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BLの丘
ちょうどいいサイズ 1
2010-03-25-Thu  CATEGORY: ちょうどいい
「だーからさー。安くしとくからっ。ねっ、お願い、一台っ!!友人を助けると思って」
「久し振りに呼び出されたと思ったらもうセールス?そんなんだったらうちの機械を買ってくれる会社の一件でも紹介してよ」
気軽に入れる定食屋で、日替わり定食が来る前のお茶をすすっている時に持ち出した『新車買わない?』の話に、目の前に座った美女…ならぬ美男の桜庭那智(さくらば なち)が、溜め息混じりに冷たい目で朝比奈一葉(あさひな かずは)を見返してきた。
ほっそりとした体型は一葉と変わらないものの、同じ男とは到底思えない顔の造りには雲泥の差がある。
しばらく会わないうちに中性的な面は色を増し、黙って立っているだけで声はたくさんかかるだろうといらぬ心配が湧くくらいだ。
那智の大きな瞳に見つめられれば自分の目は開いているのか?と問いたくなるし、とがってスッキリとした顎のラインなどを見ればぼてっとした自分の頬周りが嫌になってくる。
幸いなのは、常に鏡を持ち歩いて見比べながら会話をしているわけではないこと。
そりゃ、どう映っているのかは気になるところだけど…。

お互い仕事の途中、二人とも営業職だったから、あまりぎちぎちとした予定はなかったが、それでも時間に限りがあると思えば本題に入る。
昼食を一緒にとろうと約束した今の時間。
当然と言えば当然だが、予想された反応に泣き声が漏れた。
新車のセールスに二つ返事で「うん、いいよ」なんて答えてくれる人間は早々いない。
ましてや、自分と同じ年、26歳前後なんて、ただのサラリーマンが収入も多いわけでもなく簡単に買える代物ではない。
「俺、今年度の販売成績、最下位だったの~。この決算期に売れなかったら来月から給料なくなっちゃうよっ」
「だからってペーパーの俺に車売り付けてどうすんの?飾っとけって?」
「恋人は?!運転しないの?!」
「ヒサぁ?!…まぁするけど。たまにレンタカー借りてくるくらいだから」
つまり自家用車はないということか、よしよし…と頭の中で笑みが浮かぶ。

那智の恋人が男だと知ったのは1年ほど前のことだった。
同じ郷里出身だったから大学が違ってもそれなりに親しくしていた。
思いのほか近い場所に住んでいたということもある。
那智と約束を取り付けた夜の集まりに、くっついてきた美丈夫にはその場にいたほとんどの人間が固まったものだ。
鍛えられた肉体と精悍な顔つき。
那智と並べばそこだけ空気が変わる雰囲気がある。
…いい男だったなぁ…と回想しながら慌てて打ち消す。
そう思うくらいなのだから一葉にとって同性同士の付き合いも特に違和感すら浮かばなかった。

「自分で持つ車って愛着が湧いていいもんだよ。車があれば好きな時に好きなところへ好きなだけ行けるっ」
「だったら俺じゃなくてヒサを説得した方がいいんじゃないの?」
「那智が『買おう』って強請ればいいことじゃん」
「あのさ…」
一葉の提案に、那智は思いっきり絶句していた。
一葉には一葉で言い分もある。
あの美丈夫を前にしてセールストークなんてとてもではないができそうにない。
逆に上手く丸めこまれそうな気すらしてくる。
この気の弱さが営業成績に反映しているのだと薄々気づいてはいるのだが…。
「那智、お願いだから~。ちょっとでも話をしてみてよっ。その気があるっていうなら、おまけとかいっぱい考えてあげるからっ」
あとはもう泣き落とししかない。
ガシッと湯呑茶碗を持つ那智の手を両手で包む。
そこに注文してあった定食が届いて否応が無く万歳の体勢を取るはめになった。
ひっきりなしに客が出入りする店内。
出来立てホヤホヤの日替わり定食と共に入店直後の客から見定めるような視線が送られてくる。
豚の角煮から鼻腔をくすぐる匂いがただよった。
視線はまるで今日の料理を確認するようでもあったが、「あれ、さくらちゃん?」と声がかけられれば状況は変わった。
目の前の那智が、自分が呼ばれたとはっきり分かる態度で声の方向を追う。
「安住さん」
テーブルの横に立った、どこか西洋人を思わせるような色の白さと彫の深い顔つき。
きちっとスーツを着こなしてはいたが、自分たちとは明らかに異なる業種と分かる男がニッコリと微笑んでくる。
年上の、たぶん30代の半ばくらいにはなるのだろう。
那智にさりげない言葉をかけた後、すぐに、一葉にも物静かな声が降り注がれた。
「こんにちは」
優しい声は耳の奥まで響いてきた。

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「あんけーと」にて多大なる支持を頂いております安住編…とか言いながら、主役じゃない?!
『策略~』自体が私の中で失敗作だったので下ろしたかったのですが、今更安住を描写する気力もなく…。
どうかこんなのでお許し願いたいですm(__)m
朝の6時up(定時)を目指しますが、出来上がり次第…という状況はこれまでと変わらず。
お待ちいただく日々もあると思います。どうか暖かい目で見守ってやってください。
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コメント

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コメントきえ | URL | 2010-03-25-Thu 07:33 [編集]
拍手コメ様
おはようございます。

>確かに気になってましたー。安住編?楽しみです! もしかして一葉と??

安住編とか言えないのですが…。
これじゃぁ脇役じゃんっ!!とおしかりを頂きそうなのでいっぱい軌道修正をしているところです。
まだ書きだしたばかりなので私もどうなるのか分かりませんが『ちょうどいい』感じに収まればなぁ…って思っています。
コメントありがとうございました。
管理人のみ閲覧できます
コメント | | 2010-03-25-Thu 08:46 [編集]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
わーい、安住さんだ!!
コメント甲斐 | URL | 2010-03-25-Thu 08:50 [編集]
ちょうどいいサイズって何が?ナニが?
はい、読んでのお楽しみですね。

安住さん大好き。
かっこいいよねー
那智君には悪いけどヒサよりいい(ゴメンね)
Re: 安住さんだっ!
コメントきえ | URL | 2010-03-25-Thu 13:43 [編集]
M様
こんにちは。お久しぶりです。

> 新連載だ~と喜んだらなっちさん!そして安住さん!! アンケートでも人気がありましたね~中條さんと悩んだ記憶があります(私だけ?)

もう、私が忘れている内容だったりします…。
それにしても、アンケートの結果には腰抜かしそうでしたよ。
中條と安住はあくまでも仲の良いオトモダチなのであれ以上の関係には発展しません。
お悩ませするようなことを書いた過去を悔んでおりますm(__)m

> 続き楽しみにしてますヾ(^▽^)ノ
ありがとうございます!!
どこまでご期待に添えるのかしら…。
またもや見切り発車ですがお付き合いくだされば…と思います。
コメントありがとうございました。
Re: わーい、安住さんだ!!
コメントきえ | URL | 2010-03-25-Thu 13:48 [編集]
甲斐様
こちらにもどうもです♪

> ちょうどいいサイズって何が?ナニが?
> はい、読んでのお楽しみですね。

えぇ、どんな『ちょうどいい』なのか、のちのちのお楽しみにしてください。
アレとかコレとかあそことか…(?)

> 安住さん大好き。
> かっこいいよねー
> 那智君には悪いけどヒサよりいい(ゴメンね)

私も以前書きながら、なんで那智は安住に転ばなかったんだろー?と思ったくらいでした。
大人の落ち着きみたいな、魅力みたいな、色々な物をもっていると思うんですけど。
若造には分からなかったのか…。
安住人気に押されて書きだしたストーリーです。
一葉視点で進みますけど、どうかお許し願いたいです。
コメントありがとうございました。
コメントきえ | URL | 2010-03-26-Fri 11:20 [編集]
P様
こんにちは。

>主役じゃない?!ですか…。 でも楽しみ読ませてもらいます。

安住を主役にできなくてすみません。
何度も練り直したのですが、こんな結果になってしまいました。
楽しみにしてくださっている方々には本当に申し訳なかったです。
こんなのでもお付き合いくだされば…と思います。
コメントありがとうございました。
No title
コメントたつみきえ | URL | 2011-10-02-Sun 11:00 [編集]
拍手コメち様
こんにちは。

>策略~が失敗なんですか?えー、それは無いですよ。下げられなくて良かったなぁ。下げられてたら、読めなかったですもん。こちらのも楽しみに読んできます。

失敗作ですよ~~~。あれを読まれると私…。だからってどの作品もいいわけじゃないけれど。
恥ずかし恥ずかしぃの処女作(←)でございます。
過去作、いっぱい読んでくださっているようでありがたいです。
いろいろとくっついて読みづらいところがあるとは思いますが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
コメントありがとうございました。
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