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BLの丘
真っ赤なトマト 33
2011-05-16-Mon  CATEGORY: 真っ赤なトマト
前職と同じ職種なのだから慣れるのも早い。
客に喜んでもらいたいと思う意気込みもあった。それはトルコに行った時に入った店で教えてもらったことでもあった。
あの時に味わった高揚感、とまではいかなくても、誰にでも満足してもらいたいと思う気持ちは以前とは比較にならない。
店の作りの違いに戸惑うことは多少あっても、2週間もすれば他のスタッフと同レベルの動きが取れるようになった。
「飲みこみ、早いね~」
「いえいえ、まだ、分からないことだらけです」
みんなとも打ち解けて気軽に会話ができるようになる。
スタッフ同士でのコミュニケーションがスムーズに進まないと店が回らなくなるのだから当然なのだが、自然と会話が増えていく。
そんなところも孝朗の気持ちを解してくれる。
これまでは、自分がやらなければ…と思っていた部分が強かったのだな、と改めて振り返ることができた。
それが余計に頑なな自分を作り上げていたのだろう。周りをたよることは余裕も生んでくる。
1か月も経つと何の怠りもないくらいに動きは完成されていた。

レストランの閉店は夜の9時だった。
ホールのほうが先に仕事を終えることが多く、羽生以外のスタッフは先に帰っていく。
15分から30分ほど遅れて厨房も仕事を終えることがほとんどだった。
更衣室で着替え終わったあと、孝朗は店内で時間を潰して圭吾を待っているのがいつもの出来事。
時に羽生に話しかけられるが、彼は大概事務所に籠ってしまう。

この日、珍しく更衣室で顔を合わせた。
それぞれのロッカーと、長椅子が置いてある程度の狭い部屋だった。
「お疲れ様。今日も圭吾君を待ってるの?」
「あ、…はい…」
「そういえば、一緒に住んでいるんだっけ?」
従業員の生活状況などはすでに知られている。
今更隠すこともできず、孝朗は頷くしかない。
だが、それ以上の関係まで詮索されるのは喜ばしいことではなかった。
恋人としての付き合いがある、などと知られれば、他の人たちに余計な気を使わせることになりかねないと危惧する。
いまある、良い環境に水を差すことになるような気がした。
「それって、ただのルームシェア?」
唐突に聞かれて孝朗は一瞬怯んだ。
「え、えぇ。…家賃、折半にできるし、家事も分担して…」
「そう。てっきり付き合ってるのかと思ったけど」
「へっ?!…あっ、いやっ、そんなことは全然…っ」
ヘタな言い訳に返されてくる台詞は大きく孝朗を動揺させた。たぶんこの手の質問は圭吾にもしているはずだった。圭吾は孝朗の意思を尊重してくれていたから、表立って言うはずもない。
大きく頭と手を横に振るとクスリと笑われる。
羽生の態度が単にからかっているだけなのか、本気で言っているのかの区別も孝朗にはつかない。
「越谷さん、何、言ってるんですか…」
あえて呆れたように言葉を返すと、羽生が首を傾けた。
「その、『越谷さん』っていうの、どうにかなんないかな。伯父と間違えるよ。他の人みたいに『羽生』って名前で呼んでくれたほうが判りがいいんだけど」
「でも、そんな…」
スタッフ同士でも名前で呼び合っている人はいる。
気さくな人たちばかりだったから名前を呼んでも問題視されることはないのだろうが、客席では、客の手前、必ず名字で呼ぶよう徹底されていた。
だから孝朗は、その呼び名で終始変わることなく接している。
まだ入店して間もないという環境も控え目にさせていた。
「孝朗君、まだどこか力が入ってるよね。もっと気楽にしてくれていいんだから。息が詰まっちゃうよ」
「そんなことは…」
「ところで、休みの日は何しているの?もし良かったら今度一緒に出掛けない?色々話も聞いてみたいし。付き合ってくれるかな?」
羽生が求めるのは、仕事だけではコミュニケーションが足りないから…という意味で、なのだろうか。
プライベートの時間でも職場の人間同士が集うのはありうる話で、そこから尚のこと親近感を深めようとする人間もいる。
緊張感漂うばかりの孝朗の気を緩めたい、とでも思われているのか…。
確かに孝朗は他のスタッフとも、どこか一線を置いた態度を崩していなかった。
みんなで飲みの一席でも作れば、また違った面が見えて交流が深まるのかもしれない。
「はい…」
「良かった。圭吾君のことも気になってたから断られるかなと思ってたんだ」
ホッとしたような表情を浮かべた羽生が孝朗の前に立ちふさがる。
「?」
見上げた目の前に羽生の顔があった。
「え?越谷さん?」
「ういせ(羽生)」
抵抗する間もなく、孝朗の唇に羽生のそれが宛がわれる。
呆然とする孝朗の口腔内に潜ってきた羽生の舌先が、優しく舌上を撫でて出て行った。
「じゃあ、また後で連絡するね」
羽生が更衣室を出ていくのを、思考が整わないまま見送った。
孝朗は唇に手を当ててみる。

…この意味は…???

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タカ、『付き合う』の意味を間違えてます.....(;__)/|

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コメント

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No title
コメントけいったん | URL | 2011-05-16-Mon 13:35 [編集]
「・・・この意味は・・・???」ってぇ~d(〒_〒:)
圭吾に ライバル出現かよーー!おぉ(゚ロ゚屮)屮

孝朗って 警戒心バリバリなのに ほんと 無防備だよなぁ~ε-(゚д゚`;)フゥ...

孝朗、ちゃ~んと全部 圭吾に話さなきゃ ダメだぞっ!
心配だなぁ~(・´_`・)ゞ...byebye☆

No title
コメントmiki | URL | 2011-05-16-Mon 14:58 [編集]
タカ~、そんな呑気に考えてちゃダメーー!(>_<) 自分が恋愛対象として見られてるなんて考えてもないんだろうけど… もうちょっと警戒というか注意しようよ(-_-;)
圭吾も大変だ。しっかりとお説教してもらわないとね(^_-)
管理人のみ閲覧できます
コメント | | 2011-05-16-Mon 22:46 [編集]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
Re: No title
コメントきえ | URL | 2011-05-17-Tue 08:31 [編集]
けいったん様
こんにちは~。

> 「・・・この意味は・・・???」ってぇ~d(〒_〒:)
> 圭吾に ライバル出現かよーー!おぉ(゚ロ゚屮)屮
>
> 孝朗って 警戒心バリバリなのに ほんと 無防備だよなぁ~ε-(゚д゚`;)フゥ...
>
> 孝朗、ちゃ~んと全部 圭吾に話さなきゃ ダメだぞっ!
> 心配だなぁ~(・´_`・)ゞ...byebye☆

ライバルキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
孝朗、もうちょっと世間を知りましょう(゚∀゚)
もう圭吾、心配しきれないよ…。
けいったん様まで心配してくださってる。ありがたいことです。
コメントありがとうございました。
Re: No title
コメントきえ | URL | 2011-05-17-Tue 08:33 [編集]
miki様
こんにちは。

> タカ~、そんな呑気に考えてちゃダメーー!(>_<) 自分が恋愛対象として見られてるなんて考えてもないんだろうけど… もうちょっと警戒というか注意しようよ(-_-;)
> 圭吾も大変だ。しっかりとお説教してもらわないとね(^_-)

タカ、本当に呑気です。
そんなんだからみんなにからかわれて遊び道具にされて…(え?!Σ( ̄□ ̄;))
ハイ、圭吾も大変です。もう、何回お説教したらいいんだか…。
コメントありがとうございました。
Re: No title
コメントきえ | URL | 2011-05-17-Tue 08:38 [編集]
レ様
こんにちは。

> 圭吾のことだから、様子のおかしい孝朗にすぐ気づくと思うけど・・・
> 早めに手を打ってね!
> なんせ相手は行動派だから(>_<)

早く気付いてほしいです。そして対策を…。
行動派ですね~。(いや、圭吾も意外と動き早いですが…)
孝朗がトロイのか…。(←今頃気づいた…)

> それにしても羽生って元からそっちの人だったんでしょうか?
> それともこれで開花?
> もしそうなら圭吾は男全部に警戒しないといけないのか・・・
> 本人が無自覚なだけに大変だ!

特に何の設定もありませんヽ(゚∀゚)ノ
BL書いてるからBLのお話です(←いい加減な作者…)
圭吾も苦労が絶えなさそうです。
孝朗、よく今まで無事でいましたね…。
(イヤ、そこは圭吾が頑張ったので、知らぬうちになんか、こうオーラが…)
コメントありがとうございました。
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