たせない素早い動きに、乳首を触られるまで、勝沼に欲求があると思わせなかったくらいだった。
「コリコリしてる」
「てめーっ、いい加減にしやがれっ」
発した声も、ひどくガラガラと掠れていて、昨夜どれだけ喘いだのかと身を持って知った。
ふたりして楽しんだ結果を、勝沼だけに文句を言うのが筋違いだと分かっていても、動かない身体を前にしては大人しくしていられるものでもない。

乳首はまだ、触られるだけでもジンジンと痛むし、後孔に物が詰まった感覚も抜けていない。
勝沼は何も聞こえていないかのように、平然とした態度で、「おはよう」と言いながら額にキスをしてきた。
勝沼の彷徨う手が、何をしたがっているのかが分かるだけに、防衛本能が働く。
「喉かわいた、おなかすいた。だるい、体痛い、起きたくない、シャワーあびたい、一人で静かに眠りたい」
「大月~、おまえ、話さないほうがいいんじゃねぇ?」
「誰のせいだよっ」
「だって大月が『もっともっと』って言うから~。俺だって人間で、体力には限界ってものが…、うっ!」
いけしゃあしゃあと答える姿にカチンときては、大月も剥きだしのままの勝沼の股間に手を伸ばして強く握りこんだ。
いかにも勝沼の体力のほうが、大月より劣っているという発言は聞き捨てなれない。
「だ、だいき…っ」
それに『話すな』とは、大月の我が儘は受けつけたくないと言われているようなものだ。
もちろん本気でないのが分かっているから、こんなふざけ合いも出来ることだったのだが。
「暴走したのはどこのムスコさんだったっけ?」
「…う、うちのムスコです…」
「水っ、メシっ、風呂っ」
デリケートな部分を"人質"にとられて、腰が引けた勝沼は大人しく大月に返事をしてくる。
脛を軽く蹴飛ばし、ベッドの中から追い出そうとすると、またこれにも「ただいまっ」と準備に取り掛かるべく体を起こしていた。

あれから数時間。
動けない大月の代わりに勝沼が甲斐甲斐しいほど良く動いてくれている。
シャワーでも良かったのにわざわざ風呂を沸かしてくれて体を温めることができたし、昨夜の残り物である食事も寝室まで持ってきてくれた。
もうお昼を過ぎたというのに、大月はベッドの中からはい出ようとはしなかった。
この"何もしなくてもいい"休日が気持ち良かった。
人にも会わないから勝沼が体中につけた痕のことも、気にかけなくていい、開放感にひたれるもの。
ただ、左胸の乳首だけは膨らんだままで、時々布に擦れてはジンとした痛みを運んできた。
余韻を感じさせるから小さくならないのか、小さくならないから何度も感じてしまうのか。
勝沼が常にそばにいるような、くすぐったさが大月の中にあることなど、間違っても教えてあげない。

一通りの片付け物を済ませた勝沼がゴロゴロする大月のそばに寄って来た。
いつまで転がっているつもりだ?という文句は、今日は発されない。
「大月、食器って返しに行ったほうがいいんだろ?」
「食器~?…そんなの、そのうち回収しにくるよ」
食べた分のお礼もきちんと言わなければ…とは、営業畑で育った勝沼なりの配慮でもあるのだろうが、一人で飛び込んでいく勇気まではないようだった。
恐れずに進んでいく面がありながら、時々小心者になってしまうギャップも、また見ていて楽しい。
「なんだったら、兄貴んとこに置いてくればいいじゃん。途中下車も楽しい旅になるんじゃない?」
「…絶対に楽しくないと思う…」
親よりも明野のほうが親近感があるから、大月は提案してあげたのだが、どちらにしても勝沼には顔を引きつらせる内容でしかなかった。
「大月~ぃ、一緒に行こうよ。社長の印象、悪くなるの、嫌だよ、俺」
世間の一般常識、自分の中での常識、色々ありはするが、勝沼の中では先回りして手をうち、好感度を上げたい気持ちが勝っているようだ。
もっといえば、大月をベッドから起き上がらせる口実でもある。
体を揺すぶられて大月は眉根を寄せた。
どんな交換条件が勝沼に効果的だろうと脳裏を巡らせる。
乳首が元通りになるまで手出し厳禁、とすれば、自分の体のほうが辛くなりそうだし、休みの間中、家事は一切しない、と言っても、普段と何も変わらない。
まぁ、持ちつ持たれつ、で、結局は勝沼に甘い大月だったりするのだけれど。

久し振りに訪れた"実家"に少しばかりの居辛さを覚えたのは、隣に勝沼がいるからだろう。
並んでソファに腰を下ろすものの、勝沼の緊張がこちらまで伝わってくるようだった。
玄関先で渡すものを渡して、"ハイ、サヨナラ"としたかった大月なのだが、簡単に帰してくれる母親でもなかった。
コーヒーとどこかでもらったらしいクッキーを出されて、母親は勝沼と話をしたがっている。
これまでゆっくりと語る時間がなかったことを思えば、今の生活のことも聞きたいことは山ほどあるのか…。
明野から仕入れている情報だけでなく、生の声として。
「大月にとって、温かな春であってくれれば、お母さんとしては、それでいいのよ」
最後は意味深な言葉で締めくくられていた。

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