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BLの丘
春が来てくれるなら 15
2013-05-04-Sat  CATEGORY: 春が来てくれるなら
大月と勝沼の距離は一気に縮まった気がした。
"社内で男あさりをする"・・・という意味にしかとっていない韮崎は苦々しい態度でいる。
それでも、周りは社員同士が仲良くしている、程度にしか捉えられていないので、表立って文句も言われなかった。
余計な発言をすれば、韮崎自身の首を絞めることになりかねないと理解してのことだろう。

総務部に顔を出した勝沼は、手にしていた書類を大月に見せた。
出張に関する申請書類だ。
すでにベテランともいえる上司に同行するらしい。
誰の手に渡っても最終的には韮崎のもとにたどり着くのだから、話しかけやすい人間を選ぶのも自然な流れだった。
「一泊か。ホテルの手配は終わっているの?」
「今まで利用していたところって言ってたよ」
「そっちで全部やってくれれば、こっちの手間もかからないから助かる」
「仕事、放棄してんなぁ」
書類にハンコを押して上へとまわすだけなら、大月も楽だと訴えれば、苦笑されてしまった。
本来、そういった手配は大月たち、総務部の仕事である。

「お土産でも買ってきてあげようか」
デスクの脇に立った勝沼は、私語を続けていた。
「えー、別にいいよ」
「じゃあさ、週末、メシでも食いにいかねぇ?」
「週末?・・・あー、まぁいいけど」
一瞬の躊躇は、韮崎に対するものがあったからだろう。
ほとんど暗黙の了解のように、大月の部屋を訪れてくる。
関係を断ち切りたいと思いながら、抱かれることの快楽に酔ってもいた。
韮崎が与えてくれるものは大きかったのだ。
そういえば、この男はどんな抱き方をするのだろうか。
好奇心が脳裏をよぎっていった。
その気があるなら、今度会った時に身体を開くのもいいだろう。

雑談を繰り広げていると、兄の明野が姿を現した。
20代の後半だというのに、きっちりとスーツを着込んだ姿は貫録をつけていた。
もっとも韮崎とはまた違う風貌ではあったけれど。
明野を視界に入れては、部署内の空気も少々緊張を帯びた。
大月と良く似た顔形なので、『兄弟』だとは誰もが気付く。
明野は持ってきた書類を大月に手渡した。
「大月、回覧資料だから、各部署ごとに回るよう、部数、用意して」
「コピー係りかよ・・・」
「文句言うな。戻ってきて押印確認したら届けて」
「はーい」
「ったく、やる気のない返事して・・・」
コツンとひとつ、握りこぶしが落ちてきてから、明野は勝沼に視線を向けた。
「話中だったのかな?邪魔してごめんね」
「あ、いえ、それほどでは・・・」
人当たりが良いのは明野の性格でもある。
ニコリと微笑まれては、毒気を抜かれたような勝沼の表情が見えた。
大月のように誘いかけるものではないとしても、やはり似た部分はあるのだろう。
比較されるようで大月は明野から視線をそらした。
早くこの場から立ち去ってくれという思いも込められている。

その時、どこかに出ていた韮崎が戻ってきた。
明野の姿を見つけては声をかけてくるのはいつものことだった。
「来ていたのか」
「うん、この前の資料ができたからね」
「あぁ、作ってやっても良かったのに」
「いいよ。巨摩も忙しいだろうし」
韮崎は会話を続けながら、大月のデスクの上の書類に手を伸ばしてくる。
同時に出張申請の用紙にも視線を走らせていた。
咄嗟に内容を把握してしまう能力はどんなものなのだろうか・・・

「今、判を押してやるから、持って行け。予定変更が生じれば、また出せばいいから」
「は、はい・・・」
韮崎の態度には、この場に勝沼を留まらせたくない気持ちが含まれているようにも思えた。
大月のデスクから去る後ろ姿に、『ついてこい』という無言のセリフがあり、嫌でも勝沼との会話が終了を迎える。
「あ、じゃあ、また連絡する」
「うん」
勝沼の言葉に、チラリと振り返った韮崎だったが、何かを言ってくることはなかった。
それぞれが散り散りになり、いつもと変わらない業務がやってくる。
勝沼が去ってしばらくしてから、再び大月に近づいてきた韮崎は、「社内での揉め事は避けろ」と釘をさしてきた。
その意味を深く知るものは、周りにはいなかったから、この場で吐けたものだったのだが・・・。
憮然と韮崎を睨みつけてしまう。

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コメント

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(o゚Д゚o)マッ!!
コメントけいったん | URL | 2013-05-04-Sat 09:20 [編集]
大月、勝沼と 良い感じじゃないですか~♪
これで 韮崎との 不毛な関係が清算できれば いいのにね。

そんな場面になったら 案外 韮崎が 別れを渋ったりして…( ̄ー ̄)ニヤリ
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