10時にタクシー乗り場で、と別れた。部屋番号まで知らないライアンは尚治をしつこく追いかけてくることもなかった。それこそが、『後腐れない』の間柄だろう。誘うことに慣れた人間なのかもしれない。
尚治は一度部屋に戻って、万が一のためにメモを残す。『スパに行ってくる』という他に、もらった紙片の名前や電話番号も記述した。
きっと、長流よりも早く帰ってくるだろう。自分が、同じ形で見たなら、処分すればいい、メモ書きだった。
初めて体験する『スパ』は、とてもゆったりとできた。ライアンと一緒に向かって、カーテンで仕切られた個室に案内されて、衣類を剥がされる。もちろん強引ではないから、自ら裸になったというほうだろう。
布一枚ない状況は抵抗があったが、背中を見せるのは、施術師が男だったから尚治にとっては受け入れられるものだった。
うつ伏せに寝て、顔に柔らかな枕が当たった。
両手を体に沿わせて寝そべる。腕枕ができないから、この枕の高さがあるのだろうか。
尚治は顔を横に向けて、目を閉じた。
何やらヌルッとしたものが背中に落とされる。
「…っ?」
驚いた尚治の息遣いを感じたのか、カーテンの向こうから、「はちみつだよ」と声が響いてくる。
姿が見えなくても、同じ施術を受けている様子がうかがえて、また、分かる言葉に安堵してしまう。
ライアンは、もう幾度も訪れているから、知っていることも多いのだろう。
緊張した体も、塗られた液体と体をこすられる掌の温かさ、適度に強められる指圧に尚治もうっとりとしてくる。
強張った体はあっという間に解れていった。
硬くなった筋肉が、さすられて緩められて、温められていく…。
施術のために閉じた瞼は、気持ち良さに開かれることはなかった。
鼻孔をくすぐる甘い匂い…。
いつの間にか、眠ってしまったようだ。
腰に痛みを感じて目が覚めた。刺されるような痛みはすぐに消える。
ヌルヌルとした肌の上のものがない。目を開けると、ガウンを着たライアンが隣に立っていた。慌てて、尚治も身を起こす。
どれくらいの時間が経ったのか、まったく分からない。
「あ…」
思わず照れた声を上げたら、宥められるような笑みで見下ろされた。
「ゆっくりできた? 良かった…」
尚治は体を起しかけて、毛布をかけられただけの裸体を知る。
いわゆる、すっぽんぽんの状態で、前を晒してはいけないと本能的に毛布を手繰り寄せた。
それすらもライアンは気にしていないようだ。その落ちつきぶりに安堵したのも確か…。
「ジャグジーがあるから行こう」
そう誘われて、右も左も分からない尚治は従っていく。
…気持ちが良かった…。
それだけは確かだ。固まった筋肉も張り詰めたものがなくなったように軽い。
これを味わいたいから訪れる客がいるのも、充分なほど理解できた。まさに、味わなければ知らない世界だ。
個室スペースにあるジャグジーに、当然ながらライアンは裸で浸かっていった。そこで初めて状況を見た。
たぶん、本来であれば、ここは『一人』のためのスペースだ。尚治が同行することで、丁寧に二台のベッドが用意され、区切られたカーテンがあったのだろう。
それをライアンに聞いてもいいものだろうか…。
しかし"配慮"と分かれば、わざとらしく口にすべきではないことも承知している。黙って感謝すれば、相手も気分が良いに違いない。さりげないことがより、相手の人格を押し上げる。
ガウンを脱いだら、想像していた以上に筋肉質な肉体がある。胸も腹も綺麗に割れた筋肉は顔の印象とは別格のものだ。穏やかな印象を与える表情も良いが、見る人間にとって、肉体美は価値があるものではないか…。
やはり、モデルの仕事でもしているのではないかと過ったが、そこは口を出すものではない。
あまり目を向けてはいけないと顔を俯けて、尚治もジャグジーに浸かった。
吹き出されるお湯のおかげで、隠す意識が薄れる。
おぼろげながら見えている茂みはあるのだろうが、男同士で今更隠す必要はないだろう。温泉国で育った環境もあるのかもしれないが。
ゆったりと手足を伸ばして目を閉じる。
本当に心地が良い時間だった。
その感謝だけは伝えようと口が開く。
「ありがとうございます。とっても気分が良いです」
「ヒノが喜んでくれたなら、僕も嬉しい。付き合わせてしまっていないかな?」
強引に連れてきたと思うところがあるのか、伺われてすぐに首を横に振る。
きっと彼がいなかったら、体験できない一つではなかったのではないか…。
「そんな…。初めてで分からないことばかりだったけれど、寝てて終わっちゃいましたね」
笑みを浮かべたら、同感するところがあったのか、「僕はいつも寝ちゃうよ」と言ってくる。
それからしみじみと体を見られた(気がする視線の動き方だった)。
「ヒノは…、…綺麗な体だね。無駄な贅肉がない。特に上半身は…。なにか、スポーツをしているの?」
突然の問いかけは驚いていても、裸でいる今、想像するものがあるのはお互い様だろう。また『綺麗』と言われて照れと、嬉しさは同時に襲ってきた。褒められて嫌な人間なんていない。こんな素直な感情がこぼれるのも、取り繕う必要性がない、開放感からくるものなのだろうか。
「俺、バーテンなんです。肉体労働?」
スポーツを心がけているわけではないが、日々の動きで、自然と鍛えられるものはあるかもしれない。接客業とすでに知られた話は、気の緩みで、もっと自分の世界を見せた。
ライアンは目を見開いて驚きを表したが、すぐに目を眇めて「おいしそうだな」と口にしてくる。
飲ませてあげられる環境があるのなら、このお礼に一杯もおごりたいところだ。ライアンから見せられたクーポン券は、尚治が思っていたよりもはるかに安かった。
そんなことを何気なく口にしてしまったら、ライアンは「是非」と目を輝かせて言う。
「I would like to be together with you not only till lunch but till night. (ランチどころか夜まで付き合ってほしいよ)」(翻訳コピーなので突っ込まないでください)
早口の英語は理解ができなくて、思わず頷いてしまった。
「OK!」
何を理解したのか、ライアンは突然ジャグジーから上がった。
目の前に見えた男のシンボルに、『へぇ…、外国人ってアソコの毛まで金色なんだ…』と観察してしまったことは、もちろん言わない。
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でもアソコは人種によって違うようです。見たことがないので想像でしかありません。
知る方がいたら、情報お待ちしております(←なにに役立てるの???)
ロシア人の女性は確か輝いていた…。
尚治は一度部屋に戻って、万が一のためにメモを残す。『スパに行ってくる』という他に、もらった紙片の名前や電話番号も記述した。
きっと、長流よりも早く帰ってくるだろう。自分が、同じ形で見たなら、処分すればいい、メモ書きだった。
初めて体験する『スパ』は、とてもゆったりとできた。ライアンと一緒に向かって、カーテンで仕切られた個室に案内されて、衣類を剥がされる。もちろん強引ではないから、自ら裸になったというほうだろう。
布一枚ない状況は抵抗があったが、背中を見せるのは、施術師が男だったから尚治にとっては受け入れられるものだった。
うつ伏せに寝て、顔に柔らかな枕が当たった。
両手を体に沿わせて寝そべる。腕枕ができないから、この枕の高さがあるのだろうか。
尚治は顔を横に向けて、目を閉じた。
何やらヌルッとしたものが背中に落とされる。
「…っ?」
驚いた尚治の息遣いを感じたのか、カーテンの向こうから、「はちみつだよ」と声が響いてくる。
姿が見えなくても、同じ施術を受けている様子がうかがえて、また、分かる言葉に安堵してしまう。
ライアンは、もう幾度も訪れているから、知っていることも多いのだろう。
緊張した体も、塗られた液体と体をこすられる掌の温かさ、適度に強められる指圧に尚治もうっとりとしてくる。
強張った体はあっという間に解れていった。
硬くなった筋肉が、さすられて緩められて、温められていく…。
施術のために閉じた瞼は、気持ち良さに開かれることはなかった。
鼻孔をくすぐる甘い匂い…。
いつの間にか、眠ってしまったようだ。
腰に痛みを感じて目が覚めた。刺されるような痛みはすぐに消える。
ヌルヌルとした肌の上のものがない。目を開けると、ガウンを着たライアンが隣に立っていた。慌てて、尚治も身を起こす。
どれくらいの時間が経ったのか、まったく分からない。
「あ…」
思わず照れた声を上げたら、宥められるような笑みで見下ろされた。
「ゆっくりできた? 良かった…」
尚治は体を起しかけて、毛布をかけられただけの裸体を知る。
いわゆる、すっぽんぽんの状態で、前を晒してはいけないと本能的に毛布を手繰り寄せた。
それすらもライアンは気にしていないようだ。その落ちつきぶりに安堵したのも確か…。
「ジャグジーがあるから行こう」
そう誘われて、右も左も分からない尚治は従っていく。
…気持ちが良かった…。
それだけは確かだ。固まった筋肉も張り詰めたものがなくなったように軽い。
これを味わいたいから訪れる客がいるのも、充分なほど理解できた。まさに、味わなければ知らない世界だ。
個室スペースにあるジャグジーに、当然ながらライアンは裸で浸かっていった。そこで初めて状況を見た。
たぶん、本来であれば、ここは『一人』のためのスペースだ。尚治が同行することで、丁寧に二台のベッドが用意され、区切られたカーテンがあったのだろう。
それをライアンに聞いてもいいものだろうか…。
しかし"配慮"と分かれば、わざとらしく口にすべきではないことも承知している。黙って感謝すれば、相手も気分が良いに違いない。さりげないことがより、相手の人格を押し上げる。
ガウンを脱いだら、想像していた以上に筋肉質な肉体がある。胸も腹も綺麗に割れた筋肉は顔の印象とは別格のものだ。穏やかな印象を与える表情も良いが、見る人間にとって、肉体美は価値があるものではないか…。
やはり、モデルの仕事でもしているのではないかと過ったが、そこは口を出すものではない。
あまり目を向けてはいけないと顔を俯けて、尚治もジャグジーに浸かった。
吹き出されるお湯のおかげで、隠す意識が薄れる。
おぼろげながら見えている茂みはあるのだろうが、男同士で今更隠す必要はないだろう。温泉国で育った環境もあるのかもしれないが。
ゆったりと手足を伸ばして目を閉じる。
本当に心地が良い時間だった。
その感謝だけは伝えようと口が開く。
「ありがとうございます。とっても気分が良いです」
「ヒノが喜んでくれたなら、僕も嬉しい。付き合わせてしまっていないかな?」
強引に連れてきたと思うところがあるのか、伺われてすぐに首を横に振る。
きっと彼がいなかったら、体験できない一つではなかったのではないか…。
「そんな…。初めてで分からないことばかりだったけれど、寝てて終わっちゃいましたね」
笑みを浮かべたら、同感するところがあったのか、「僕はいつも寝ちゃうよ」と言ってくる。
それからしみじみと体を見られた(気がする視線の動き方だった)。
「ヒノは…、…綺麗な体だね。無駄な贅肉がない。特に上半身は…。なにか、スポーツをしているの?」
突然の問いかけは驚いていても、裸でいる今、想像するものがあるのはお互い様だろう。また『綺麗』と言われて照れと、嬉しさは同時に襲ってきた。褒められて嫌な人間なんていない。こんな素直な感情がこぼれるのも、取り繕う必要性がない、開放感からくるものなのだろうか。
「俺、バーテンなんです。肉体労働?」
スポーツを心がけているわけではないが、日々の動きで、自然と鍛えられるものはあるかもしれない。接客業とすでに知られた話は、気の緩みで、もっと自分の世界を見せた。
ライアンは目を見開いて驚きを表したが、すぐに目を眇めて「おいしそうだな」と口にしてくる。
飲ませてあげられる環境があるのなら、このお礼に一杯もおごりたいところだ。ライアンから見せられたクーポン券は、尚治が思っていたよりもはるかに安かった。
そんなことを何気なく口にしてしまったら、ライアンは「是非」と目を輝かせて言う。
「I would like to be together with you not only till lunch but till night. (ランチどころか夜まで付き合ってほしいよ)」(翻訳コピーなので突っ込まないでください)
早口の英語は理解ができなくて、思わず頷いてしまった。
「OK!」
何を理解したのか、ライアンは突然ジャグジーから上がった。
目の前に見えた男のシンボルに、『へぇ…、外国人ってアソコの毛まで金色なんだ…』と観察してしまったことは、もちろん言わない。
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でもアソコは人種によって違うようです。見たことがないので想像でしかありません。
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ロシア人の女性は確か輝いていた…。
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おはようございまーす♪
> おやおや(^ .^)y-~~~ 外国にも ハッテン場って あるのかな?
あるみたいですよ。外国ドラマでも見たことがあります。
で、いい感じになっている日野っちかもしれませんが、もちろん黙っちゃぁいない旦那(? 奥さん? いや、そんな奥ゆかしい人じゃないだろう…)がいるでしょうね。
まぁ、旅行に連れてきた人が出てこないとねぇ…(10話で終わるかな)
コメントありがとうございました。
> おやおや(^ .^)y-~~~ 外国にも ハッテン場って あるのかな?
あるみたいですよ。外国ドラマでも見たことがあります。
で、いい感じになっている日野っちかもしれませんが、もちろん黙っちゃぁいない旦那(? 奥さん? いや、そんな奥ゆかしい人じゃないだろう…)がいるでしょうね。
まぁ、旅行に連れてきた人が出てこないとねぇ…(10話で終わるかな)
コメントありがとうございました。
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