こちらは【観潮楼 秋の企画】の参加作品です。
安里はばさりと髪を切っていた。
逞しさのかけらもない安里だったから、せめて見た目だけでも生徒になめられやすくなくなるように、と反対もしなかった。
ただでさえ、ところどころに可愛い仕草が現れる安里である。
ある意味、こんなウサギを狼の中(勤務地は男子高校だ)に入れるのは不安だったが、それなりに支障もなく過ごしている日々を聞けばまだ我慢ができた。
周りの先生も気を使ってくれいるらしい。
が…。
いつまでたったって安里と並べない…。
焦りにも似ているのだろうか。
社会人としてきっちりとした生活を生みだした安里と、いまだに親にしがみついて、生活費とか学費とかだしてもらっている自分。
悔しいけど、親にしがみつくような自分が本当に情けなかった。
家に連れ入れると同時に、ぶかぶかな、陸のつなぎを強引に脱がした。
「ちょっ…っ!!むつみぃっ!!」
悲鳴に近い言葉が発されるけど、知ったことではない。
「陸に、これ、みせたの?!どこでどうやってこの服に着替えたの?!」
剥き出しにされた白い肌にそっと指を這わせる。
ここまで嫉妬に狂わせるのは安里だけだ…。
ある程度の時期まで、平気で人前で着替えた。
村の伝統とでもいえるくらい、自然と、すっぽんぽんになって、沢の水で汗を流したくらいだ。
いつから人前で、安里の肌を晒したくないと思ったのか…。
たとえ、陸の目の届かないところで着替えていたとしても、今の睦には陸の匂いを纏ったという現実に気が狂いそうになっていた。
安里は、平気で、ためらいもなく、他の男のころもをみにつけるのかっ?!
「ごめん…、ごめんっ、ごめんっっ!!」
玄関でいきなり剥かれたことに対するとまどいなのか、安里が必死な形相で謝罪を入れてくる。
そのひとつひとつが、まるで、『嫌われたくない』と訴えているようで、睦の怒りが鎮められていった。
「安里をそんなに責めたいわけじゃない。けど…。なんで、言ってくれなかったの?俺、今週、ここ、来るって、知ってたよね?言ったよね?」
本当ならもっとキツイ言葉で責めたかった。
だけどそうさせなかったのは、脅えた安里の雰囲気か、宥めようとした陸の心遣いか…。
静かに頷いた安里の姿があった。
「お、おどかしてやろうかと思ったのもあるけど…。だって、あの時、睦、俺の言うこと、全然聞かなかったじゃん…」
恥ずかしそうに俯く安里に、最後に別れた時を振り返った。
週末の逢瀬の時はどうしても夢中になってしまう。
相手が何を望むのか、考えてあげたい気持ちはものすごくありながら、終わってみれば自分の欲求を晴らすためのもの?
安里は決して文句も言わなかったし、行為にも満足してくれているようだった。
『自惚れ』…。
今の自分にぴったりの言葉だ。
安里は何かを言いかけていたのだと思う。
それを耳にしなかったのは自分か…。それとも口に出させなかったのも自分か…。
「あさ…」
「二人で食べる米だから、一緒に稲刈りするって言ったのに、『安里に重労働はむり』ってさいしょっから突っぱねられて…っ!!俺っ!おまえに縋っていくような人生、いやだっ!!」
安里の家に泊まるたびに、アルコールの量は増えた。
素面でなんかとても寝付けなかったからだ。
そのあいだに、口走ったことを、アルコールなんて滅多に飲まない安里は聞いていたのだろう。
覚えていない自分が一番情けなかったが、改めて聞く内容は『告白』にも匹敵する。
この先の将来を、安里も考えていてくれたのだ…。
絵は 「カロリーハーフ」様より お借りしているものです。無断転写はおやめください。
秋企画カロリーハーフ様
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あと1、2話で完結にもっていきたいんですけど…(私の言うことはとにかくあてにならないですよね…)
安里はばさりと髪を切っていた。
逞しさのかけらもない安里だったから、せめて見た目だけでも生徒になめられやすくなくなるように、と反対もしなかった。
ただでさえ、ところどころに可愛い仕草が現れる安里である。
ある意味、こんなウサギを狼の中(勤務地は男子高校だ)に入れるのは不安だったが、それなりに支障もなく過ごしている日々を聞けばまだ我慢ができた。
周りの先生も気を使ってくれいるらしい。
が…。
いつまでたったって安里と並べない…。
焦りにも似ているのだろうか。
社会人としてきっちりとした生活を生みだした安里と、いまだに親にしがみついて、生活費とか学費とかだしてもらっている自分。
悔しいけど、親にしがみつくような自分が本当に情けなかった。
家に連れ入れると同時に、ぶかぶかな、陸のつなぎを強引に脱がした。
「ちょっ…っ!!むつみぃっ!!」
悲鳴に近い言葉が発されるけど、知ったことではない。
「陸に、これ、みせたの?!どこでどうやってこの服に着替えたの?!」
剥き出しにされた白い肌にそっと指を這わせる。
ここまで嫉妬に狂わせるのは安里だけだ…。
ある程度の時期まで、平気で人前で着替えた。
村の伝統とでもいえるくらい、自然と、すっぽんぽんになって、沢の水で汗を流したくらいだ。
いつから人前で、安里の肌を晒したくないと思ったのか…。
たとえ、陸の目の届かないところで着替えていたとしても、今の睦には陸の匂いを纏ったという現実に気が狂いそうになっていた。
安里は、平気で、ためらいもなく、他の男のころもをみにつけるのかっ?!
「ごめん…、ごめんっ、ごめんっっ!!」
玄関でいきなり剥かれたことに対するとまどいなのか、安里が必死な形相で謝罪を入れてくる。
そのひとつひとつが、まるで、『嫌われたくない』と訴えているようで、睦の怒りが鎮められていった。
「安里をそんなに責めたいわけじゃない。けど…。なんで、言ってくれなかったの?俺、今週、ここ、来るって、知ってたよね?言ったよね?」
本当ならもっとキツイ言葉で責めたかった。
だけどそうさせなかったのは、脅えた安里の雰囲気か、宥めようとした陸の心遣いか…。
静かに頷いた安里の姿があった。
「お、おどかしてやろうかと思ったのもあるけど…。だって、あの時、睦、俺の言うこと、全然聞かなかったじゃん…」
恥ずかしそうに俯く安里に、最後に別れた時を振り返った。
週末の逢瀬の時はどうしても夢中になってしまう。
相手が何を望むのか、考えてあげたい気持ちはものすごくありながら、終わってみれば自分の欲求を晴らすためのもの?
安里は決して文句も言わなかったし、行為にも満足してくれているようだった。
『自惚れ』…。
今の自分にぴったりの言葉だ。
安里は何かを言いかけていたのだと思う。
それを耳にしなかったのは自分か…。それとも口に出させなかったのも自分か…。
「あさ…」
「二人で食べる米だから、一緒に稲刈りするって言ったのに、『安里に重労働はむり』ってさいしょっから突っぱねられて…っ!!俺っ!おまえに縋っていくような人生、いやだっ!!」
安里の家に泊まるたびに、アルコールの量は増えた。
素面でなんかとても寝付けなかったからだ。
そのあいだに、口走ったことを、アルコールなんて滅多に飲まない安里は聞いていたのだろう。
覚えていない自分が一番情けなかったが、改めて聞く内容は『告白』にも匹敵する。
この先の将来を、安里も考えていてくれたのだ…。
絵は 「カロリーハーフ」様より お借りしているものです。無断転写はおやめください。
秋企画カロリーハーフ様
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あと1、2話で完結にもっていきたいんですけど…(私の言うことはとにかくあてにならないですよね…)
「酒を飲んでも 呑まれるな」と、大昔からの言葉を 今 一度 睦に 苦言として 捧げましょう。
まぁ 睦の場合は 安里に 呑まれてますが(何が? 何処で?...違いますよ、 気持ちです!)。。。喰ってはいるけどねー
では まだ続きます・・・
まぁ 睦の場合は 安里に 呑まれてますが(何が? 何処で?...違いますよ、 気持ちです!)。。。喰ってはいるけどねー
では まだ続きます・・・
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