「びっくりした・・・」
呼ばれたことをおどろいているのか。
大月を前にして第一声がその声で、まぁそれは想定内でもあったけれど。
いつまでも外に佇む気はなく、店の中へと入る。
自分と付き合っていく以上 どれほどのステータスが必要になるのかと教えることになるのか。
誰もが気軽に寄れる居酒屋だったが、そこは老舗の場所。大月の顔を視界に入れれば対応も変わる。
受け付けたはずの女性もすぐにひっこんで、年配の人に変わっていた。
「いらっしゃいませ」
着物姿で深々と頭を下げてくれる人に軽く手をふる。
「突然ごめん。個室、ある?」
「はい、もちろん、すぐにご用意いたします。ご連絡いただければもっと奥の間をご準備できましたのに」
「そんのはべつにいいけれどね」
妖艶に微笑む姿にドキリとさせられながら、たわいのない会話を交わすだけのうちに"部屋"が整えられれていることに瞠目もした。
単純に"飲む"だけだと思っていた勝沼にとっては、予想外もいいところだ。
それも、大月の手の内だったのだが。
最初はさぐるように相手の感触をたしかめていけばいい。
この環境に涎をたらしてくるような人間なのか。
引き寄せられるのは、家の資産か、それとも、大月自身を見て狙ってくれるものか。
席を立って、戻って、酔いを少し冷ました。
目の前の男は、変わらないらしい。
「ふたば・・・だっけ」
相手の名前を口に乗せれば嫌がられもしない。どころか目を見開かれた。
ファーストネームを口にして明らかな動揺が見えた。
「え?!」
「ってか、御坂さん、俺の名前、知ってんの?」
単なる偶然、うらおぼえ。今更"偶然"はないだろう。
ほころんだ顔を見てしまえば尚更。
「そう、双葉だよ~っ。あー、俺、マジ、これで登録していい?」
言うのが早いか、携帯の操作が早いのか、「御坂さんは?」と聞かれて「だいき」と自然と答えていた。
こんなやりとりがなつかしくて、心の中にあったウミのようなものを自然と吐き出してくれる。
まだ、出会って間もない、それなのに無駄口をたたかず、状況をよんではすぐさま話題を変えてくれる"営業"に気を許すのはあっというまというか。
こんな時間を設けられなかったことを大月自身が一番知っていたのだろう。
"抱かれてもいい"
その奔放さはいくつもの危険をはらんでいる。
最後に望むものがなんであるのか、大月自身わからなかった。
韮崎と明野のようではなくても、『ラブストーリー』と名付けられるものが生み出せるなら、疑似体験から始めるのも一つの手段か。
笑ってくれる人を前に、「これもありかな」と思う。
この日の会計はもちろん、大月がもったのだけれど。
『給料前借りしてでも、あとでちゃんとはらうからっ』と言われて苦笑した。
どこまで真面目な男か。
その純真さも、また新鮮だった。
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大月を前にして第一声がその声で、まぁそれは想定内でもあったけれど。
いつまでも外に佇む気はなく、店の中へと入る。
自分と付き合っていく以上 どれほどのステータスが必要になるのかと教えることになるのか。
誰もが気軽に寄れる居酒屋だったが、そこは老舗の場所。大月の顔を視界に入れれば対応も変わる。
受け付けたはずの女性もすぐにひっこんで、年配の人に変わっていた。
「いらっしゃいませ」
着物姿で深々と頭を下げてくれる人に軽く手をふる。
「突然ごめん。個室、ある?」
「はい、もちろん、すぐにご用意いたします。ご連絡いただければもっと奥の間をご準備できましたのに」
「そんのはべつにいいけれどね」
妖艶に微笑む姿にドキリとさせられながら、たわいのない会話を交わすだけのうちに"部屋"が整えられれていることに瞠目もした。
単純に"飲む"だけだと思っていた勝沼にとっては、予想外もいいところだ。
それも、大月の手の内だったのだが。
最初はさぐるように相手の感触をたしかめていけばいい。
この環境に涎をたらしてくるような人間なのか。
引き寄せられるのは、家の資産か、それとも、大月自身を見て狙ってくれるものか。
席を立って、戻って、酔いを少し冷ました。
目の前の男は、変わらないらしい。
「ふたば・・・だっけ」
相手の名前を口に乗せれば嫌がられもしない。どころか目を見開かれた。
ファーストネームを口にして明らかな動揺が見えた。
「え?!」
「ってか、御坂さん、俺の名前、知ってんの?」
単なる偶然、うらおぼえ。今更"偶然"はないだろう。
ほころんだ顔を見てしまえば尚更。
「そう、双葉だよ~っ。あー、俺、マジ、これで登録していい?」
言うのが早いか、携帯の操作が早いのか、「御坂さんは?」と聞かれて「だいき」と自然と答えていた。
こんなやりとりがなつかしくて、心の中にあったウミのようなものを自然と吐き出してくれる。
まだ、出会って間もない、それなのに無駄口をたたかず、状況をよんではすぐさま話題を変えてくれる"営業"に気を許すのはあっというまというか。
こんな時間を設けられなかったことを大月自身が一番知っていたのだろう。
"抱かれてもいい"
その奔放さはいくつもの危険をはらんでいる。
最後に望むものがなんであるのか、大月自身わからなかった。
韮崎と明野のようではなくても、『ラブストーリー』と名付けられるものが生み出せるなら、疑似体験から始めるのも一つの手段か。
笑ってくれる人を前に、「これもありかな」と思う。
この日の会計はもちろん、大月がもったのだけれど。
『給料前借りしてでも、あとでちゃんとはらうからっ』と言われて苦笑した。
どこまで真面目な男か。
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