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BLの丘
真っ赤なトマト 34
2011-05-17-Tue  CATEGORY: 真っ赤なトマト
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孝朗はここで起こった出来事を圭吾に何一つ伝えられなかった。
後ろめたさがあったのはもちろんだったが、あまりにも落ち着き払った羽生の態度に抵抗する気も湧かず、それどころか、大人びた態度には嫌悪の一つも浮かばなかった。
孝朗にしてみれば最初の男が圭吾であって…、他は知らない。
羽生が言いたいことの意味を理解すると困惑してくる。
羽生に対しては『好奇心』というものなのかもしれない。
だからといって、羽生がどんなふうに自分を扱ってくれるのか、などという興味じみた感情は抱くものではないと思う。
惹かれる、とは違っても、完全に圭吾を裏切ることになる。
他の人間と触れあう事のなかった孝朗にとって、興味を持っても、流されるのは完全な間違いだと頭は理解している。
少なくても、身を預けた人がいる、今…。
もっと早く出会っていたのなら、状況も違ったのだろうか…。
そんなことを思ってしまう自分のほうに嫌悪感が募る。

羽生にははっきりとしたことを伝えるべきだった、と後悔した。
曖昧に濁した結果がこの事態を招いた。一言でも圭吾との関係を肯定したのであれば、羽生はこんな態度に出なかっただろう。
孝朗が悩む原因になるようなことはなかったはずだ。
人のものを強引に奪うことなどしない穏やかな性格だと、知る付き合いの中で感じている。
そして驚いたのは羽生の告げ方だった。
店の中での恋愛はご法度だと思っていた孝朗の考えを根底から崩してくれた。
従業員同士の中で、雰囲気が悪くなると危惧していた孝朗に、隠すことはない、と言われているようだった。
少なくとも、万が一羽生とそういう関係になった場合でも、彼は皆に堂々と告げてしまう態度だった。
圭吾との仲を隠そうとして躍起になっていたことは、なんだったのだろう。

今すぐにでも羽生にきちんと伝えるべき…と脳は指令を送ってくるのだが、孝朗は口を開けずに数日の時を送った。
店で働く間では、羽生はこれまでと何ら変わることのない、厳しい視線で様子を伺っている。
完璧なまでにビジネスとプライベートを区別していた。
もしかして、自分の思い込みや勘違いなのか、と思わされるくらいに態度に変化はない。
それは同時に圭吾に気付かせる時も遅らせた。

昼の休憩時間はみんなで揃って、まかない料理を客席で食べた。
計8人しかいない従業員の座る席はたまに変わりはするものの、ほとんど指定されたように決まっている。
孝朗を一番端にして、目の前に圭吾、孝朗の隣にはホールのスタッフが並び、その前に厨房の人間と羽生がいた。
越谷と羽生が隣同士で座るのが常だったのが、ある日、羽生が孝朗の前を陣取る。
孝朗には焦りがあったが、その日に交わしたい会話などあって当然の職場なのだから、圭吾も何も警戒していなかった。
その場で繰り広げられた話は、仕事のことだったり、ちょっとした私事だったりと他愛もない。
食事が済めば雑談に華を咲かせたり、ゲームをする者、昼寝をする者…と思い思いに過ごしていく。

孝朗は食器を片付けていた時に羽生に声をかけられた。
「孝朗君、ちょっと事務室にこれる時間ある?」
ここに入れたのは越谷と羽生だけのはずだった。
その場所に呼ばれたことは、圭吾だけでなく他のスタッフの興味も引いた。
「少し話したいことがあるんだ。平気かな?」
羽生の誘いはとても自然だ。スマートな動きは余計に孝朗の心を揺らす。
店の主とも言える羽生に呼ばれて断る方がおかしいと感じる。
戸惑いつつもゆっくりと首を縦に動かすと、「じゃあ行こうか」と羽生の掌が孝朗の背中に触れた。
あまりにもさり気ない仕草のはずなのに、酷く緊張している自分がいる。
孝朗は傍にいる圭吾を振り返ることができなかった。
後ろめたいのに、どこかで期待している自分を感じてしまったから…。
一度だけ触れた羽生という男の唇の優しさは圭吾とは明らかに違っていた。さらに自分に向けられる柔らかな物腰。
どこがどう違うのか、確認したいような判るのが怖いような…。何も知らない未熟な自分…。
そして、きちんと圭吾とのことを話すべきだと、冷静な思いもある。
振り返れなかった圭吾が、どんな表情をしているのか、想像することができたから…。
彼を失ってはいけないと、警鐘が脳内に響き渡る。
複雑な思いをかかえて孝朗は羽生に連れられていく。

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