寝ている間に『寒い』…と思った。
すぐ近くに温かなものがあったから縋りついた。
少しして、今度は身体が燃えているのではないかと思うくらいに熱くなった。
息苦しさを覚えて目を開けたいのに、鉛のように重くなった身体がいうことをきかない。
夢を見ているようだった。
いや、実際夢だったのかもしれない。
乾いた喉元に水分が流れ込んできて、無意識に飲み込んだ。
貪るように舌を伸ばせばからみついてくるものがある。
時々ひんやりとしたものが額に触れて、その気持ち良さでまた深い眠りに落ちていく…。
何かに囲まれている、その中がとても安らかだった。
無意識に手を伸ばして逃げないようにとつかまえたかった。
海斗の心情を察したように、その『腕』は海斗を包んでくれた。
…この夜が明けなければいいのに…
何故か海斗はそう願った。
どれくらい眠ったのかは分からないが、ふと目が覚めた。
カーテンが引かれた部屋の中にも明りは差し込んでいて、日が高いのがわかる。
身体にはまだだるさが残っていたが瞼を開けることくらいは苦もなくできた。
まるで海斗を包むように、目の前に居たのは有馬だった。
セミダブルのベッドとはいえ、そのほとんどを海斗が占領しているわけで、横向きに寝ている有馬が背を倒せば落ちてしまうだろう、というような位置で眠っていた。
有馬の眠りは浅かったのか、少しの身じろぎだけで有馬は目を覚ました。
海斗が寝返りを打ったのではなく、はっきりと意識がある状態だと判断できたのか、「起きた?」と話しかけてきた。
こうやって、一晩中海斗の反応を診ていたのだろうか…?
「ん…」
海斗が小さく返事をすれば、包み込んでいたような腕が離れて、大きな掌が額に触れた。
「まだ、熱が下がっていないね」
「熱?」
夏バテで貧血を起こして倒れた、くらいにしか思っていなかった海斗は、何事かとオウム返しに尋ねた。
「ゆうべ、高熱をだしたんだよ。様子を見に来て良かった」
海斗が眠りについた後にも、この部屋に訪れてくれた有馬の姿が思い浮かぶ。
頭の中に鉛があるような重さが残るのはそのせいか…。
立ち上がろうとした有馬に海斗の手が引かれた…というか、動いた。
その手の先を見れば、しわくちゃになるくらい、有馬のTシャツを握り締めている自分の手があった。
「あ、ご、ごめん…っ!…俺、なにやってんだろ…」
パッと離しはしたが、ドギマギとする心臓はコントロールがつかない。
有馬は「たいしたことではないから」と気にする様子もなく、そっと海斗の髪を撫でた。
ドキッとした。
鳥羽はしょっちゅう海斗に触れてはいたけれど、有馬が手を出してくることはなかった。
あまりにも自然と、さりげなく落された行為には、どこか慣れた印象も受ける。
有馬が向ける相手、それは、誰に対してなのだろう…?
喉奥にひっかかった小骨のように、じくじくと海斗を襲った。
…やっぱり、鳥羽と有馬って…????
それからふと気になった。
「ね、ねぇ、鳥羽は…?」
有馬がここに泊まっていたと知っているのだろうか。
海斗に何かあれば鳥羽は構わず飛んでくるようなところがあったから、放っておかれたという淋しさも湧く。
それに有馬が海斗の部屋で寝ていると知っても気にもしていないのだろうか。
気にしなくてもいい仲なのだろうか。(良くも悪くも)
目が覚めて人の顔があったことに落ち付いたのに襲ってくる物悲しさ。
「健太は友達と飲みに行っちゃってどこかの家に転がり込んでいるから心配ないし」
有馬はあっさりと言い放った。
その『心配ない』はどういう意味での心配ない…なのだろうか…。
立ち上がった有馬が「朝食の準備をしてきますからまだ寝ていてください」と部屋を出ていった。
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短い?!ごめんなさい。
すぐ近くに温かなものがあったから縋りついた。
少しして、今度は身体が燃えているのではないかと思うくらいに熱くなった。
息苦しさを覚えて目を開けたいのに、鉛のように重くなった身体がいうことをきかない。
夢を見ているようだった。
いや、実際夢だったのかもしれない。
乾いた喉元に水分が流れ込んできて、無意識に飲み込んだ。
貪るように舌を伸ばせばからみついてくるものがある。
時々ひんやりとしたものが額に触れて、その気持ち良さでまた深い眠りに落ちていく…。
何かに囲まれている、その中がとても安らかだった。
無意識に手を伸ばして逃げないようにとつかまえたかった。
海斗の心情を察したように、その『腕』は海斗を包んでくれた。
…この夜が明けなければいいのに…
何故か海斗はそう願った。
どれくらい眠ったのかは分からないが、ふと目が覚めた。
カーテンが引かれた部屋の中にも明りは差し込んでいて、日が高いのがわかる。
身体にはまだだるさが残っていたが瞼を開けることくらいは苦もなくできた。
まるで海斗を包むように、目の前に居たのは有馬だった。
セミダブルのベッドとはいえ、そのほとんどを海斗が占領しているわけで、横向きに寝ている有馬が背を倒せば落ちてしまうだろう、というような位置で眠っていた。
有馬の眠りは浅かったのか、少しの身じろぎだけで有馬は目を覚ました。
海斗が寝返りを打ったのではなく、はっきりと意識がある状態だと判断できたのか、「起きた?」と話しかけてきた。
こうやって、一晩中海斗の反応を診ていたのだろうか…?
「ん…」
海斗が小さく返事をすれば、包み込んでいたような腕が離れて、大きな掌が額に触れた。
「まだ、熱が下がっていないね」
「熱?」
夏バテで貧血を起こして倒れた、くらいにしか思っていなかった海斗は、何事かとオウム返しに尋ねた。
「ゆうべ、高熱をだしたんだよ。様子を見に来て良かった」
海斗が眠りについた後にも、この部屋に訪れてくれた有馬の姿が思い浮かぶ。
頭の中に鉛があるような重さが残るのはそのせいか…。
立ち上がろうとした有馬に海斗の手が引かれた…というか、動いた。
その手の先を見れば、しわくちゃになるくらい、有馬のTシャツを握り締めている自分の手があった。
「あ、ご、ごめん…っ!…俺、なにやってんだろ…」
パッと離しはしたが、ドギマギとする心臓はコントロールがつかない。
有馬は「たいしたことではないから」と気にする様子もなく、そっと海斗の髪を撫でた。
ドキッとした。
鳥羽はしょっちゅう海斗に触れてはいたけれど、有馬が手を出してくることはなかった。
あまりにも自然と、さりげなく落された行為には、どこか慣れた印象も受ける。
有馬が向ける相手、それは、誰に対してなのだろう…?
喉奥にひっかかった小骨のように、じくじくと海斗を襲った。
…やっぱり、鳥羽と有馬って…????
それからふと気になった。
「ね、ねぇ、鳥羽は…?」
有馬がここに泊まっていたと知っているのだろうか。
海斗に何かあれば鳥羽は構わず飛んでくるようなところがあったから、放っておかれたという淋しさも湧く。
それに有馬が海斗の部屋で寝ていると知っても気にもしていないのだろうか。
気にしなくてもいい仲なのだろうか。(良くも悪くも)
目が覚めて人の顔があったことに落ち付いたのに襲ってくる物悲しさ。
「健太は友達と飲みに行っちゃってどこかの家に転がり込んでいるから心配ないし」
有馬はあっさりと言い放った。
その『心配ない』はどういう意味での心配ない…なのだろうか…。
立ち上がった有馬が「朝食の準備をしてきますからまだ寝ていてください」と部屋を出ていった。
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短い?!ごめんなさい。
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本当は甘えん坊さんなんでしょうね、海斗くん
それを許さないで生きてきたという感じがします
でも、ここへきていろいろあったし
なんだかあったかい腕もあったし
つい掴みたくもなりますよね
ところで有馬さんと鳥羽さんて本人たちの言うとおりの関係にみえるけど
海斗くんには違って見える?
それを許さないで生きてきたという感じがします
でも、ここへきていろいろあったし
なんだかあったかい腕もあったし
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ところで有馬さんと鳥羽さんて本人たちの言うとおりの関係にみえるけど
海斗くんには違って見える?
甲斐様
おはようございます。
> 本当は甘えん坊さんなんでしょうね、海斗くん
そうですね。
常に人と交わりをもちたがったのはそんな心理もあるのだと思います。
> ところで有馬さんと鳥羽さんて本人たちの言うとおりの関係にみえるけど
> 海斗くんには違って見える?
有馬と鳥羽は言葉通りただのお友達なんですけれど、(曖昧に書いていてすみません)
海斗からみたら考えさせられるものがあるんでしょうか。
恋する目はなんでも疑いたくなるんですよ、きっと。
コメントありがとうございました。
おはようございます。
> 本当は甘えん坊さんなんでしょうね、海斗くん
そうですね。
常に人と交わりをもちたがったのはそんな心理もあるのだと思います。
> ところで有馬さんと鳥羽さんて本人たちの言うとおりの関係にみえるけど
> 海斗くんには違って見える?
有馬と鳥羽は言葉通りただのお友達なんですけれど、(曖昧に書いていてすみません)
海斗からみたら考えさせられるものがあるんでしょうか。
恋する目はなんでも疑いたくなるんですよ、きっと。
コメントありがとうございました。
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